【ピアノ】楽譜への書き込みから始める直感的楽曲分析
► はじめに
「楽曲を深く理解したい」
「作曲家の意図を読み取りたい」
「でも、難しい理論は苦手…」
そんな思いを持つ方へ。
今回ご紹介する分析方法は、音楽理論の知識がなくても始められる、シンプルかつ効果的なアプローチです。
► なぜ、楽曲分析が必要か
演奏は「音を出す」だけではありません。
作曲家が譜面に込めた意図を理解し、それを音として表現することで、
より深みのある演奏が生まれます。
では、どうすれば作曲家の意図を理解できるのでしょうか?
その一つの方法が、今回ご紹介する「思い付いたことを何でも書き込んでみる」分析です。
► 本記事の対象者と前提知識
こんな方におすすめ
・楽曲の仕組みを理解したい方
・作曲者の工夫を見抜けるようになりたい方
・音楽理論の知識がほとんどなくても分析をしたい方
・仕事や家事の合間に少しずつ学習したい方
・独学で着実に力をつけたい方
► 習得できるスキル
本記事で学習することで身につく能力
・読譜した内容を整理する力
・作曲家の意図を理解するための分析的視点
・時代や作曲家を超えて応用できる分析手法
► 分析の4つの視点
1. メロディの観点
・音の動きの特徴(上行・下行・同音反復など)
・フレーズのまとまり
・特徴的な音程の動き
2. リズムの観点
・繰り返されるリズムパターン
・特徴的なリズム
・テンポ変化の指示
3. 強弱・表情の観点
・強弱記号の配置
・アーティキュレーションの指示
・表情記号(dolce、espressivoなど)
4. 全体構造の観点
・似ているフレーズ
・繰り返しのパターン
・調性の変化
►「思い付いたことを何でも書き込んでみる」とは
楽曲分析というと、構成分析や和声分析のことを真っ先に思い浮かべると思いますが、
読譜して思い付いたことを何でも書き込んでみるのも、立派な楽曲分析。
例えば、以下のようなことを書き込みます:
・ここからメロディがオクターヴになって音色変化
・さっきと似ているけれど、バス音に変化あり
・ここから4小節間、低音がまったく出てこない
・第1楽章のメロディが使われている
何でも構いません。
もっと言わずもがなのことを書き込んでも構いません。
長々と言葉で書き込んでもいいですし、自分さえ分かればいいので略してもOK。
・楽譜を読む
・楽譜を読みながら音源を聴く
・楽譜を見ないで音源を聴く
・ピアノで弾いてみる
など、さまざまなやり方を使って皿回しでアプローチし、思いついたことをガンガン書き込んでください。
必ずしも高度な音楽理論などの知識がなくてもできる分析方法なので、
楽譜さえ読めれば、初心者の方でも取り組むことができるでしょう。
この分析方法には、他にも以下のようなメリットがあります。
・弾いていただけでは気が付かなかった情報を拾える
・拾った情報を視覚的に整理できる
・ピアノへ向かえない環境にいる時にも実践できる
パソコン入力などで書き込みをするよりも、出来る限り「手書き」で書き入れてください。
「手で書く」という動作は、考える作業に向いているからです。
例えば、日記はパソコンでも書けますが、手書きで書いた方が自分の考えを整理しながら正直に書き出せますよね。
「パソコンのタイピング」と「手を動かす手書き」とはまったく異なるツールです。
► 具体的な分析方法
‣ 実例で解説
ベートーヴェン「ソナチネ 第5番 ト長調 Anh5(1) 第1楽章」を例に、実際に筆者がやってみました。
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)
PDFで入手したい方は以下よりダウンロードしてください。
ベートーヴェン「ソナチネ 第5番 ト長調 Anh5(1) 第1楽章」分析実施例
線を書き入れたり言葉を書き入れたりと、
まずはガンガン書き出してみることが重要です。
書き出しながら自分の頭が整理されていくことを楽しみましょう。
‣ 楽曲のことを知るには、結局、手を動かすに限る
「手を動かす」というのは
・ピアノで音にしてみる
・机上で書き込みながら楽譜を読む
などのあらゆることを含めて言っていますが、
結局、楽曲のことを知るには手を動かすに限ると改めて感じています。
「たくさんの曲を聴く」というのは、良い音楽学習方法として知られています。
しかし、楽譜が手に入る作品は、聴くだけでなく手を動かしてみることで、もっと多くの情報を取れるようになる。
楽譜が手に入らない作品でも、気がついたことを紙に書き出したりと、
やはり、手を動かしながら学習してみましょう。
‣ 作曲者のこだわりを読み取ろう
たとえ作品が異なっても、同じ作曲家の作品であれば譜面の景色は似ていると思いませんか?
作曲家はみんな、良い意味でプライドがあり、こだわりや意思を持って譜面を書いているので、とうぜんのことです。
一方、もっと細かい面でのこだわりも演奏者は読み取っていかないといけません。
例えば、以下のようなものです:
・メロディのひとつの音だけに書かれているフェルマータ
・dolceなどという、ちょっとした書き込み
・さりげなく装飾音がかけられている音
これらのような要素は無くても成立しますが、作曲家は書いたわけです。
そのこだわりを読み取ってあげましょう。
► 実際にやってみよう
ベートーヴェン「ソナチネ 第5番 ト長調 Anh5(1) 第2楽章」を使って、
思い付いたことを何でも書き込んでみる練習をしてみましょう。
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)
【実施例】
PDFで入手したい方は以下よりダウンロードしてください。
ベートーヴェン「ソナチネ 第5番 ト長調 Anh5(1) 第2楽章」分析実施例
このような分析方法では、個人によって実施結果に差が出ます。
この実施例はあくまで参考程度として、自身のものと照らし合わせてみてください。
► 応用のヒント
‣ 独学での効果的な学習方法
時間の使い方
・通勤時の電車内で楽譜を読む
・昼休みに10分だけでも書き込みをする
記録と共有
・分析した内容をスマートフォンで撮影して保存
・気づきをブログやノートに整理
‣ コミュニティでの学び
オンラインでの学び合い
・Twitterでの分析結果の共有
・Zoomなどを使った分析会の開催
オフラインでの活動
・音楽仲間との分析会
・楽譜を囲んでのディスカッション
【おすすめ参考文献】
本記事で扱った、ベートーヴェン「ソナチネ 第5番 ト長調 Anh5(1)」について学びを深めたい方へ
・大人のための独学用Kindleピアノ教室 【ベートーヴェン ソナチネ 第5番 ト長調 Anh5(1)】徹底分析
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