【ピアノ】楽譜に小節番号がない理由と対処法:イチ使用者の本音
► はじめに
ピアノを学んでいる方なら、一度は経験したことがあるのではないでしょうか。「あれ、この楽譜、小節番号がない…」という戸惑い。特にピアノソロの楽譜では番号が書かれていないケースが意外と多く、練習する側としては正直なところ、使いにくいと感じることも少なくありません。
► なぜ、小節番号を振らない楽譜が多いのか
アンサンブル作品では複数の演奏者が場所を共有する必要があるため小節番号もしくは練習番号が必須ですが、ピアノソロではそうした必要性が低いという事情もあります。しかし、それだけではありません。段の先頭にさえも小節番号を振らない楽譜が多い背景には、出版社や編集者側の明確な方針があると考えられます。
‣ 視覚的な美しさを優先する編集方針
楽譜に小節番号を加えることを、演奏上の集中を妨げる視覚的な「ノイズ」と捉える考え方があります。特にクラシック音楽の著名な出版社の中には、楽譜の美しさを重視し、音符や記号を純粋に追うことに集中させるため、楽譜上の情報を最小限に抑えたいという伝統的な方針を持っているところもあります。
‣ 歴史的な慣習の尊重
古い時代の作品では、そもそも小節番号を振るという習慣が一般的ではありませんでした。作曲家自身が番号を振らなかった場合、その伝統的なレイアウトをそのまま尊重して再現しているケースもあります。歴史的な正確さを追求する出版物では、このような編集姿勢が見られます。
※ただし、原典版でも実用性を考慮したものには番号が振られており、必ずしもすべてが統一されているわけではありません。
‣ 音楽的なフレーズを重視する意図
小節番号という機械的な区切りではなく、音楽的なフレーズの流れで曲を捉えて欲しい、という教育的な意図が込められている場合もあります。書かれている数字というのは、多少なりとも意味を持ってしまうので、演奏者が番号に縛られず、音楽の自然な流れを感じ取ることを促すための配慮と言えるでしょう。
※ 教育用の実用版などでは、こうした方針よりも利便性が優先され、比較的多くの楽譜に番号が記載されています。
► イチ使用者の本音と対応策
‣ イチ使用者の本音:小節番号があることのメリット
出版社側の方針には一定の理由があるものの、現代の演奏や教育の現場においては、小節番号の利便性は極めて高いものです。多くのピアノ弾きにとって「段の先頭だけでも振ってほしい」というのが正直な本音でしょう。
指導者とのコミュニケーションが円滑に
・指導者「第○小節、○拍目からもう一度弾いてください」
・生徒「○小節目のディナーミクについて質問があります」
このようなやりとりが可能になり、レッスン時間を有効に使えます。特に2台のピアノを使ったレッスンでは、指差しで「ここから」と示すことができないため、番号による位置共有が非常に役立ちます。
番号がない場合は「3ページ目の2段目の…」といった曖昧なやり取りになり、非効率です。
自己分析やメモに活用できる
・「○小節目と○小節目は、音は同じだがダイナミクスが異なる」
・「○小節目は左手のリズムに注意」
独学でも、このような気づきを記録できます。楽譜への書き込みが、そのまま自身の練習ノートになるのです。
楽曲分析や解説書を読む際に必須
その楽曲の分析や解釈が書かれた書籍を読み進めるときには、大抵、小節番号で話が進んでいきます。楽譜に番号が書き込んであれば、すぐに該当箇所を確認でき、理解が深まります。
‣ 対応策:書かれていなければ段の先頭のみ、自分で振る
小節番号のない楽譜は、やや使いにくいのが実情です。練習効率を上げたいのであれば、迷わず自分で書き込みましょう。全小節に書く必要はありません。各段の先頭に記すだけで十分です。
鉛筆で書けば、必要に応じて消すこともできます。演奏しやすいように工夫して楽譜を作り上げていくことも、練習の大切なプロセスと言えるでしょう。
► 終わりに
小節番号が書かれていない楽譜の背景には、美しさや伝統、音楽的な意図といった出版社側の方針があります。しかし、実際に練習する側の立場からすれば、小節番号は練習効率を大きく向上させる実用的なツールです。
楽譜に小節番号がない場合は、遠慮なく自分で書き込みましょう。段の先頭だけで構いません。それだけで、練習の質が大きく変わるはずです。
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