【ピアノ】「エリーゼのために」冒頭8小節の分析と演奏ポイント

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【ピアノ】「エリーゼのために」冒頭8小節の分析と演奏ポイント

► はじめに

 

ベートーヴェンの「エリーゼのために」(バガテル イ短調 WoO.59)は、ピアノ学習者にとって重要な作品であり、様々な解釈が可能な曲です。

本記事では、特に重要な冒頭8小節に焦点を当て、演奏解釈の基礎となる要素を詳しく解説します。

 

► 実例分析:ベートーヴェン「エリーゼのために」

‣ 原典版から見える作曲者の意図

 

ベートーヴェン「エリーゼのために」

譜例1(PD楽曲、Sibeliusで作成、1-8小節)

1. 楽譜に込められた本質的な指示

この譜例は原典版をもとにしていますが、原典版の特徴的な点は、その「簡素さ」にあります。現代に多く出回っている教育用の解釈が書き込まれた楽譜と比較すると、以下の点が注目されます:

・作曲者自身による指示は限定的
 – テンポ指示:Poco moto
 – 強弱記号:pp
 – 2-4小節のペダリング指示

これは1810年の作曲当時、ベートーヴェンが必要不可欠と考えた指示のみを記したことを示しています。多くの楽譜に書かれているスラーをはじめとしたあらゆる情報は、一部を除き、ベートーヴェンによるものではありません。

 

2. ペダリング指示の意義

この作品におけるペダリング指示は特筆に値します:

・1800年作曲のOp.26以降、ベートーヴェンはピアノ作品でペダル指示を適宜記すようになった
・「エリーゼのために」での指示は、9小節目以降にも見られる

 

‣ 楽曲構造の分析

 

譜例2(1-8小節)

1. メロディラインの特徴

主要な旋律構造は丸印で示した軸になる音であり、以下の2つのパターンで構成されています:

・「La Si Do」の上行形
・「La Si La」の回帰形

これらの音型が、全体の骨格を形成しています。

また、レッド音符で示した音はメロディの一部と解釈可能ですが、曲の出始めのメロディを考えると、伴奏の一部とも解釈可能です。

 

2. 伴奏部の構造的特徴

伴奏部分には以下の重要な要素が含まれています:

・ブルー音符で示した、持続するE音による響きの統一
・伴奏部分に16分休符と8分休符が入っているのは、左手から右手へ1本のラインとして受け渡して欲しいという意図
・点線で示した、無伴奏部分(Solo)の効果的な配置
 – 1小節目
 – 5小節目

 

3. 和声進行の特徴

シンプルな和声進行:

・無和声部分:1,5小節目
・Ⅰ(主和音):2,4,6,8小節目
・Ⅴ(属和音):3,7小節目

 

► 演奏へのアプローチ

 

この分析を踏まえ、演奏時には以下の点に注意を払うことをおすすめします:

1. メロディの処理

・主要音(La Si Do, La Si La)の音色の統一
・装飾的な音符とのバランス

2. 伴奏部分の演奏

・E音の持続的な響きをよく聴く
・左右の手の滑らかな受け渡し

3. 無伴奏部分の表現

・適度な余韻を持たせた演奏
・メロディの歌唱的な表現

 

► まとめ

 

「エリーゼのために」の冒頭8小節は、シンプルな中に緻密な音楽構造が込められています。原典版に立ち返ることで、装飾的な解釈を排除し、作品の本質に迫ることができます。この基本構造を理解することは、曲全体の演奏解釈の基礎となるでしょう。

 


 

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