【ピアノ】インヴェンション入門! 第8番「全運指」公開
► はじめに
本記事では、J.S.バッハのインヴェンションに初めて取り組む方のために「第8番 BWV779」を「全運指」付きで解説しています。初心者でも無理なく習得できるよう、具体的な演奏のヒントも説明します。
► インヴェンション入門に最適の楽曲
インヴェンションの中でも、第1番、第4番、第8番、第13番が入門用として多く用いられています。第8番が入門に適している理由として、以下が挙げられるでしょう:
親しみやすい調性
ヘ長調で書かれており、初心者にも馴染みやすい調性です。
認知度の高さ
広く知られた楽曲のため、イメージがつかみやすく、参考音源もたくさん出ています。
技術的な取り組みやすさ
テンポは快速ですが、「装飾音記号が出てこない」等、技術的に簡潔で弾きやすい構造になっています。
演奏による対位法学習に最適
対位法の技法が明確で、技術的な難所も比較的少なめです。
►「全運指」の解説
この楽曲はパブリックドメインです。運営者が浄書ソフトウェアで作成した楽譜を使用しています。
運指のポイント:
3小節目・18小節目の注意点
右手の音にカッコがしてある箇所では、8分音符による繋がりの終音として左手で演奏するほうが、フレーズのまとまりを自然に表現できます。
運指について重要な注意点
この運指は一例です。手の大きさや個人差に合わせて調整してください。また、どのようなアーティキュレーションを付けるのかによっても適切な運指は変わります。お手持ちの楽譜の内容と照らし合わせながら、必要に応じて参考にしてください。
► 具体的な練習のヒント
‣ 適切なテンポ設定
ツェルニーは「♩= 152」を提案していましたが、より実用的で音楽的なテンポ設定をおすすめします:
ツェルニー案
♩= 152
(上級者向け・速過ぎる傾向)
おすすめテンポ
♩= 116-126
(ヘルマン・ケラー提案)
なぜ、このテンポが良いのか:
・初〜中級者でも無理のない速度設定
・作品の持つ軽快さを十分に表現可能
‣ 片手ずつ完璧にしてから両手で合わせる
対位法で書かれた楽曲では、各声部が独立した「線」として構成されています。通常の「メロディと伴奏」という構造とは異なるため、まず各パートを個別に練習することが重要です。
片手での練習が十分できてから、全体のバランスを整えていきましょう。
‣ 同型が連続する16分音符の処理について
譜例(4-6小節)
4小節目の右手から始まる同じ音型の反復は、本楽曲で頻繁に登場します。重くなりがちなこの部分を軽やかに演奏するコツは:
・レッド音符で示した「軸になる音」を意識する
・それ以外の16分音符が大きくなり過ぎないように注意する
・これらの16分音符はあくまで装飾的な飾りであり、主要テーマではないことを踏まえておく
よくある問題点と対策:
16分音符でテンポが変化してしまう:
・メトロノームを使った練習を行ない、8分音符の部分とのテンポの差が出ないようにする
ただの音の連続になってしまう:
・上記を参考に、全ての音が鳴りっぱなしにならないよう、「軸になる音」を意識する
► 終わりに
「インヴェンション 第8番 BWV779」は、J.S.バッハの対位法技法と音楽的表現を学ぶのに最適な作品です。段階を踏んで丁寧に練習していけば、必ず美しい演奏ができるようになります。焦らず、じっくりと取り組んでみてください。
► 関連コンテンツ
コメント