【ピアノ】休符から読み解くフレージング演奏解釈のコツ

スポンサーリンク
スポンサーリンク

【ピアノ】休符から読み解くフレージング演奏解釈のコツ

► はじめに

 

楽譜上の休符は、時にスラーに頼らずにフレーズを見抜くための大きなヒントになります。本記事を通して、作曲家が休符に込めた意図を読み取り、演奏解釈の参考にする方法を見ていきましょう。

本記事の対象者:初中級〜上級者

 

► 実例

‣ 休符を挟んだひとつながりのフレーズに注意①

 

ドビュッシー「子供の領分 1.グラドゥス・アド・パルナッスム博士」

譜例(PD作品、Finaleで作成、37-39小節)

ドビュッシー「子供の領分 1.グラドゥス・アド・パルナッスム博士」37〜39小節の楽譜。休符を挟んだフレーズの例。

38–39小節では手を交差し、左手でメロディを演奏しますが、39小節目の2分休符に注意を向けましょう。38小節4拍目の4分音符は、その2分休符を挟んで次の2分音符へとつながっています。この関連性が失われると、音楽的な意味が不明瞭になります。

 

ポイント:

・音色を揃えることで関連性を保つ
・また、2分休符に入ったとき「休んでいる素振り」を身体で示さないよう、手の動きを最小限に抑える

 

‣ 休符を挟んだひとつながりのフレーズに注意②

 

カリンニコフ「悲歌(Elegie)」

譜例(PD作品、Sibeliusで作成、曲頭)

カリンニコフ「悲歌(Elegie)」冒頭の楽譜。4小節目と7小節目の♭9音と解決音を色分けで示した譜例。

4小節目は「F7♭9 / B♭」のコードです。♭9の音(レッドで示された音符)が、5小節目の音(ブルーの音符)へと解決します。休符を挟んでいますが、これらの音符同士のつながりを意識しましょう。具体的には、解決先のF音が大きくなりすぎないよう注意します。

7小節目でも同様に♭9から主音への解決があります。16分音符による装飾が入っているため見落としがちですが、解決先の音が強くなりすぎないよう心がけましょう。

 

ポイント:

・解決音(ブルー音符)を不注意に強調しないことで、音楽的な緊張と解放が自然に表現される

 

‣ 休符を挟んだひとつながりのフレーズに注意③

 

ショパン「幻想曲 ヘ短調 Op.49」

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、21-22小節)

ショパン「幻想曲 ヘ短調 Op.49」21〜22小節の楽譜。大きなスラーの中に挿入された16分休符の例。

21–22小節のメロディには大きくひとつのスラーがかかっていますが、22小節1拍目に16分休符が挿入されています。これは大きなフレーズの中にある「小さなフレーズの切れ目を示す休符」と解釈します。

 

ポイント:

・音を切るわけではなく、22小節1拍目頭の音を「終わりの音」として強くならないよう注意する
・そうすることで、この休符の意味が伝わる

 

‣ 休符を挟んだひとつながりのフレーズに注意④

 

ショパン「ノクターン 第13番 Op.48-1」

譜例(PD作品、Sibeliusで作成、曲頭)

ショパン「ノクターン 第13番 Op.48-1」冒頭の楽譜。休符を挟んだフレーズの例。

この例においても基本的な注意点は共通です。休符で区切られた音符同士の関連性を保ちながら、音楽の流れを途切れさせないよう心がけましょう。

 

ここまで4つの実例に共通する原則:

・時に休符は「音楽の終わり」ではなく「フレーズの呼吸」を示す
・前後の音符の音量的・音色的関連性を常に意識する

 

‣ スラー以外を参考にフレーズの長さを見抜く

 

フレーズの長さはスラーだけで判断するのではなく、「メロディの音価(音符の長さ)」にも注目することで、より正確に読み取ることができます。

 

モーツァルト「ピアノソナタ 変ロ長調 K.333 第1楽章」

譜例(PD作品、Finaleで作成、曲頭)

