【ピアノ】弾いている作品の楽曲情報の調べ方:やるべきだと、とうとう観念した後のファーストステップ

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► はじめに

 

楽曲の情報を何も調べずに目の前の楽譜だけを見て、ひたすら音を追いかけている学習者は多いようです。しかし、音楽は単なる音の羅列ではありません。明らかになっている作曲家の思いや時代背景、作品の意図を知ることで、解釈のヒントになることがありますし、そもそも演奏自体が格段に楽しくなります。

楽曲情報を調べることには、具体的に以下のようなメリットがあります:

楽曲の構造をより深く理解できる:
形式や構成を理解することで、作品全体の流れを把握し、各部分の役割や関連性が明確になる

作曲家の意図に沿った解釈ができる:
作曲の背景や作曲家の残した言葉を知ることで、音楽的表現の方向性が見えてくる
例えば、「水の精」がテーマの作品と知ったら、重くならないほうがいいのではないかと考える、等

同時代の他の作品との関連が見えてくる:
作曲された時代の美学や他の作品との影響関係を知ることで、作品をより広い文脈で理解できる

音型の意味が理解できる:
ただの技術的困難として捉えていた箇所が、実は特定の表現意図を持っていたことが分かる

 

本記事を通して、どのように楽曲情報を調べていけばいいのかを見ていきましょう。

 

► 基本的な情報の集め方:信頼できる資料を活用する

 

ネット情報の取り扱いに注意:

インターネット上には膨大な情報が溢れていますが、ネットに落ちている情報を過信し過ぎないよう注意しましょう。特に出典が明記されていない情報などには誤りが含まれていることもあります。可能な限り、複数の情報源で確認することをおすすめします。

 

ピアノ曲情報が掲載された基本的な書籍資料:

情報量は限られていますが、楽曲解説が掲載されている代表的な書籍として以下があります:

・ピアノ音楽史事典 著:千蔵八郎 / 春秋社
・鍵盤音楽の歴史 著 : F.E.Kirby  訳 : 千蔵八郎 / 全音楽譜出版社
・最新名曲解説全集 独奏曲シリーズ / 音楽之友社
・作曲家別名曲解説ライブラリー / 音楽之友社(「最新名曲解説全集」と解説文言は重複している)

これらの書籍は基本的な情報を得るための最低限の資料と言えます。しかし、より深い理解を求めるためには、さらに踏み込んだ資料にあたる必要があるでしょう。

 

さらに深く掘り下げるために:

より専門的な情報を求める場合は、本Webメディアの「【ピアノ】楽曲分析を深める方法:専門書・マスタークラス・研究論文の活用ガイド」という記事で紹介している方法で、追加資料を探していくことをおすすめします。

具体的には:

・著名なピアニストによるマスタークラスの記録
・音大図書館や国会図書館に置いてある専門書
・博士論文
・音楽学術雑誌の論文
・その作品の作曲家や編曲家への直接の問い合わせ

これらは、作品の情報についてさらなるヒントを提供してくれます。

 

日常的な情報収集の姿勢:

また、日頃その楽曲のことを常に意識しておき、近しい情報を見かけた時にすぐに拾える自分でいることが非常に重要です。例えば:

・コンサートのプログラムノート
・音楽雑誌の特集記事
・関連するドキュメンタリー
・音楽講座やセミナー

これらは偶然目にする機会があるかもしれませんが、「今取り組んでいる曲」を常に念頭に置いていれば、貴重な情報源となり得ます。情報収集は一度で終わるものではなく、継続的なプロセスです。

 

► 楽曲情報収集のコツ

‣ 作品情報は、書き出して楽譜へ挟みっぱなしにする

 

コルトーは、生徒への指針として以下のような内容を調べるように要求したそうです。

 

「アルフレッド コルトー ピアノ演奏解釈」 著:アルフレッド・コルトー 編集:ジャンヌ・ティエフリー 訳:店村 新次 / 音楽之友社

より抜粋して紹介します。

(以下、抜粋)
1. 作曲者の氏名、誕生と他界の年月日、ならびにその土地
2. 作曲者の国籍
3. 作品の標題、作品番号と献辞
4. 制作に影響を及ぼしたもろもろの状況、作曲者が入れた指示
5. 構想(形式、テンポ、調性)
6. 目立った特徴(和声的分析、受けた影響、類似性、系統づけ)
7. 作品の性格と意味(演奏者の評価に基づく)
8. 美学的、技術的註釈、研究と演奏のための注意事項
(抜粋終わり)

 

生徒が作品についての詩的理解を有するかどうかということをコルトーは重視したとのこと。こういった下調べは、作品のことを深く学習しようと思ったら当然のように実行すべきです。

 

下調べのポイントがあります。

調べた内容を紙へ書き出して、すぐ見れるように楽譜へ挟みっぱなしにしてくださいそれか、楽譜が真っ黒になるのを覚悟で、その作品楽譜の1ページ目へ書きこんでください。身になっていないうちに視界から消えると、調べたことすら忘れるからです。

調べて満足するだけでは意味ありません。こういった内容を理解して解釈を考えるヒントにしたり、直接演奏に結びつけられないことも、その作曲家や作品の深い理解のために触れておく必要があります。

その作品へ取り組んでいる期間は、練習を始める前に毎回一通り読むようにしましょう

 

新しい作品へ取り組むたびにこういった学習を繰り返していくと、演奏に役に立つだけでなく、膨大な知識を手に入れることができます。

 

・アルフレッド コルトー ピアノ演奏解釈 著:アルフレッド・コルトー 編集:ジャンヌ・ティエフリー 訳:店村 新次 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 

‣ 調べる時は「最初」「最後」「キーパーソン」を外さない

 

とにかくひたすら情報を集めるのもいいのですが、その中でも絶対に外すべきでない項目があります:

・最初
・最後
・キーパーソン(重要人物)

これらに該当する内容を発見した時には押さえておくに限ります。

 

例えば:

・「〈 K.310〉は、モーツァルトがパリで作曲した ”最初の” ピアノソナタ」
・「〈クープランの墓〉はラヴェルが戦争を題材に扱った ”最後の” 作品」

などといったようなもの。「最初」「最後」にまつわる内容が人物の場合は、それは間違いなく「キーパーソン」でもあります。

 

「最初」「最後」というのは、知識的なことを学ぶうえで外せない部分。ただ単に節目になる重要項目だからというだけでなく、外してしまうと、「知識が時系列に並ばない」という結果になり、整理された学習ができません。

 

楽曲について調べる時をはじめ、その他の音楽史を学ぶ時にも言えることですが、「最初」「最後」についての情報が出てきたら必ず、目を光らせてください。プラス、「キーパーソン」ですね。

 

► 終わりに:最初の一歩の踏み出し方

 

今日から実践できる具体的な方法は:

1. 現在取り組んでいる楽曲について、コルトーの8項目とその他の情報について調べる
2. 調べた情報をA4用紙1枚にまとめ、楽譜に挟む
3. 練習の前に必ずその情報に目を通す習慣をつける
4. 基本書籍で得た情報をベースに、さらに専門的な資料へと探究を広げる

 

この作業は最初は手間に感じるかもしれませんが、やがて音楽への理解が深まっていくことを実感できるでしょう。一番良くないのは、自分で取り組んでいる作品のことすら何も調べずに音符を弾いて満足してしまうことです。

 


 

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