【ピアノ】シューベルト作品の演奏ポイント解説集:譜例付き実践ガイド
► はじめに
本記事では、シューベルトのピアノ作品における実践的な演奏アドバイスをまとめています。各曲の重要なポイントを、譜例とともに具体的に解説していきます。
この記事は随時更新され、新しい作品や演奏のヒントが追加されていく予定です。
► 小品
‣ 楽興の時 第3番 D 780/3 Op.94-3
シューベルト「楽興の時 第3番 Op.94-3 ヘ短調」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、25-26小節目の右手)
25小節2拍目は「16分音符による6度の動き」ですが、こういった箇所は完全なレガートにするのは困難。
トップノートは譜例に書き込んだ指遣いでレガートにし、下の音は1の指だけで、なるべく音を長く残していくように演奏するといいでしょう。
ダンパーペダルに頼らず、いかに手でレガートに肉薄できるかどうかを探る必要があります。
運指の都合で一方の声部がレガートにできないところは実際の楽曲で多く出てくるので、「どちらか一方を完全なレガートにして、もう一方はなるべく指で残す」という考え方は応用範囲が広くあります。
‣ 楽興の時 第4番 D 780/4 Op.94-4
シューベルト「楽興の時 第4番 D 780/4 Op.94-4」
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲頭)
一見、練習曲風の分散和音による音型が続いていますが、その中に ”おいしいもの” が含まれています。各小節の丸印をつけた音のこと。
分散和音の中でもこれらの音がメロディとして響く音であり、やや聴かせるべきです。
ここでの見つけ方はシンプルで、音程が動いている音を見つけるだけ。
例えば1小節目の場合、1拍目と2拍目それぞれにある「E Cis E」という3つの音は共通していますが、各拍の最後の音だけが「Gis A」と動いていますね。
このように、音程が動かずに繰り返している音と動いている音をそれぞれ見つけ出して、動いている方を追ってみると、メロディになっていることが多くあります。
(再掲)
さらに注目すべきは、4小節目の四角で囲ったところ。
ここは、練習曲風の分散和音の最中にフッと挟み込まれてくるカンタービレなウタになっています。順次進行中心の音づかいへ変わっているので、見分けはつきやすいはず。
それに、口で歌ってみてもこの箇所は表現的であることに気づくでしょう。
「パッセージの中から重要な音を見極める」というのは、重要なテクニックの一つ。
特に細かく動いているパッセージの時には、重要な音はどこにあるのかをよく考えながら譜読みをしてみてください。
► ピアノソナタ
‣ ピアノソナタ第7番 変ホ長調 D 568 第4楽章
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、158-160小節)
右手の演奏で16分音符の直後に和音をつかむのが少し難しいですね。
そこでもし、左手で5つの音を同時につかむ方が容易と感じる方は、カギマークで示したように上段A音を左手で弾いてしまうといいでしょう。
ここでは何度もフォルツァートが書かれていますが、このように何度も執拗に書かれている場合というのは、ただ単に強調するだけでなく「エネルギーを落とさないで弾き進めて欲しい」という意図があると考えてみてください。
譜例のところの直後には、息をのむほど本当に美しい、再現部第2主題が待っています。それを効果的に引き出すためにも、譜例のフォルツァートの箇所は劇的に、ノンストップで弾き進めましょう。
► 終わりに
シューベルトの作品には、独特の音楽語法と表現技法が詰まっています。
本記事では、実践的な演奏アプローチを紹介していますが、これらはあくまでも一つの解釈として捉えていただければと思います。
今後も新しい作品や演奏のヒントを追加していく予定ですので、定期的にご確認いただければ幸いです。
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