【ピアノ】巨匠たちの名言から学ぶ演奏上達のヒント

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【ピアノ】巨匠たちの名言から学ぶ演奏上達のヒント

► はじめに

 

巨匠たちは数々の貴重な知恵を残してくれました。

本記事では、テクニックの本質から音楽への向き合い方まで、巨匠たちの言葉から学べる実践的な知恵をご紹介します。これらの教えは、全てのピアノ学習者の糧となるはずです。

 

► 名言・金言集

‣ 1. ギーゼキングのテクニックに関する名言

 

巨匠、ギーゼキング(1895-1956)は「テクニックというものは、要するに頭脳との連携にある」という言葉を残しています。この深遠な言葉には、以下の2つの重要な意味が込められています。

 

【テクニックと表現の関係性】

ギーゼキングがこのように言ったのは、「読譜力の重要性」を強調してのことでしょう。

読譜による音楽理解が、必要なテクニックを生み出します。例えば、「あたたかい音」を出したいという表現意図があってこそ、打鍵の速度や角度といった具体的なテクニックの必要性が見えてくるのです。

頭脳も用いて楽譜をきちんと読み取ることで表現の方向性が明確になる。その結果、テクニック面と結びつきます。

 

実践のポイント:

・新しい曲を始めるよりも前に、楽曲分析をする時間を設ける
・表現したいイメージを明確にしてから、技術的練習に移る

 

【頭脳の状態とテクニックの関係】

この言葉には、より直接的な意味も含まれています。頭脳の状態が、テクニックの発揮に大きく影響するのです。

 

お酒を飲んだ後にピアノを弾いてみたことはありますか?

普段よりも全く指が動かなくて驚いたことと思います。

 

指を動かすのは頭脳の命令によりますが、酔っ払っている時は頭脳が一種の異常状態なので、結局、指もうまく動かなくなるのでしょう。

酔っ払っても手は冷えません。指の筋力が落ちるわけでもありません。頭からの指令が働きにくくなった結果です。

 

指を動かすためには頭脳の働きが非常に重要ということもあり、

【ピアノ】指を速く動かすための混乱学習法

という記事では、普段の練習の中に「頭を混乱させるトレーニング」を織り混ぜることをおすすめしました。

 

「テクニックというものは、要するに頭脳との連携にある」というギーゼキングの言葉の中には、「頭脳に楽ばかりさせていてはテクニックは上がらない」という意味が入っていたのではないかとも推測できるのです。

 

実践のポイント:

・練習時の集中力管理を意識する
・機械的な反復を避け、常に頭脳を活性化させる

 

‣ 2. 齋藤秀雄氏の音楽への向き合い方に関する名言

 

「嬉遊曲、鳴りやまず―斎藤秀雄の生涯」新潮社 中丸美繪 著

に収められた、秋山和慶氏への言葉は今なお心に響きます。

(以下、抜粋)
「まじめに勉強しろ、真剣に音楽に対峙しろ、と斎藤先生はいいましたね。
音楽を利用して、自分がいい格好するのに音楽を使うな、有名になるために音楽を出しにするな、とね。」
(抜粋終わり)

 

専門的に音楽を勉強する方へ向けた厳しい言葉ですが、音楽に真摯に向き合う気持ちの在り方としては趣味でピアノを学ばれている方にとっても刺さる言葉だと思います。

 

実践のポイント:

・音楽本来の価値を第一に考える
・外面的な評価にとらわれすぎない
・真摯に音楽と向き合う時間を確保する

 

・嬉遊曲、鳴りやまず―斎藤秀雄の生涯 新潮社 中丸美繪 著

 

 

 

 

 

 

‣ 3. 中村紘子氏の基礎を攻略するための名言

 

中村紘子氏はテレビ番組で

「みなさん、やる量が少ないと思うの。」

と語りました。この一言は、練習に対する我々の姿勢を問い直すものです。

 

主に専門家を目指す方へ向けていた言葉です。

しかし、「上達したい」「基礎を何とかしたい」という強い気持ちをお持ちの場合は、趣味の方であってもやる量を増やしてみるのも一つの手だと言えるでしょう。

 

実践のポイント:

・練習の質と量の両面を見直す
・「上達したい」という気持ちを具体的な練習量に反映させる
・毎日の学習量を記録し、客観的に評価する

 

‣ 4. マレイ・ペライアが語った、周辺知識学習の重要性

 

「究極のピアニストたち: 20~21世紀の名ピアニストの至芸と金言」音楽之友社

というムック本には、様々な名ピアニストへの取材記事などが収録されています。

・ピアノへの向き合い方
・音楽のルーツ
・その他、有益な話

などについて各々が丁寧に語っています。

 

