【ピアノ】古典的三種の神器で開始する、ピアノ学習者のための楽曲分析入門

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ピアノ学習にあたって、楽曲分析の必要性は様々な場面で実感していることでしょう。本記事では、「基本的な楽典以外の音楽理論の知識が無く、これから楽曲分析に入門したいピアノ学習者」へ向けて、「三種の神器」的教科書を使った楽曲分析入門の方法を解説します。分析に関しては、近年も様々な参考書が出版されていますが、今回は、定番かつ古典的な三冊を用いた方法を提案します。

 

取り組みの条件:

・楽典の基礎知識を持っていること
・ピアノ学習がバイエル修了程度まで進行していること

 

► なぜ、楽曲分析が必要なのか

 

楽曲分析の具体的なメリット:

・楽曲の構造をより深く理解できる
・各音の役割を見抜けるようになる
・楽典で学習したことを実践的に活用できる
・分析内容を演奏や作曲・編曲に活かせる

 

演奏への実践的な効果:

例えば、モーツァルトのソナタを練習する際、単に音を追うだけでなく、主題の反復やフレーズの構造を理解することで:

・練習時間を大幅に短縮できる
・より確実な暗譜が可能になる
・演奏の解釈に根拠を持てる

 

重要な心構え:

分析で得た知識は、演奏のための直接的な指示ではなく、楽曲理解を深めるための手段として捉えましょう:

・見つけた特徴を自身の解釈に取り入れる過程を楽しむ
・同じ作曲家の他の作品でも同様の分析を試みる
・作曲家特有の手法を探求する楽しみを見つける

 

► 三種の神器:楽曲分析の基礎を築く教科書

 

・楽式論 著:石桁真礼生 / 音楽之友社
・和声と楽式のアナリーゼ バイエルからソナタアルバムまで 著:島岡譲 / 音楽之友社
・演奏のための楽曲分析法 著:熊田為宏 / 音楽之友社

 

・様々な楽式の知識
・最低限の和声の知識
・その他、具体的な種々の分析手段による実践

これらの三つを学ぶと楽曲分析の基礎力が上がるため、これらの三冊を選びました。

また、「楽式論」の著者の石桁氏は、「和声と楽式のアナリーゼ」の著者の島岡氏とともに「和声 理論と実習」三色シリーズに関連している人物であり、全体的な解説表現傾向は似ています。したがって、整合性を保った学習をするためにも効果的な組み合わせと考えました。

実際に筆者も、この3冊は全て学習したものです。

 

‣ 1. 楽式論 著:石桁真礼生 / 音楽之友社

 

この書籍で学べること:

・音楽の最小単位「動機」から楽曲全体の構成までの体系的理解
・二部形式、三部形式、ソナタ形式、ロンド形式など基本的な楽式の知識
・主にバロック期からロマン派までの代表的作品の構造分析

 

この書籍は楽曲の「骨格」を理解するための基礎を提供してくれます。シンプルな例から応用的な構造まで、段階的に学べる構成になっているため、比較的取り組みやすいでしょう。

 

・フレーズの構造に基づいた演奏法の習得
・楽曲全体を見通す力の養成

これらの要素が、演奏面でも「正確に弾ける」レベルから「音楽として表現できる」レベルへと引き上げてくれる分析力をつけてくれます。

 

・楽式論 著:石桁真礼生 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 

‣ 2. 和声と楽式のアナリーゼ バイエルからソナタアルバムまで 著:島岡譲 / 音楽之友社

 

この書籍で学べること:

・ピアノ学習者が実際に取り組む楽曲を題材にした分析手法
・バロック期から古典派までの代表的作品の和声と構造分析
・基本的な和声や楽式の「浅めで広い」知識

 

正直、楽曲分析入門段階では、和声分析を無視してしまって必要以上にとらわれないことが、継続の秘訣とさえ思っています:

・知識不足で挫折する主な原因が和声分析
・記号化することが目的化しやすい

しかし、この書籍では、和声と形式の関係ピアノ学習者が取り組む楽曲(バイエルからソナタアルバムまでの重要作品)を題材に、和声と楽式の基礎を学べるため、挫折しにくいものとなっています。著者の島岡譲氏は、有名な「和声 理論と実習」三色シリーズの執筆責任者でもあり、本書はその簡易版とも言える内容だと思ってください。

わずか111ページというコンパクトなボリュームながら、古典音楽で使用されるほぼ全ての和音と、代表的な音楽形式を網羅的に解説している一冊です。

 

・和声と楽式のアナリーゼ バイエルからソナタアルバムまで 著:島岡譲 / 音楽之友社

 



 

 

 

‣ 3. 演奏のための楽曲分析法 著:熊田為宏 / 音楽之友社

 

この書籍で学べること:

・アクセント、グルーピング、旋律分析など実践的な分析視点
・その他、演奏に活かせる具体的な分析手法

 

本書では、具体的な分析の視点がいくつも提供されています。また、「演奏に活かすための」分析法に焦点が当てられているため、実践にも役立つ内容となっています。

音楽の基本要素から始まり、アクセント、旋律分析、提唱と応答、開始と末尾のリズムや「アナクルーズとデジナンス(精神的集中と解放)」などを、シンプルな譜例とともに学んでいきます。

 

・演奏のための楽曲分析法 著:熊田為宏 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 

► 効果的な学習順序とアプローチ法

 

これら三冊を最大限に活用するための学習順序とアプローチを紹介しておきましょう:

 

推奨学習順序:

1. 「楽式論」: まずは音楽の基本構造と形式の基礎を理解する
2. 「和声と楽式のアナリーゼ」: 基本的な和声と楽式の関係を学ぶ
3. 「演奏のための楽曲分析法」: より実践的な分析視点を身につける

 

「楽式論」と「和声と楽式のアナリーゼ」では、同じ楽曲の分析も含まれているので、まずは、解説が豊富な「楽式論」で丁寧に学んでから、後者へ入っていくといいでしょう。

「演奏のための楽曲分析法」では、和声や楽式の知識がほぼゼロでも学習できるようになっていますが、アクセントやグルーピングなどの実際を学んでいくうえで、最低限の知識をもっていたほうがスムーズなのは確かです。したがって、最後に取り組むべきとしました。

 

「楽式論」以外の二冊は、それぞれ100ページ強と、この種の参考書にしてはとてもコンパクトなものなので、集中して取り組めばそれほど長い学習期間がかからずに一巡できるでしょう。

 

► 学習の継続と発展のために

 

三種の神器での学習を一巡したら、次のステップとして以下のアプローチをしてみましょう:

・三種の神器を枕元のようなホームポジションに置いた、しつこい復習
・本Webメディアの
中級 楽曲分析学習パス」でさらに多視点の学習

 

楽曲分析学習パスでは、三種の神器で取り上げられていない分析視点も数多く提供しています。また、実例分析も多く取り入れているパスなので、学んだことをガンガン新たな実例で使っていく経験にもなります。

 

► 終わりに

 

分析と演奏は常に行き来するものです。分析で得た気づきを演奏に反映させ、演奏で感じた疑問を分析で解決する——このサイクルを続けることで、音楽への理解はますます深まっていきます。加えて、分析で見つけた「必ずしも演奏に直結しないこと」もいちいち楽しみながら引き出しへ入れていきましょう。

 

・楽式論 著:石桁真礼生 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 

・和声と楽式のアナリーゼ バイエルからソナタアルバムまで 著:島岡譲 / 音楽之友社

 



 

 

 

・演奏のための楽曲分析法 著:熊田為宏 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 


 

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