【ピアノ】「素」に戻される音楽体験をアンサンブルで味わう

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【ピアノ】「素」に戻される音楽体験をアンサンブルで味わう

► はじめに

 

本記事では、「アンサンブルを通して『素』に戻される経験」について取り上げます。ソロ演奏に慣れた学習者にこそ読んでいただきたい内容です。

 

► ソロからアンサンブルへ

 

多くのピアノ学習者は、独りで弾くソロ演奏に集中しがちです。確かにソロ演奏には、自分のペースで練習できる、自分の表現を存分に発揮できるといった魅力がありますね。一方アンサンブル演奏には、ソロ演奏では得られない貴重な経験をするチャンスがあります。

その中でも重要なのが「素」に戻される経験。これは何を意味するのでしょうか。

 

►「素」の状態

‣「素」の状態とは何か

 

「素」の状態とは、「暗記や予定調和から解放され、今この瞬間に真に存在している状態」と言えるでしょう。例えば、以前にお芝居のドキュメンタリー番組を目にした時に、以下のような内容が語られていました。

・目の前に対話の相手が居ても、暗記したセリフを決め打ちで出そうとすると、「読んで」しまう
・一方、相手がセリフを間違えたり、即興を挟み込んできたりすると、決め打ち返答が不可能になり「素」に戻される
「素」の状態で生まれるセリフの言い方が、日常の感覚に最も近く自然
・この「素」の状態を作るために即興でセリフを渡し合う練習が有効

 

音楽においても同様のことが言えます。楽譜通りに弾くだけでなく、ただ単に相手と一緒に音を鳴らしているだけでもなく、その場の空気や共演者とのやり取りの中で音楽を生み出す状態を経験してみましょう。

 

‣ アンサンブルにおける「素」の状態

 

たとえアンサンブルをしていても相手の音を聴いていない奏者はいて、ニュアンスが合っていなかったり、ずれまくっていたりしても、平気で突き進むのを耳にします。しかし、以下のような極端な状況で「素」に戻される経験をすることがあります:

1. 予期せぬ停止への対応
アクシデントで共演者の演奏が突然止まったとしたらどうでしょうか。「ここでは必ずこういう風に弾こう」などと、表現やら何やらを全て決め打ちに頼っていた場合、たちまち混乱してしまうでしょう。そもそも「きっかけが来ない」のですから。しかし「素」の状態では、自然と相手の状況を察知し、柔軟に対応できるようになります。

2. ニュアンスの大きな変化
共演者が突然テンポを大きく緩めたり、強弱を極端に変えてきたりした時。これに対応するには、常に耳を開いている必要があります。

3. 即興的要素への対応
特にノンクラシックの分野などでは、共演者が即興的なフレーズを挿入してくることがあります。この時、決められたパターンだけでは対応できません。何を言われても「分かりました」で返していては会話が成立しませんね。その瞬間に耳で捉え、感じ、反応する必要があります。

 

► アンサンブルの醍醐味:対話としての音楽

 

アンサンブルの良さは「対話」にあります。一人で奏でるソロ演奏は独白であるのに対し、アンサンブルは会話です。会話が最も生き生きとするのは、相手の言葉に耳を傾け、その場で感じたことを正直に返す時でしょう。

演奏においても同様です。共演者の音を聴き、その音に触発され、反応する。そして時には予想外の展開に驚きながらも、新たな音楽の可能性を探る。これこそがアンサンブルの醍醐味です。だからこそ、「決め打ち」なんてものは何の役にも立たないのです。

 

► 終わりに

 

耳を使ったアンサンブルを通して「素」に戻される状態を経験し、予定調和を超えた生きた音楽を演奏する喜びを味わってみてください。「素」の状態がもたらす音楽的成長には限りがありません。

思いがけない展開に戸惑い、時には混乱することもあるでしょう。しかし筆者の経験上、この経験を何度もすることで、むしろそれを楽しめるくらいになってきます。

 


 

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