【ピアノ】楽曲分析を深める方法:専門書・マスタークラス・研究論文の活用ガイド
► はじめに
本記事は、楽曲分析の基礎を学び終えた方が、さらに深い分析力を身につけるためのガイドです。
・分析の方法論をすでに理解している方
・特定の楽曲についてより深く学びたい方
・必要な資料の探し方を知りたい方
を主な対象としています。
► 特定の楽曲への学びをさらに深める3つの方法
分析力を高めるには、以下の3つの方法を組み合わせて取り組むことをお勧めします:
・専門書による多角的な理解
・マスタークラス動画による実践的な学び
・研究論文による学術的な深化
‣ 専門書による多角的な理解
その作品についての情報が書かれているあらゆる書籍を手に入れてみましょう。
同じ作品について、複数の専門家の視点に触れることが重要です。
1冊しか読まないと、それが絶対だと思い込んでしまう危険性がありますし、視野も広がりません。
たとえば、ベートーヴェンのピアノソナタを学ぶ場合:
・楽曲分析の専門書
・演奏解釈についての文献
・作曲技法に関する解説書
・歴史的背景を扱った研究書
これらを並行して読むことで、作品への理解が立体的になっていきます。
マニアックな作品のものでなければ、洋書も含めてかなり多く手に入ります。
‣ マスタークラス動画による実践的な学び
近年は、企業や個人の音楽家が、豊富かつ有益なマスタークラス動画を公開してくれています。
演奏系はもちろん、分析系のものもあります。
YouTubeで観れる ”合法” かつ無料のオフィシャル動画もあるので、まずはそういったものから探るといいでしょう。
探すポイントは、海外のものも含めて探すこと。
演奏付きレッスン動画の場合、仮に外国語が苦手でも大体の内容は伝わってきますし、
何より参考にできる教材数が圧倒的に増えますので。
効果的な動画の探し方:
例:「mozart 333 masterclass」
特に注目したい配信元:
・著名音楽院の公式チャンネル
・国際コンクール入賞者による解説
・音楽祭でのマスタークラス
ただし、単に視聴するだけでなく、以下の点に注目して観ることが重要です:
・分析的な指摘と演奏の関係
・様式感の具体的な表現方法
・構造理解に基づく解釈の展開
‣ 研究論文による学術的な深化
より専門的な理解を目指す場合、研究論文にあたることで新たな視点を得られます。
主な検索先:
・国立情報学研究所 CiNii Books
・国立国会図書館 NDL Search
・世界図書館共同カタログ WorldCat
・各音楽大学の研究紀要
本来は丁寧な楽曲分析をしても、よほど大きな成果を報告しない限り、それは論文になり得ません。
しかし、軽めのものだったり、音大の教員が出している研究紀要のような読みやすくコンパクトな文章の中には、楽曲分析をしているものもあるので、
検索してあたってみるといいでしょう。
インターネット上で公開されているものもたくさんあります。
「ひとつの資料の参考文献をたどっていく」という方法も有効。
論文末にまとめられている参考文献表に目を通し、そこに書かれている資料を検索にかけます。
論文はもちろん、書籍でも、専門的なものの場合はこの表が掲載されています。
参考文献表に載っているものは、その文章を書くにあたって参考にされた資料なので、たいてい、有益な資料にたどりつくわけです。
► 資料へのアクセス方法
手に入りにくい資料へのアプローチ方法を、以下にまとめます。
楽譜の入手
基本的なルート:
1. 国会図書館(オンライン閲覧可能な資料も増加中)
2. 音楽大学図書館(外部利用制度の確認が必要)
3. 作曲家・編曲家への直接的なアプローチ
音源資料へのアクセス
1. 音楽大学図書館の視聴覚資料室
2. 国会図書館の音楽・映像資料室
3. 音楽資料館やアーカイブ
‣ 国会図書館で探す
よほどマニアックなものでない限り、国会図書館へ行けば手に入ります。
筆者は、今から40年以上前の音楽雑誌に別冊付録として付いていた楽譜を手に入れたくて行った時も、難なく入手することができました。
冊子のタイトルさえわかっていれば、昔のものであっても別冊付録であっても、手に入る可能性があります。
もちろん、通常の楽譜も置いてあるので、是非ホームページを訪問してみてください。
ちなみに、オンライン閲覧可能の楽譜資料もあるので、東京近郊に住んでいない方にも利用のチャンスがあります。
‣ 音大図書館で探す
音大によって蔵書数はまちまちですが、やはり、楽譜を含め音楽関連書籍に関しては、総合大学よりも相当数そろっています。
在学生や卒業生でなくても外部利用できる学校もありますし、
「オンラインで申し込む宅配サービス」をやってくれている学校もありますので、
東京近郊に住んでいない方にも利用のチャンスがあります。
‣ その作品の作曲家もしくは編曲家へ直接問い合わせる
少しハードルが上がりますが、
存命の作曲家や編曲家の作品であれば、ホームページから直接問い合わせてみるのも手。
プロダクションに入っている作曲家の場合は、会社を通して連絡をとります。
場合によっては、楽譜の手に入れ方やどこにアプローチすればいいかを教えてもらえる可能性もあります。
筆者も昔何度か試した方法です。
このやり方の場合、行動した人にしか絶対に恩恵が来ないので、勇気のある方は検討してみてください。
► 結局、分析学習も資料探しも、しつこく張り付くに限る
結局、分析学習も資料探しも、しつこく張り付くに限ります。
調べてすぐには解決しない場合も、解決したい内容をいつも意識していてください。
常に頭のかたすみへ置いておくと、
日常生活の中でそれに近い情報から優先的に拾えるように、不思議とセンサーが働いてくれます。
解決できないことをすぐにあっちへやらず、全力をあげて解決しようと試みてください。
► 終わりに
楽曲分析の学びは、一朝一夕には進みません。
しかし、継続的な取り組みと適切な資料の活用により、確実に分析力は向上していきます。
ご自身の興味ある作品について、深い理解を目指して楽しみながら学んでいきましょう。
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