【ピアノ】ジョン・W・ショーム「LEFT HAND SOLOS for the piano」シリーズ 完全ガイド
► はじめに
左手だけで演奏する曲というと、高難度の作品を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。しかし、今回紹介する「LEFT HAND SOLOS for the piano」シリーズは、そうした敷居の高さとは無縁の、初中級者にも取り組みやすい左手ソロ曲集です。編曲曲集であり、編曲者はジョン・W・ショーム(John W. Schaum, 1905-1988)。BOOK1とBOOK2の2巻構成で、著名な左手作品の旋律を、初中級者でも気軽に味わえる工夫が盛り込まれています。
本記事では、その内容と魅力を詳しく紹介します。
► シリーズの特徴
難易度の目安:
BOOK1:バイエル併用程度〜ブルグミュラー25の練習曲修了程度
BOOK2:ツェルニー30番入門〜修了程度
特におすすめしたいのはBOOK2です。左手作品として有名なスクリャービン「左手のためのノクターン Op.9-2」が、左手用のまま弾きやすくアレンジされて収録されているほか、レシェティツキー『「ランメルモールのルチア」のアンダンテ・フィナーレ Op.13』やゴドフスキー「宝石のワルツの主題による交響的変容」など、名だたる左手作品でも聴かれる旋律を取り入れた編曲も並んでいます。原曲そのものは難しくても、その美しい旋律だけを初中級レベルで味わえるのが、このシリーズならではの楽しさと言えるでしょう。
その他にも、次のような特徴が挙げられます:
・ペダルや運指の指示が丁寧に記載されている
・BOOK2の「Chorale」では、指でつながらない部分をペダルでつなぐ技術が学べるなど、左手演奏に限らない収穫も
・1曲あたり1ページから数ページ程度と短く、無理なく学習を進めやすい
・1巻あたり20ページ強と薄いため、練習中に楽譜が閉じにくい
・シンプルな編曲ながら原曲へのアプローチは多彩
・BOOK2は左手編曲のアレンジを学ぶ教材としても優れている
・輸入楽譜としては価格が抑えられており、電子書籍版も用意されている
序文には、編曲者によるこんな一文が添えられています。
「本書に収録されているすべての曲は、左手のみで演奏できるように編曲されています。しかし、運指(指使い)を調整することで、右手のみで演奏することも可能です。」
左手だけでなく右手のみの教材としても活用できる、応用範囲の広い一冊であることが分かります。
► 各巻の楽曲一覧
‣ LEFT HAND SOLOS for the piano BOOK1
| 曲名 | 作曲者・出典 |
|---|---|
| Can’t Help Singing | Hugo Reinhold |
| Silvery Waves | Addison P. Wyman |
| Deep Valley | H. C. MacDougall |
| Rolling Along | Paul Hiller |
| Plus and Minus | Robert Schumann |
| Sunset Waltz | Friedrich Wieck |
| Out of the Past | Carl Czerny |
| Spring Song | Felix Mendelssohn |
| Arkansas Traveler | Traditional American |
| Serenade | Ethelbert Nevin |
| Doing Things on a Big Scale | Albert Biehl |
| Memories of You | Cornelius Gurlitt |
| The Futile Courtship | Johannes Brahms |
| Robin Adair | Scottish Air |
| Halo on the Moon | Arthur Foote |
| Longing | Franz Schubert |
| Cuckoo Clock | Emil Breslaur |
| Farewell to the Piano | Ludwig van Beethoven |
‣ LEFT HAND SOLOS for the piano BOOK2
| 曲名 | 作曲者・出典 |
|---|---|
| Dream Dust | Charles F. Dennee Op.7, No.2 |
| The Gypsy Baron (Waltz Theme) | Johann Strauss |
| Revolving Door | H. Maylath Op.163 |
| Washington’s March | Traditional |
| Spiral Staircase | A. Krause |
| Evening Sun | A. Hollaender |
| Nocturne | A. Scriabine Op.9, No.2 |
| The Squirrel and the Acorns | Loeschhorn Op.38, No.5 |
| In the Subway | L. Birkedal-Barfod |
| Flashes in the Harbor | S. Heller Op.125, No.12 |
| Sunken Gardens | L. Streabbog Op.97, No.3 |
| Prelude | F. Chopin Op.28, No.6 |
| The Silent Rose | Victor Herbert Op.15, No.1 |
| Album Leaf | Adam Geibel |
| Scotch Poem | E.A. MacDowell Op.31, No.2 |
| Chorale | H. Berens Op.89 |
| Sextet from “Lucia” | G. Donizetti |
► 編曲者・ジョン・W・ショームについて
ジョン・W・ショーム(John W. Schaum, 1905-1988)は、アメリカのピアノ教育界において非常に大きな功績を残した人物です。数多くの教則本や練習曲集を手がけ、その分かりやすい構成は世界中のピアノ指導者に長年愛用されてきました。今回紹介した「LEFT HAND SOLOS」シリーズも、その丁寧な運指指示や無理のない曲順構成に、教育者としての視点がしっかりと反映されています。
単に左手曲を集めただけでなく、学習者が着実にステップアップできるよう配慮された一冊に仕上がっているのが印象的です。本シリーズで左手作品の魅力に触れた学習者にとっては、より高度な原曲へ興味を広げるきっかけにもなるでしょう。
► 楽譜の購入について
本シリーズは輸入楽譜として販売されており、紙の楽譜だけでなく電子書籍版も選べるのが嬉しいポイントです。持ち運びやすさを重視するなら電子版、書き込みをしながら練習したい方には紙の楽譜がおすすめかもしれません。
BOOK1・BOOK2それぞれ薄手で価格も抑えられているので、両方揃えて学習の幅を広げるのもいいでしょう。
LEFT HAND SOLOS for the piano BOOK1
LEFT HAND SOLOS for the piano BOOK2
► 終わりに
「LEFT HAND SOLOS for the piano」シリーズは、左手作品の名旋律を、初中級レベルでも無理なく楽しめる貴重な教材です。左手の強化練習としてはもちろん、ペダリングや運指の工夫を学ぶ教材としても役立つでしょう。特にBOOK2は、有名曲の断片に触れられる喜びと、着実なテクニック向上を同時に得られる貴重な教材だと感じます。
左手演奏に興味のある方、左手編曲のアレンジ学習をしたい方、あるいは新しい練習曲を探している方は、ぜひ一度手に取ってみてください。
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