【ピアノ】ストラヴィンスキー「5つの指で」特徴と選曲のヒント:初級者向け

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【ピアノ】ストラヴィンスキー「5つの指で」特徴と選曲のヒント:初級者向け

► はじめに

 

「ストラヴィンスキー」と聞いて、どんなイメージを持つでしょうか。

「春の祭典」のような一般的には複雑と言われているような作品が有名ですが、実は、初心者でも楽しめるピアノ曲があります。その一つが、今回紹介する「5つの指で」です。副題は「5つの音に基づくやさしい8つの小品」。この曲集は、ストラヴィンスキー入門への第一歩として、また初心者のための学習教材として、ピアノ学習者に親しまれています。

本記事では、この曲集の特徴や抜粋演奏する場合の選曲の仕方などを解説していきます。

 

※この作品はまだ著作権保護期間中のため、譜例は掲載できません。

 

► ストラヴィンスキーは、どんな作曲家?

 

イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882-1971)は、ロシア出身の作曲家で、20世紀音楽界の巨匠の一人です。

代表作:

・バレエ音楽「春の祭典」:初演時に大スキャンダルを巻き起こした革新的作品
・バレエ音楽「火の鳥」「ペトルーシュカ」:ロシア・バレエ団のために作曲

数は多くありませんがピアノ曲も作曲しており、特に「ペトルーシュカからの3楽章」はピアニストのレパートリーとして広く知られています。

「5つの指で」は、フランスに移住した直後の1921年に作曲されている教育的作品です。

 

► 作品について

‣「5つの指で」が特別な理由

 

1. 子供のために書かれた作品

この曲集は、ストラヴィンスキーが子供のために作曲したとされています。

特徴:

・右手のポジションをほぼ固定(5本の指をその場所で動かすだけで弾ける)
・技術的な難易度は高くない
・しかし音楽的には多数の工夫が見られる

 

2. ストラヴィンスキーへの優しい入口

この曲集の最大の魅力は、ストラヴィンスキーの語法を初級レベルで体験できることです。

学べる近現代的要素:

・ポリリズム:異なるリズムの同時進行
・複調性:異なる調性の重ね合わせ(第6曲)
・シンコペーション:予想外のアクセント
・度重なる拍子変化:特に第8曲で顕著

 

3. 適度な難易度設定

全音ピアノピース難易度では「Bランク」に分類されています。

・第1-7曲:Aランク程度(初級)
・第8曲:Bランク(初級上)

楽譜の見た目はシンプルですが、リズムや和声の扱いに近現代的な要素があるため、実際の難易度は少し高く感じられるかもしれません。しかし、古典的な初級教材とは異なる良い刺激になることでしょう。

 

‣ 8つの小品を知る

 

それぞれの曲は明確に異なる個性を持ち、わずか30秒から1分30秒の中に凝縮された音楽世界を展開します。

 

第1曲 アンダンティーノ
・演奏時間:約30秒
・練習曲的色合いが強い導入曲

第2曲 アレグロ
・演奏時間:約1分
・メロディの同音連打が印象的な、民族的踊りを思わせる作品

第3曲 アレグレット
・演奏時間:約1分
・急激なダイナミクスの交替、シンコペーション、対位的書法の混在など、バランスが取れた作品

第4曲 ラルゲット
・演奏時間:約1分30秒
・シチリアーナ風で美しいメロディも持つ、8曲中では特に聴きやすい作品

第5曲 モデラート
・演奏時間:約1分
・映画「シャネル&ストラヴィンスキー」でも使用された、異国的で印象的な作品

第6曲 レント
・演奏時間:約30秒
・両手で異なる調性を演奏する箇所を持つ、近現代的発想の作品

第7曲 ヴィーヴォ
・演奏時間:約30秒
・前後の楽曲と対照的な快活さと、両手で正反対の表現(レガート+スタッカート)を持つ箇所のある作品

第8曲 ペザンテ
・演奏時間:約1分
・タンゴの性格を持ち、拍子も頻繁に変更される8曲中最も難しい作品

 

► 推奨楽譜

 

全音ピアノピースは、入手しやすく安価でもあり、初級者が他の教材と併用したい場合のハードルが低いのでおすすめです。

・ピアノピースー378 五本の指 / ストラヴィンスキー(全音ピアノピース)

 

 

 

 

 

► 発表会での活用アイデア

 

初心者の場合:抜粋演奏で特におすすめの3曲

・第4曲:美しいメロディも持つ、8曲中では特に聴きやすい作品として
・第5曲:
映画「シャネル&ストラヴィンスキー」でも知られている印象的な作品として
・第8番:内容的に最も充実した、演奏効果も高い作品として

もし一つの本番でこの3曲をすべて演奏できるのであれば、第5曲を速めのテンポで仕上げてみましょう。他の2曲との対照性が出て音楽的なステージになります。

 

中級者の場合:全8曲演奏

・所要時間:約8分(楽曲間の間隔含む)
・適用場面:10分程度の持ち時間がある演奏会

 

上級者の場合:他作品との組み合わせ

・導入として:本曲集から2-3曲を抜粋し、他のフランスものなどの大曲と組み合わせる
・適用場面:15-20分程度の持ち時間がある演奏会

 

► 終わりに

 

この曲集の価値は、以下の3点に集約されます:

技術的負担が少ない:初級者でも無理なく取り組める
音楽的に豊か:初級者の段階からストラヴィンスキーの魅力を味わえる
実用的:演奏発表会でも映える

「クラシック音楽=古典派・ロマン派」という固定観念を持っている学習者が多いようです。その考えを一歩超えて、20世紀の音楽世界に触れてみましょう。

 

推奨記事:【ピアノ】映画「シャネル&ストラヴィンスキー」レビュー:音楽が語る禁断の恋

 


 

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