【ピアノ】なぜ「最悪、◯◯する」という考えは最悪なのか
► はじめに
・「この曲を弾きたいけど、ちょっと難しいかも。最悪、もう少し簡単な曲に変えようかな。」
・「来週のレッスンまでに譜読み終わらないかも。最悪、前にやった曲を持って行こうかな。」
こんなふうに考えたこと、ありませんか。
実は、この「最悪、◯◯する」という考え方は、学習における大きな落とし穴です。
►「最悪」という言葉が持つ危険性
‣ 失敗を前提にした思考パターン
「最悪、◯◯する」と考えている時点で、無意識のうちにうまくいかないという前提で動いています。
本来、新しい曲に挑戦するときや練習計画を立てるときは、「どうすれば弾けるようになるか」「どう工夫すれば間に合うか」を考えるべき場面です。ところが「最悪」という言葉を口にした瞬間、思考の矛先は180度変わってしまいます。
・「どうすれば達成できるか」→「できなかったらどうしよう」
・「挑戦しよう」→「失敗してもいいや」
・「前に進もう」→「逃げ道を確保しておこう」
心や行動が、無意識に失敗する方向へと傾いてしまうのです。大金を使うときなど、最悪のシナリオも理解しておくべきケースはあるでしょう。しかし、逃げ道の確保も要らないようなことですべて逃げ道を作っていると、いつまでも積み重なっていきませんし、逃げ癖がついてしまいます。
‣ 自分との約束を破る習慣
「この曲を弾けるようになりたい」と決めたとき、自分自身と約束をした気になっていることでしょう。これをきちんと約束する必要があります。「最悪、別の曲にする」と考えた瞬間、した気になっている約束は簡単に反故にされてしまいます。
問題は、この約束を破る習慣が積み重なることです。
一度逃げ道を作ると、次も、その次も、同じパターンを繰り返してしまう。そうして「やると決めたことをやり遂げられない自分」という自己イメージが強化され、どんどん自信を失っていきます。
► なぜ「最悪」思考に陥ってしまうのか
‣ 不安から目を背けたい心理
「最悪、◯◯する」という考えは、実は不安への対処法の一つです。
「難しくて弾けないかもしれない」という不安に直面したとき、人は無意識に逃げ道を用意することで心の平穏を保とうとします。しかし、これは不安を解決するのではなく、単に先送りしているだけで、根本的な成長にはつながりません。むしろ、また達成できなかったことでさらに自信がなくなります。
‣ 完璧主義の裏返し
意外かもしれませんが、「最悪」思考は完璧主義の裏返しでもあります。
「完璧にできなかったらどうしよう」という恐れが強過ぎるあまり、最初から保険をかけてしまうのです。しかし、自分との約束を守る継続的な取り組みと小さな成功の積み重ねのほうが、長い目で見たときに成長になります。
►「最悪」思考から抜け出す3つの方法
‣ 1. 少しやったら確実に前へ進む小さなステップを明確にする
・「8小節ぶんの運指を決めることができた」
・「8小節ぶんのペダリングを決めることができた」
このように、少しやったら確実に前へ進める小さな部分をしっかりと小分けで認識して積んでいきましょう。漠然とした不安に対抗する最良の方法は、小さな具体的な行動を設定し、その達成をいちいち喜ぶことです。
‣ 2. 代替案にするくらいであれば「最初から」選択肢にする
もし「最悪、◯◯する」の◯◯でもいいと思っているのであれば、それは本当に「最悪」の選択ではないはずです。だったら、そもそも今からその選択肢一本に絞って、そこに全力を注ぐべきです。
・少し平易な曲でもいいなら、最初からその曲を選んで、完璧に仕上げる
・前にやった曲を復習したいなら、それを今回の課題として堂々と選び、先生に事前報告する
中途半端な保険をかけるのではなく、決めたことをきちんとやる。その姿勢こそが、確実な上達につながります。
‣ 3. 自分との約束を守ることを最優先にする
「最悪、◯◯する」ではなく、最初にした自分との約束を守ることを何よりも大切にしましょう。
たとえ完璧に弾けなくても、予定通りに進まなくても、「この曲に挑戦する」と決めたのであれば、その約束を守り抜くためにできる行動を取るのです。人によっては、「決める」ことからできるように強い気持ちを持つ必要があるのかもしれません。
地味なことでも毎日自分との約束を守りながら淡々とやっている人は、ネットを見渡せばたくさんいます。YouTube動画やブログ記事など何でも。そういった発信者から影響受けるのもいいでしょう。
►「逃げ癖」に気づく重要性
「最悪、◯◯する」という考えが頻繁に浮かぶようなら、それは逃げ癖がついているサインかもしれません。そしてこの癖は、ピアノだけの問題ではない可能性があります。
・仕事で難しい課題に直面したとき
・人間関係で向き合うべき問題があるとき
・新しいことに挑戦しようとするとき
同じパターンで「最悪、やめればいい」と考えていませんか。
ピアノでの思考パターンは、日頃の生活全体の思考パターンを映す鏡です。音楽への向かい方を見直すことは、日々の生活への向かい方を見直すことでもあります。
► 終わりに
「最悪、◯◯する」という考え方は、一見すると賢い準備に思えます。しかし実際には、自分の可能性を制限し、成長のチャンスと他人の信頼を自ら手放す行為なのです。大切なのは:
・できない理由ではなく、できる方法を探すこと
・少しやったら手に入る小さな一歩をしっかりと小分けで認識して積んでいくこと
・自分との約束を守ること
・逃げ癖がついていないか振り返ること
「最悪、◯◯する」という言葉を封印する姿勢こそが、学習を確実に前へ進めていきます。
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