モーツァルト「ピアノソナタ 変ロ長調 K.333 第1楽章」冒頭の楽譜。メロディの音価によるフレーズ判断の例。

素材の繰り返しを見ると4つの部分に分けられますが、大きな意味でのフレーズは曲頭から4つ目のまとまりの終わりまで続きます。判断の根拠は「メロディの音価と休符の入る位置」です。

1-3回目までは付点4分音符で次へつなげているのに対し、4回目のみ「4分音符+8分休符」で区切りがついていることを読み取りましょう。この違いが「どこまでが大きなフレーズか」を示しているのです。

 

ポイント:

・「4分音符+8分休符」のところまで、1回1回終わらせた印象にならずに大きな流れをもって弾く
・力のある作曲家は細かな音価の選択にも音楽的な意図を込めている

 

‣ エネルギーを解放する休符①

 

ラフマニノフ「音の絵 Op.39-5」

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、69小節目)

ラフマニノフ「音の絵 Op.39-5」69小節目の楽譜。駆け上がるパッセージの終わりにある32分休符の例。

駆け上がるパッセージの終わりに32分休符が書かれています。この休符に向かって一気に上がり切るのがいいでしょう。途中でテンポをゆるめたりタメたりするのは避けるべきです。

その理由は、上がり切った直後に32分休符があるからです。この32分休符は「エネルギーを解放する休符」と考えてみてください。休符の直後から新しいフレーズが始まります。

 

考え方:

・付点16分音符でなく「16分音符+32分休符」で記譜されている理由を考えると、エネルギーの流れが見えてくる
・休符の前でゆるんでしまうと、休符によるエネルギー解放の意味がなくなってしまう
・「お休みだから手をあげた」というだけの演奏にならないよう、休符の意味を常に考える姿勢が大切

 

‣ エネルギーを解放する休符②

 

ショパン「ポロネーズ 第7番 変イ長調 Op.61 幻想」

譜例(PD作品、Sibeliusで作成、60-64小節)

ショパン「ポロネーズ 第7番 変イ長調 Op.61 幻想」60〜64小節の楽譜。62小節目のフェルマータ付き休符の例。

カギマークで示したように同じメロディが3箇所登場する中で、62小節目にフェルマータ付きの休符があります。この休符でエネルギーの解放がわざわざ示されているため、「56小節目から62小節目の休符までノンストップで進む」と解釈するのが、音楽の作りに合っています。

同じメロディに釣られて★印のところでゆっくりしてしまう演奏が見られますが、休符がない箇所でエネルギーを解放してしまうのは流れを止めるだけです。

 

原則:

・「どこでテンポをゆるめないか」を覚えるのではない
・「休符の書かれ方の違いがエネルギーの解放を示している」という原理を理解することが重要

 

‣ 音色と休符から読み解くフレージング分析

 

スラーだけに頼らないフレージング分析の方法として、音色の変化と休符の配置を組み合わせて読み解くアプローチがあります。ベームの「メヌエット ト長調」を例に楽曲構造を読み解く具体的な手順については、以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。

【ピアノ】ベーム「メヌエット ト長調」の詳細分析(‣ 2. 音色と休符から読み解くフレージング分析)

 

► 終わりに

 

力のある作曲家が書いた作品は、休符一つにも音楽的な意図が込められています。「音が鳴っていない時間」「鍵盤から手をあげる時間」として受け流すのではなく、なぜここに休符が置かれているのかを常に問い続けることが、演奏解釈の力を伸ばす大きなポイントとなります。

 


 

► 関連コンテンツ

著者の電子書籍シリーズ
・徹底分析シリーズ(楽曲構造・音楽理論)
Amazon著者ページはこちら

YouTubeチャンネル
・Piano Poetry(オリジナルピアノ曲配信)
チャンネルはこちら

SNS/問い合わせ
X(Twitter)はこちら

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました