【ピアノ】J.S.バッハ シンフォニア 第12番 BWV798 全運指付き楽譜と練習のコツ
► はじめに
J.S.バッハ「シンフォニア 第12番 BWV798」は、3声のシンフォニアの中でも、技術的・音楽的に高い完成度を誇る楽曲として知られています。
本記事では、この楽曲に取り組む方のために、「全運指」を付けた楽譜を提供し、練習のヒントも解説していきます。
►「全運指」の解説
この楽曲はパブリックドメインです。運営者が浄書ソフトウェアで作成した楽譜を使用しています。
運指について重要な注意点
この運指は一例です。手の大きさや個人差に合わせて調整してください。また、どのようなアーティキュレーションを付けるのかによっても適切な運指は変わります。お手持ちの楽譜の内容と照らし合わせながら、必要に応じて参考にしてください。
► 具体的な練習のヒント
‣ 適切なテンポ設定
推奨テンポ設定:
練習開始時:♩. = 48-54(正確性と安定性重視)
中間段階:♩. = 54-60(表現力の向上期)
目標テンポ:♩. = 63(ヘルマン・ケラー提案)
なぜ、このテンポが適切なのか:
ヘルマン・ケラーが提案する♩. = 63 は、以下の特徴があります:
・楽曲の快活さを表現できる遅過ぎないテンポ
・この楽曲における標準的なテンポ
‣ 演奏上の重要なポイント
· 伸びている音の持続をイメージする
以下の箇所では、長く伸びる音の上で他の声部が動いています:
・13-14小節
・18-19小節
・28-30小節
練習のコツ
鍵盤楽器では音は減衰してしまうため、上声部だけに意識が向きがちです。しかし、伸びている音の持続を常にイメージしながら、他の声部を演奏することが重要です。
また、9-12小節の左手パートは、音自体は動いていますが、何度も鳴り続ける低音があります。これも持続表現の一種として捉え、低音の持続をイメージしながら演奏しましょう。
· 2声的な1声の読み取りと重要音のピックアップ
譜例(1-12小節)
レッド音符で示した音は、一つの声部内にありながらも、他の音と区別すべき音です。
同じ声部に停滞する部分と動いている部分が同居している箇所は、「2声的な書法」と言え、メロディックな要素が隠れている可能性が高い注目ポイントです。
こういった動きは、演奏上、必ずしも強調し過ぎる必要はありません。しかし、多少のピックアップすることと何よりもそれ以外の裏で鳴っている音が強くならないように気をつけると、音楽的な演奏になります。
· 各声部の音域が近い部分における重要ラインの抽出
譜例(5-6小節)
同様の注意が必要な箇所:
・10-12小節
・15-18小節
・67-70小節
これらの小節では、右手の各声部の音域が近いことが特徴です。すべての音が同等にメロディーのように聴こえないよう、トップノートを適切に浮き立たせることが重要です。
► 終わりに
本作品は、対になっている「インヴェンション 第12番 BWV783」と非常に類似した素材が使われていることでも知られています。比較しながら学習してみるのも良い学習になるでしょう。
この作品についてさらなる演奏ヒントが必要な方は、以下の解釈版を参考にしてください。
・園田高弘 校訂版 J.S.バッハ シンフォニア BWV787−801
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