「楽式論」を無駄にせず使い続ける6つのコツ

スポンサーリンク

 

「楽式論」を無駄にせず使い続ける6つのコツ

 

► はじめに

 

楽式の学習において、「楽式論 石桁真礼生 著(音楽之友社)」は避けて通れない重要な参考書です。

音楽の構造を理解することは、演奏の質を高める上で非常に重要な要素となります。

 

しかし、楽式論は一度は購入したものの、使わなくなってしまう代表的な音楽参考書。

その最大の理由は、

成果が返ってくるまでにある程度の時間がかかり、すぐには学習効果を感じにくい分野だからでしょう。

 

部分動機などのきわめて小さな単位から音楽の根本をとらえていく分野なので、

身になるまでに時間がかかるのは避けられません。

「効率的な練習方法」などのすぐに実践できる具体策とは性質が異なるんです。

 

継続的な学習は必要不可欠ですが、途中で出てくる小さな挫折ポイントは工夫次第で減らすことができますので、

ここでは、筆者の経験から得られた具体的なコツをご紹介します。

 

► 6つのコツ

 

‣ 分散を避ける学習を心がける

 

まず、「使い続ける」という観点から最も重要なポイントをお伝えします。

楽式学習では、だまされたと思って定番書を使ってください

 

一番避けたいのは、「内容が偏っていて、別の書籍で全部勉強し直しになる」という状況です。

その点、定番書である「楽式論 石桁真礼生 著(音楽之友社)」は、以下の点で非常に優れています:

・最低限の知識の網羅性
・専門性と分かりやすさの両立

楽式を学びたいと思って探すと、様々な参考書が見つかります。

しかし、「楽式論」をメインにすると決めたら、他の楽式の参考書はいったん無視しましょう。

 

もちろん、難しい部分を理解するために補助的に他の参考書を参照するのは構いません。

ただし、普段から複数の本を併用するのは避けることをおすすめします。

参考書が変わると、同じ内容でも言い回しや用語が異なることがあり、定着の妨げになる可能性があるためです。

 

・楽式論  著:石桁真礼生 音楽之友社

 

 

 

 

 

‣ 枕元へ出しっぱなしにする

 

継続的な学習のために、とにかく本をしまわずに出しっぱなしにしてください

「枕元」は比喩的な表現で、要は、自分にとって身近な場所に置いておくということです。そうすることで:

・開くまでのハードルが下がる
・存在を忘れない
・手に取りやすい

自然と学習の機会が増えていきます。

邪魔になる場所へ居座らせて、手足にするほど仲良くしてください。

 

もし開くのが面倒に感じるなら、付属の外箱を捨てるのも一つの手ですね。

 

‣ 例外アリの分野だと割り切る

 

楽式論には普遍的で重要な原則がたくさんありますが、唯一の正解を求めすぎると挫折する可能性が高くなります。

例えば:

・楽譜85の「3部形式」は、「2部形式の変形と考えられないこともありません」と解説されている
・シューマン「幻想小曲集 飛翔 Op.12-2」は、複合3分形式であると同時に、ロンド形式としても解説されている

つまり、楽式の学習では「解釈次第ではどちらともとれる」という例外は珍しくありません

ある程度はそういうものだと割り切り、柔軟な姿勢で学習を進めましょう。

完璧主義的なアプローチは、かえって学習の妨げになります。

 

‣ 曲名を加筆して、分かりやすくする

 

「楽式論」の一つの弱点は、曲名の表記が簡略化されている点。

特に馴染みの薄い作品は、その都度作品名を調べ直す必要が出てきます。

そこで、手書きで正式な曲名を加筆することをおすすめします。例えば:

【楽譜68】
(記載)ベートーヴェン・ヴァリエイション
(加筆例)ベートーヴェン「創作主題による32の変奏曲 ハ短調 WoO.80」
【楽譜105】
(記載)ドビュッシー・チルドレンスコーナー,2.
(加筆例)ドビュッシー「子供の領分 より 2.象の子守歌」

 

こうした加筆により、復習時の手間が大幅に減ります。

 

‣ 応用楽式は、いったん無視する

 

