【ピアノ】「ピアノ・ペダルの踏み方」(安田信子 著)レビュー:独学者のためのペダリング専門書

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【ピアノ】「ピアノ・ペダルの踏み方」(安田信子 著)レビュー

► はじめに

 

本書は、教育者として著名な筆者による、中級者がペダリングを学ぶための優れた解説書です。

著者は「ピアノの魂」と呼ばれるペダルについて、演奏者によって関心度や使用法に大きな差があることに着目しました。同じ楽曲でも演奏者によってペダリングが異なり、それが演奏効果に大きな違いを生むという問題意識から、本書の執筆が始まりました。

特筆すべきは、従来、ペダリングの基礎として扱われてきた「踏むか踏まないか」「全て最大まで踏み込む」といった単純な二択的な考え方を超えて、様々な踏み方とその効果を具体的に解説している点です。ペダリングという複雑な技術を、誰にでも分かりやすく、かつ実践的に学べるよう配慮されています。

 

・出版社:音楽之友社
・初版:1981年
・ページ数:81ページ
・対象レベル:中級~上級者

 

・ピアノ・ペダルの踏み方 著:安田信子 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

► 本書の特徴

 

1. 実践的で具体的な解説

本書の特徴は、(グランドピアノの)ペダリングに関する「具体的な数値やメカニズム」の解説です。例えば:

・鍵盤のタッチの重さを音域別に明確な数値で示している(高音約60g、中音約80g、低音約100g)
・ダンパーペダル使用時の重さの軽減量(約25g)
・左ペダル(シフトペダル)使用時のハンマーの移動距離(約2-3mm)
・音量の減衰量(約5ホン)

このような具体的な数値による解説は、読者の理解を深め、実践的な学習を可能にします。

 

2. 体系的な構成

本書は以下のような論理的な構成で、ペダリングの基礎から応用まで段階的に学べます:

・ペダルの基本的な仕組みと種類
・各ペダルの記譜法
・様々なペダリングテクニック(レガート・ペダル、リズム・ペダルなど)
・音高や音型との関連性
・作曲家別のペダリング特徴

 

3. 豊富な譜例

本書では、文章を譜例で補足するというよりは、譜例を文章で補完していると言っていいほど、譜例中心の解説進行がとられています。これにより、理論的な理解と実践的な適用の橋渡しがスムーズになっています。

 

4. 歴史的な観点

作曲家別のペダリングの章では、ピアノという楽器の発展史や記譜法の変遷も含めた解説がなされており、より深い理解を促します。

 

► 本書の活用方法

 

独学者向けの学習ステップ:

1. まず基本的なペダルの仕組みと記譜法の章を熟読
2. 実際の楽曲を演奏しながら、各種ペダリングテクニックを実践
3. 作曲家別のペダリング特徴を学び、楽曲の解釈に活かす

 

効果的な使用のためのアドバイス:

・各章の譜例を必ず実践してみる
・自身の演奏中の音を注意深く聴き、ペダル効果を確認する
・必要に応じて録音し、客観的に音の変化を確認する

 

► 対象読者と難易度

 

最適な読者層:

・ソナチネやソナタを学び始めた初中級者〜
・ペダリングに不安を感じている学習者
・ペダリングの基礎の整理と演奏表現の幅を広げたい上級者

 

予備知識として必要なこと:

・基本的な楽典の知識
・ある程度の演奏技術(ソナチネレベル以上)
・音楽用語の基礎的な理解

 

► 本書の位置づけと発展的学習

 

ペダリング専門書への取っ掛かりとしての特徴:

・非常にコンパクトながら必要な情報が整理されている
・説明が簡潔で理解しやすい
・実践的な譜例が豊富

 

より深い学習のために:

・バノウェツなどのより専門的な文献への橋渡しとして最適(参考記事:「ピアノ・ペダルの技法」レビュー
・作曲家研究や音楽史の学習との組み合わせを推奨

 

► 結論

 

本書では、具体的な数値や豊富な譜例を通じて、理論と実践の両面からペダリングを学ぶことができます。コンパクトながら必要な情報が詰まっており、独学者にとって特に有用な一冊と言えます。

より高度な演奏表現を目指す際の基礎固めとして、また、日々の練習の参考書として、手元に置いておくといいでしょう。

 

・ピアノ・ペダルの踏み方 著:安田信子 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 


 

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この記事を書いた人
タカノユウヤ

ピアノ音楽(ピアノソロ、ピアノが編成に入った室内楽 など)に心惹かれ、早何十年。
ピアノ音楽の作曲・編曲が専門。
物書きとしては楽譜だけでなく文章も書いており、
音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆を手がけています。
Webメディア「大人のための独学用Webピアノ教室」の運営もしています。
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

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