その中に収められたペライアの言葉は、周辺知識の学習の重要性を説きます:

(以下、p.129より抜粋)
私は若いピアニストたちに「バッハやベートーヴェンなどあらゆる作品を手がける前に、まず対位法をよく理解しなさい。不協和音や通奏低音、装飾音について知りなさい、そうすれば音楽に触れる手がかりを失うことは決してないから」とよくアドバイスします。
(抜粋終わり)

 

これもまた主に専門を目指す若者へ向けたものでしょう。しかし、どんな学習者に対しても金言と言えるものです。

 

「音楽に感覚は大事だけれども、あまりにも感覚に頼りすぎてはいないか」という視点を今一度思い返して頂けたらと思います。

 

装飾音を例にとります。

例えば、その楽曲に「プラルトリラー」が出てくるのであれば、「プラルトリラー」「モルデント」「トリル」などの各種装飾音はどこがどう違うのかをしっかりと整理しておく。

こういったことをせずに感覚で装飾音を入れていると、必ず、行き詰まりがきます。

「練習を積み重ねる」というのは、「何となく弾ける曲を何となく増やしていくこと」ではありません。「周辺知識も身につけながら音楽を理解していくこと」です。

 

実践のポイント:

・周辺知識学習を疎かにしない
・装飾音など、各要素の正確な理解を心がける
・感覚だけでなく、知識にも基づいた演奏を目指す

 

・究極のピアニストたち: 20~21世紀の名ピアニストの至芸と金言 音楽之友社

 

 

 

 

 

 

‣ 5. 体操界レジェンドの名言から学ぶ

 

異分野の巨匠の名言も取り上げます。

 

塚原光男さんをご存知ですか?

1972年に「月面宙返り(ムーンサルト)」という難しい技を生み出した、体操界のレジェンドです。

塚原さんが以下のような名言をのこしています。

誰かに勝ってやろうとか、目立ってやろうという、そんな発想からじゃないんです。こんな技ができたら楽しい、ということに尽きるんです。

 

ピアノ上達のカギもここにあります。

言い換えれば、この考え方がない人は:

・コンクールからの刺激
・周りの人物からの刺激

これらが無くなった途端に、モチベーションが続かなくなってしまう。

 

画期的なモノを発明してきた人物も、塚原さんと同じような考え方をしているケースが多いでしょう。

・楽しくて仕方がない
・知りたくて仕方がない
・できるようになることを想像するとワクワクする

こんなことばかり考えて、いつもウズウズしていたのだと思います。

 

決して目標の焦点を間違えないように注意し、日々ピアノへ向かっていきましょう。

そうすれば、結果的に ”より遠く” へ行けることは先人が証明しています。

 

実践のポイント:

・純粋な音楽への興味を大切にする
・他者との比較はほどほどにし、自身の成長も喜ぶ
・練習自体を楽しむ姿勢を持つ

 

‣ 6. 巨匠の講演から学ぶ音楽と人生

 

探してみると、国内外の巨匠の話を聞けるイヴェントは数多く出てきます。

 

レッスン形式でそれを聴講するマスタークラスや、講演会のような形のものもあり、どちらもためになるものですが、講演のものにも多く足を運ぶことがおすすめ

 

巨匠の解釈やテクニックのあれこれを学べるという意味では、レッスンには価値があります。

一方、何度かマスタークラスを聴いたことがある方は気づいているかもしれませんが、巨匠だからといってものすごく突拍子もないことを言うわけではありません。日頃、よく勉強した優れた指導者についている方や有益な教材に囲まれている独学の方にとっては、聴き慣れたこともたくさん耳に入ってきます。

 

一方、講演の方は、実技レッスンこそなくてもその巨匠の生き方そのものを学べます

豊富な音楽活動やその他から経験したことをリアルに伝えてもらえることが多いので、その人物ならではの話題になります。

 

そういったところから:

・音楽に対する考え方や生き方
・辛いことや楽しいこと

などを実体験をもとに教えてもらうことで、話を聴き終わった後に、自分そのものに影響を与えてくれたことに気づきます

 

このような巨匠の経験を知れて自分について考える機会も、レッスンと同じくらい大切にして欲しいと思います。

 

聴講のポイント:

・技術的な内容だけでなく、音楽家としての生き方にも注目する
・具体的なエピソードから学びを得る
・自身の音楽活動に活かせる視点を探る

 

► 終わりに

 

巨匠たちの言葉は、我々の音楽学習に明確な指針を与えてくれます。テクニックの本質、音楽への真摯な向き合い方、基礎の重要性。これらの教えを日々の練習に活かし、より深い音楽表現を目指していきましょう。

 


 

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