【ピアノ】楽曲分析(アナリーゼ)の効果的な進め方:2段階アプローチのすすめ
► はじめに
「楽曲分析(アナリーゼ)」は、楽曲理解を深めて演奏の質を高める重要な手段です。しかし、いつ、どのように分析を行うかによって、得られる効果は大きく変わります。
本記事では、より効果的な分析を行うための「2段階アプローチ」について、具体的な方法と推奨教材を交えて解説します。
► なぜ、2段階に分けるのか
分析は、2段階に分けて行いましょう。なぜかというと、分析のタイミングによって得られる情報と理解の深度が大きく変わるからです。
多くの方が経験していることでしょう。特定の楽曲について、譜読み前からピアニストの音源を何度も聴いていたとしても、それは「分かったつもり」になっていただけ。実際に譜読みを進めると、新たな発見の連続です。譜読み前後では、同じ楽曲に対する見方が劇的に変化しています。
そのため、以下の2段階での取り組みを強く推奨します:
第1段階:譜読み前の「大まかな分析」
全体の構造と流れを把握する「森を見る」分析
第2段階:譜読み後の「詳細な分析」
楽曲理解が深まった段階での「木を見る」分析
► 実践方法
‣ 第1段階
· 譜読み前の分析でチェックしたいポイント
大まかな分析では、以下のような項目に注目してみましょう:
・楽曲形式:ソナタ形式、ロンド形式、三部形式など
・調性の変化:主調から関係調への移行パターンなど
・大きな区分け:提示部、展開部、再現部などの構造
・テンポ・強弱の変化:楽想の転換点の把握
・主要なモチーフ:繰り返し現れるメロディやリズム
この段階では「森を見る」感覚で、楽曲全体の大きな流れを把握することを最優先にしてください。
· 分析参考書の活用
譜読み前の大まかな分析では、軽めの内容で構成された分析本を活用するのも効果的です。例えば、モーツァルトのピアノソナタの場合:
「モーツァルト ピアノソナタ 形式の分析による演奏の手引き」著 : ヨセフ ブロッホ、中村 菊子、木幡 律子 / 全音楽譜出版社
という書籍が、この段階の参考教材に適しています。
この書籍は「全構成分析は書かれているが、その他の内容はシンプル」という特徴があり、第1段階の分析における道しるべとして最適です。
・モーツァルト ピアノソナタ 形式の分析による演奏の手引き 著 : ヨセフ ブロッホ、中村 菊子、木幡 律子 / 全音楽譜出版社
‣ 第2段階
· 譜読み後の詳細な分析
楽曲理解が深まった段階で、再度分析に取り組みましょう。このタイミングでは:
・第1段階で使用した分析本の再読
・より詳細な解釈本や分析本への挑戦
・自分で手を動かしながら考えるアプローチのさらなる継続
第1段階では気づかなかった新しい発見が必ずあります。これが2段階アプローチの最大の効果です。
· 第2段階で深掘りしたい要素
・第1段階で見つけた内容の深掘り:各転調の必然性と効果、モチーフの変奏、転回、拡大・縮小の発見 など
・他の楽曲との比較:同時期の作品や類似の形式との比較分析
・演奏方法の「何となく」をゼロに:作曲家の意図と実際の演奏法を調べる(「演奏論」資料も活用推奨)
► 学習を加速させる推奨アプローチ
気づいたことは楽譜へガンガン書き込む
分析で発見したことは、遠慮なく楽譜へ書き込みましょう。視覚的な情報として記録することで、後の復習や練習時の参考になります。
詳細な書き込み学習法:【ピアノ】楽譜への書き込みから始める直感的楽曲分析
複数の分析本を比較検討する
異なる著者による分析を比較することで、多角的な視点を身につけられます。ときには解釈が異なる場合もあり、それが新たな気づきにつながります。
分析本サーチの推奨記事:レベル別:ピアノ独学者のための学習参考書籍ライブラリー
► 終わりに
楽曲分析の2段階アプローチは、深い楽曲理解を得るための効果的な方法です。まずは、現在演奏している楽曲から始めてみましょう。
ポイント:
・第1段階では「全体像の把握」に集中する
・第2段階では「詳細な分析」で理解を深める
・各段階で適切な参考書を活用する
・自分自身で手を動かして分析する時間も必ず作る
・発見は必ず楽譜に記録する
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