【30秒で分かる】初心者でもできる楽曲分析方法⑧ ~両手の離れ方の移り変わりを調べる~

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【30秒で分かる】初心者でもできる楽曲分析方法⑧ ~両手の離れ方の移り変わりを調べる~

 

► はじめに

 

音楽には「空間」があり、ピアノ曲では、その空間が両手の位置関係によって生み出されます。

両手が近づいたり離れたりする変化は、緊張感や開放感を生み出す重要な要素。

 

この記事では、両手の位置関係の変化から、作曲家が意図した音楽の広がりと緊張感を読み解いていきます。

 

► 対象者など

 

こんな方におすすめ
 ・楽曲分析の基礎を学びたい方
 ・楽曲への理解を深めたい方
 ・どんな楽曲にも応用できる分析方法を身に付けたい方

前提レベル
 ・基本的な楽譜が読める程度

 

► 習得できるスキル

 

本記事を通じて、以下のような実践的なスキルが身につきます:

・楽曲の緊張度の移り変わりの見抜き方
・作曲家の意図を読み取る具体的な方法
・より深い音楽理解につながる分析アプローチ

 

► この分析方法について

 

ピアノ曲では、両手の位置関係がさまざまに変化します:

・両手が中音域で近づく → 親密さ、緊張感の高まり
・両手が大きく離れる → 開放感、音楽的な広がり
・片方の手が動き、もう片方が留まる → 方向性のある緊張感

これらの変化は、以下のような効果を生み出します:

空間的な効果

・音の広がりによる立体感
・音域の使い方による強調

心理的な効果

・緊張と弛緩
・期待感と解決感

 

►「両手の離れ方の移り変わり」を見つける手順

 

STEP 1:楽譜全体を見渡す
・楽譜を少し離れた位置から見て、両手の位置関係の全体像を把握
・特に目立つ変化をメモ

STEP 2:以下の要素に注目する
・両手の音域が1オクターブ以内に近づく箇所
・両手の音域が2オクターブ以上離れる箇所
・両手の音域が徐々に開いていく箇所
・両手の音域が徐々に閉じていく箇所

STEP 3:見つけた効果を考察
・前後の文脈との関係
・楽曲全体における役割
・聴き手への影響

 

► 分析のコツ

 

1. 距離感の目安

・1オクターブ以内:密集した響き
・1オクターブ以上2オクターブ以内:開放的な広がり
・2オクターブ以上:より開放的な響き

2. 変化のパターン

・突然の変化:劇的な効果
・徐々の変化:自然な流れ
・規則的な変化:構造的な安定感

 

► 実例で分析

 

ベートーヴェン「ソナチネ 第5番 ト長調 Anh5(1) 第2楽章」を例に、具体的な分析方法を見ていきましょう。

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)

重要な部分とその効果

 

1. 両手の反行による開きと閉じ(A)

効果:
・空間が徐々に広がることで生まれる解放感
・11小節目へ向けての急激な収束による緊張感
・広がった音域から中音域への集中による聴覚的なフォーカスの変化

 

2. 右手の停滞と左手の動きによる斜行(B)

効果:
・拍節がずれた左手の跳躍下行による不安定さの表現
・メロディの静止と伴奏の動きによる期待感
・反行や並行とは異なるニュアンス表現

 

3. 右手の上行と左手の停滞による斜行(C)

効果:
・メロディの上行による高揚感
・音域差の拡大による開放感
・左手の支えによる安定感の維持

 

4. 両手の反行による開きと閉じ(D)

効果:
・コーダとしての開放感
・メロディの1オクターヴ跳躍を活かすサウンドの広がり
・36小節目へ向けてすぐに反行で閉じる、瞬間的なヤマの演出

 

► 実践課題

 

バッハ「アンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳 第2巻 メヌエット BWV Anh.115 ト短調」

を題材に、「両手の離れ方の移り変わり」の要素を見つけ出して、その意味を考えてみましょう。

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、楽曲全体)

分析のポイント

以下の観点で分析してみましょう:

・この曲で最も印象的な音域の変化は何か
・その変化は曲の構造とどう関係しているか
・同じ作曲家の他の作品でも同様の手法が使われているか

特に注目すべき要素:

・両手の音域が反行で大きく離れていく箇所
・両手の音域が近づく箇所
・その変化が生み出す効果

 

 

【解答例】

 

重要な部分とその効果

 

1. メロディへのハイライト(A)

効果:
・両手の音域が大きく離れているため、高音域のメロディにハイライトが当たる
・印象的な導入効果

 

2. 両手の反行による開きと閉じ(B)

効果:
・3小節間かけて両手の音域が開いていく開放感
・19小節目にクライマックスを作る効果

 

3. 両手をひとつの表現へ(C)

効果:
・両手の音域が接近しているため、両手でひとつの和音を作っているような印象
・エンディングへ向けての雰囲気の更新

 

► 困ったときは

 

Q1: たくさんの変化が見つかって整理できない
A1: まずは最も印象的な変化から分析を始めましょう。特に、両手の音域が極端に離れたり近づいたりする箇所は重要なポイントとなります。

Q2: 意図が読み取れない
A2: その要素の前後の文脈を見てみましょう。多くの場合、対比や強調のために使われています。また、同じ作曲家の他の作品でも同様のパターンが使われていないか確認してみるのも有効です。

 

► まとめ

 

この記事で学んだこと:

1. 両手の離れ方の変化は、音楽的な表現の重要な要素
2. 変化のパターンと速度が与える効果は様々
3. 文脈の中で効果を考察することで、楽曲への理解が深まる

 

► 次回予告

 

次回は「共通点を見つける」について解説します。

具体的な内容:
・楽曲の中での共通点の見つけ方
・作曲家の意図を読み取る具体的な方法
・一度出てきた素材に着目する分析アプローチ

 


 

【おすすめ参考文献】

本記事で扱った、ベートーヴェン「ソナチネ 第5番 ト長調 Anh5(1)」について学びを深めたい方へ

・大人のための独学用Kindleピアノ教室 【ベートーヴェン ソナチネ 第5番 ト長調 Anh5(1)】徹底分析

 

 

 

 

 

 

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