【ピアノ】メロディにおける規則性を見つける:ダカン「かっこう」を例に
► はじめに
バロック時代のクラヴサン音楽には、しばしば自然の音や動きを模した描写的な作品が見られます。フランスの作曲家ルイ=クロード・ダカン(Louis-Claude Daquin, 1694-1772)の「かっこう」は、その代表的な例として知られており、鳥の鳴き声をクラヴサンで表現した作品です。
本記事では、本作品の一部よりメロディの規則性を分析し、楽曲理解を深めることを狙います。
► メロディパターンの分析
ダカン「クラヴサン曲集 第1巻 第3組曲 かっこう ホ短調」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、32-40小節)
32小節目からのセクションには、明確な規則性を持ったメロディパターンが見られます。譜例で示されているように、このパターンは以下のような構造になっています:
・3度下降のパターン(レッド音符)が3回連続して繰り返される
・その後に5度下降(ブルー音符)が1回現れる
・完全5度下の音域で、再び同じパターン(3度下降×3回 + 5度下降×1回)が繰り返される
(3度下降×3 + 5度下降×1) + 完全5度下で(3度下降×3 + 5度下降×1)
特に39-40小節の接続部分では16分音符による動きが始まるため、5度下降の音型が視覚的に分かりにくくなっています。このようなつなぎ目には特に注意して読み取りましょう。
► パターン認識の重要性
上記の譜例の箇所に限らず、このようなパターン認識は譜読みにおける重要な読み取りポイントです:
・暗譜の効率化:個々の音符を覚えるのではなく、パターンとして記憶することで、暗譜が容易になる
・構造的理解:作品の構造を理解することで、楽曲全体の流れをより明確に把握できる
・表現力の向上:パターンの変化や例外を意識することで、パターン毎に整合性のある表現を付けられる
► まとめ
メロディの規則性を分析することで、作品の構造をより深く理解し、演奏や暗譜に役立てることができます。
パターン認識のアプローチは、「かっこう」だけでなく、他の作品にも応用できます。作品の中に規則性を見つけ出し、それを理解することで、複雑に見える音楽も系統立てて把握できるようになるでしょう。
音楽は、複雑に感じても、その中にほぼ必ず何らかのパターンや規則性が存在します。それらを見つけ出して理解することが譜読みの重要課題です。
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・【ピアノ】シューマン「Op.68-11 シチリアーナ」のメロディ分析:規則性に着目して
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