【ピアノ】まず大胆にやり、そこから削ぎ落としていくのが音楽:初級〜初中級向け
► はじめに
なぜ、真面目に練習しているのに演奏が平坦になってしまうのでしょうか。
多くの初級〜初中級者が陥りがちなこの状態には、実は共通の解決法があります。それは「まず大胆に表現し、その後で調整する」というアプローチです。
本記事では、遠慮がちな演奏から脱却し、音楽的な表現力を身につけるための具体的な方法をお伝えします。
► 演奏学習編:遠慮がちな表現の殻を破る方法
‣ なぜ、平坦な演奏になってしまうのか
ピアノは打鍵後に音が減衰する楽器です。何も意識せずに演奏すると、自然と控えめで平坦な表現になりがちです。
それ以外に演奏が平坦になる理由は主に2つあります:
・無自覚な遠慮:表現の必要性に気づいていない
・恥ずかしさによるブレーキ:表現したい気持ちはあるが、殻を破れない
どちらの場合も、解決の鍵は同じです。「やり過ぎ」は後から調整できますが、「出せない」状態から「出せる」ようになるのはよりハードルが高いことを踏まえておきましょう。
今まで表現が平坦だった場合、「やり過ぎ」と感じるくらいでようやく適切なバランスに到達します。
‣ 演説のように弾く:実践的テクニック
まずは練習時に限定して、演説をするような感覚でピアノを弾くことを試してみてください。
演説の特徴を思い出してみましょう:
・強調したい部分に大胆な重みづけをする、説明的な話し方
・抑揚が明確で説得力がある
・頼りなく遠慮がちに見えると支持が集まらないので、堂々と胸を張って伝える
実際の演説動画を観察してみてください。驚くほど表現を前面に出していることが分かるはずです。この感覚をピアノ演奏に応用します:
・アクセント記号を見つけたら、説明するように一旦大胆に強調する
・スラーの終わりなど抜くべき箇所は、抑揚を意識して一旦明確に弱める
・姿勢を正し、堂々と胸を張って演奏する
‣ ドラマ「ロングバケーション」から学ぶ教訓
1996年の名作ドラマから、学習者にとって重要なシーンを紹介します。
芸術大学をピアノ科で卒業後、大学院受験に失敗した瀬名秀俊(木村拓哉)は、第1話で受験話の流れから母校の佐々木教授(森本レオ)に次のように言われます。
この状況は、多くの初心者学習者にも当てはまります。恥ずかしさが自己ブレーキとなり、表現の殻を破れずにいるのです。
バランスの重要性
注意すべき点として、自己陶酔による無駄な動きは音楽から遠ざかる原因となります。自分の音を客観的に聴けなくなるからです。しかし、恥ずかしがって何も表現しないよりは、まずは大げさでも出すほうが、将来的な上達を考えると遥かに建設的です。
上達の秘訣
新しい楽曲の練習開始時は、最初は各ニュアンスを大げさに表現することを心がけましょう。この方法が効果的な理由は:
・そうすることで、楽曲の骨格が見え、どんな音楽なのかが理解できるから
・sempre mf(常に少し強く)の状態を脱することができるから
► 書籍学習編:知識収集と整理
【ピアノ】取り組む項目を増やし過ぎると、時間を失い上達からも遠ざかる
という記事で書いたように、原則、やることは増やし過ぎないほうがいいでしょう。一方、それらが同じ方向を向いていたり、同系統のものであれば、数をあたることで良い学習ができます。
例えば、レパートリーについての基礎知識を深めるためには、以下のような関連書籍を複数読みましょう:
特におすすめの書籍:
・ピアノ音楽史事典 著:千蔵八郎 / 春秋社
・名曲事典 ピアノ・オルガン編 著:千蔵八郎 / 音楽之友社
・鍵盤音楽の歴史 著 : F.E.Kirby 訳 : 千蔵八郎 / 全音楽譜出版社
・ピアノ音楽事典 作品篇 著:分担執筆 / 全音楽譜出版社
・ピアノ・レパートリー事典 著:高橋淳 / 春秋社
併読推奨書籍:
・新訂 ピアノの学習 著:長岡敏夫 / 音楽之友社
・ピアノ学習ハンドブック 著:千蔵八郎 / 春秋社
・最新名曲解説全集 独奏曲シリーズ / 音楽之友社
まずは様々な著書からインプットし、調べたい楽曲に関する様々な知識を得るようにします。そうすると、重複している内容も出てきますし、自分が楽譜に書き留めたい一文なども出てきます。同系統に絞ったうえで自由にガーっと情報を集めて、その後に削ぎ落として残すものを決めていきましょう。
このような包括的な学習では、単一の資料に依存せず、同系統の複数資料から情報を収集することが重要です。
推奨記事:【ピアノ】ピアノ音楽事典系5冊の徹底比較レビュー:学習目的別の選び方ガイド
► 終わりに
音楽表現において「やり過ぎかも」と感じるくらいの大胆さこそが、成長の原動力となります。
実践のポイント:
・練習時は演説のような大胆な表現を心がける
・「やり過ぎ」から始めて後で調整する
・自宅練習であれば誰も見ていないので、恥ずかしがらない
・知識習得も同様のアプローチで行う
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