第3編「応用楽式」以降は、いったん無視してください。

この部分では「ワルツとは?」「エチュードとは?」「弦楽四重奏とは?」など、

それまでの内容が各種形式にどう応用されているかを学びます。

まずは基礎的な知識をしっかりと身につけることを優先しましょう。

 

確かに第3編は用語解説的な性格も強く、読みやすい内容になっています。

そのため、第2編までを飛ばしていきなりここから読み始める方も多いのですが、それは推奨されません。

基礎から順を追って学ぶことで、より深い理解が得られます。

 

‣ 楽式論で解説されているピアノ曲を、練習する曲にもしてしまう

 

楽式の学習は徐々に力になっていくものですが、はっきりとした成果がないと続けるのが難しい場合もあるでしょう。

そこで、「楽式論」で解説されているピアノ曲を実際に練習する曲として取り入れることをおすすめします。

 

理論と実践を結びつけることで、何か少しでも演奏へ活かせているという実感を持てるようになりますし、

今後その楽曲をまた弾くときがあったら楽式論を引っ張り出してくるので、

楽式論自体を一生放置してしまう可能性も低くなる利点があります。

 

特に詳しく解説されている主な作品は以下の通りです:

(書籍での登場順)
・シューマン「幻想小曲集 飛翔 Op.12-2」
・ドビュッシー「子供の領分 より 2.象の子守歌」
・ベートーヴェン「ピアノソナタ第8番 悲愴 Op.13 第3楽章」
・ベートーヴェン「ソナチネ Anh5(2)  第2楽章」
・モーツァルト「ピアノソナタ 第3番 K.281 第3楽章」
・ウェーバー「舞踏への勧誘」
・クレメンティ「ソナチネ Op.36-1 第1楽章」
・クーラウ「ソナチネ Op.20-2 第1楽章」
・ベートーヴェン「ピアノソナタ第1番 Op.2-1 第1楽章」
・ベートーヴェン「ピアノソナタ第23番 熱情 Op.57 第1楽章」
・ブラームス「2つのラプソディ 第2番 Op.79-2」
・J.S.バッハ「平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第11番 フーガ」
・J.S.バッハ「平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第16番 フーガ」
・モーツァルト「ピアノソナタ第11番 K.331 第1楽章」
・ベートーヴェン「エロイカ変奏曲」
・ベートーヴェン「ピアノソナタ第29番 op.106 ハンマークラヴィーア 第1楽章」
・ベートーヴェン「ピアノソナタ第23番 熱情 Op.57 第3楽章」

 

► 終わりに

 

「試行錯誤して、うまくいくやり方を見つける」

これが、学習方法を探っていく上での最大のポイント。

大げさな試行錯誤である必要はありません。例えば:

・「出しっぱなしにしたら、続くだろうか」
・「譜例の曲を知っておいてから読めば、続くだろうか」
・「いっそのこと読まない部分をつくったら、続くだろうか」

など、小さな工夫を重ねていくことが大切です。効果がなければ別の方法を試す。

そうした積み重ねの中から、自分に合った学習方法が見つかってくるはずです。

 

継続的な努力は必要ですが、決して無理のない範囲で。

自分なりの「続けられる方法」を見つけていってください。

 


 

【関連記事】

▶︎ 楽曲分析を体系的に学びたい方はこちら
初級 楽曲分析学習パス

 

▼ 関連コンテンツ

著者の電子書籍シリーズ
・徹底分析シリーズ(楽曲構造・音楽理論)
Amazon著者ページはこちら

・SNS/問い合わせ
X(Twitter)はこちら

 

この記事を書いた人
タカノユウヤ

ピアノ音楽(ピアノソロ、ピアノが編成に入った室内楽 など)に心惹かれ、早何十年。
ピアノ音楽の作曲・編曲が専門。
物書きとしては楽譜だけでなく文章も書いており、
音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆を手がけています。
Webメディア「大人のための独学用Webピアノ教室」の運営もしています。
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

タカノユウヤをフォローする
- 練習の継続方法
スポンサーリンク
タカノユウヤをフォローする
大人のための独学用Webピアノ教室(ブログ版)

コメント

タイトルとURLをコピーしました