■シュナーベル版は、そばに置いておくべき有益資料
♬ はじめに
ベートーヴェン弾きとして有名な音楽家、
「シュナーベル(1882-1951)」による
ピアノソナタの校訂楽譜をご存知ですか。
校訂版、言ってみれば解釈版であるシュナーベル版は
たくさんの特徴が見られる資料で
シュナーベルの研究の証なのですが、
本記事では
その中でも注目すべき部分を
簡潔に解説します。
ベートーヴェンのピアノソナタを学習している方は
ヘンレ版をお使いの方が多いはずです。
いわゆる原典版は
作曲家の意図を再現することに重きを置いているため、
原則、それ以外の解釈版のような書き込みは加えられません。
一方、
特に古典派までの作曲家の作品では
楽譜への書き込みが
近現代の作曲家に比べると少ない傾向にあります。
したがって、
アーティキュレーションをはじめとし
あらゆる要素について
疑問が出てくるところも多くあります。
そんなときに
シュナーベル版をはじめとした校訂版は良い資料となりますし、
校訂者の音楽感やピアノテクニックまで垣間見れるという意味でも
目を通す価値があると言えます。
♬ シュナーベル版に書き込まれた内容
シュナーベル版では
一例ではありますが
以下の内容などが捕足書き込みされました。
◉ 装飾音の入れ方
◉ ペダリング
◉ スラーやスタッカートなどの補足
◉ 音楽表現に合わせた、こまめなテンポ変化の指示(これ、かなり独特です。)
◉ ひとつのラインの、多声的な分解解釈
ダイナミクスをはじめ
ベートーヴェンの音楽自体を無理に変えることはしていません。
そうではなく、
ざっくりした言い方をすると
起きがちな不注意を防止するための書き込みが多い傾向にあります。
例えば、筆者のブログでは
「こういうところでは遅くしないで」
「こういうところではエネルギーを落とさないで」
などと、具体例を挙げながら解説している記事が多くあります。
シュナーベル版では
そういう注意ポイントにわざわざ
「ダイナミクス記号」や「その他の音楽標語」などを捕足してくれていたりと、
良い意味でおせっかいな楽譜なのです。
「注意喚起」をはじめ
「ペダリング」や「運指」までてんこ盛りに書いてくれているので
結果、かなり真っ黒な楽譜になっています。
「ただ単に細かく書き入れている」
という単純なものではなく、
「ベートーヴェンの第一人者が長い時間をかけて校訂した」
というところに
内容の価値があると言えるでしょう。
シュナーベル版は、そばに置いておくべき有益資料です。
♬ シュナーベル版を使った学習注意点
勉強方法としては、
シュナーベル版のみで学習するのではなく、
必ず原典版を手元に置いたうえで
参考書としてシュナーベル版へ手を伸ばしてください。
この楽譜単体で勉強するのがオススメできない理由としては、
例えば、
指遣いの独特なところが多く
すべてを守って弾こうとすると
学習に行き詰まる可能性もあるからです。
また、他の作曲家の作品の学習でもそうですが
原典版を知っていたうえで解釈版も参考にするほうが
自分で考えていくための引き出しを増やしていくことができるからです。
解釈版だけを使って
そこに書かれていることを
そういうものだと思ってしまうと、
比較材料がないため
「こういうときは、こうするのもアリだな」
などと自分ひとりで考えていく力はつきません。
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