【ピアノ】アルペッジョ記号の正しい弾き方:基本から応用的な記譜まで

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【ピアノ】アルペッジョ記号の正しい弾き方:基本から応用的な記譜まで

► はじめに

 

アルペッジョは和音を分散して響かせる重要な演奏技法です。しかし、楽譜上の記号の意味を正確に理解せず、「何となく」弾いている演奏者も少なくありません。実際、同じアルペッジョ記号でも、作曲家や時代によって様々な意味を持つ場合があり、正確な解釈が求められます。また、ロングアルペッジョと個別アルペッジョの違いを理解していないと、楽曲の本来の美しさを表現できません。

本記事では、基本的な記号から応用的な記譜まで、アルペッジョの正しい解釈と演奏法について詳しく解説します。楽譜を読む力を向上させ、より説得力のある音楽を目指しましょう。

 

► 基本的な記譜とその意味

‣ 基本的なアルペッジョ記号

 

5つの基本記号とその使い分け:

 

表(Sibeliusで作成)

記号①:最も標準的なアルペッジョ

・下から上へ向かって分散和音演奏をする
・①から⑤の中で最も頻繁に見られる記号

 

譜例(Sibeliusで作成)

重要なポイント:

・基本的には弾き終わった音も指を離さない
・弾き始めの音を拍の前へ出すか拍頭から始めるかは楽曲と解釈による
・アルペッジョを入れる速さは、楽想やテンポなどによって変わる

表現技術については、記事末で紹介しているリンク記事を参照してください。

 

(再掲)

記号②:矢印付きアルペッジョ アップ

・下から上へ向かって分散和音演奏をする
・①と同じ意味だが、③も混在する楽曲では②で書くことが多い
・作曲や編曲では、1曲の中で①と②を混在させないことを推奨

 

記号③及び④:アルペッジョ ダウン

・上から下へ向かって分散和音演奏をする
・④の記譜はピアノ曲においてはあまり見られない

 

記号⑤:文字によるアルペッジョ指示

・①②と同義
・⑤の記譜はピアノ曲においてはあまり見られない

 

 

simile を使った記譜:

譜例(Sibeliusで作成)

ピアノ曲においてはあまり見られませんが、譜例のように simile を使って記譜されることもあります。この場合、最初に示されたアルペッジョの方法を継続して適用します。

 

特殊なアルペッジョの記譜:

戦後の現代作品においては、上記以外の記号も複数試みられていますが、いずれも一般化されてはいません。また、特殊な記号が用いられている楽曲では「ノーテーション」という説明書きが付されていることが通常なので、楽曲ごとに確認すればいいでしょう。

 

‣ ロングアルペッジョの判別方法

 

「ロングアルペッジョかどうか」は、両手で演奏するアルペッジョにおいて最も重要な判別ポイントです。

 

判別の基準

「両手で演奏するアルペッジョ」において必ずチェックすべきなのは:

・そのアルペッジョが片手ずつについているのか
・両手に渡るロングアルペッジョなのか

これらの区別です。

 

譜例(Sibeliusで作成)

譜例Aの場合:個別アルペッジョ

・アルペッジョが片手ずつについている
・それぞれのアルペッジョを同程度のタイミングで弾き始める

譜例Bの場合:ロングアルペッジョ

・一本の線で左右の手が結ばれている
・左手から始めて全体で一本のアルペッジョにする
・左手の最低音から右手の最高音まで連続的に演奏

 

演奏上の違いと表現効果

アルペッジョの違いを正確に読み取らず、感覚的に演奏している例も多く見受けられますが、ロングアルペッジョなのかそうでないのかで、出てくる表現は大きく異なります。必ず区別して演奏しましょう。

 

► 応用的な記譜とその意味

‣ モーツァルトの「混合音価和音(白玉と黒玉が混ざった和音)」

 

モーツァルトの作品などでよく見られる「白玉と黒玉が混ざった団子和音」にアルペッジョが付されていることがあります。

 

モーツァルト「ピアノソナタ 変ホ長調 K.282 第3楽章」

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、20-23小節)

この奏法に関しては、「【ピアノ】演奏に迷いやすい記譜の謎を解読:正しい解釈と表現方法」という記事の「‣ 36. 混合音価和音(白玉と黒玉が混ざった和音)の弾き方」で解説しているので、あわせて参考にしてください。

 

‣ ショパンの「前打音付きアルペッジョ」

 

ショパンの作品では、前打音とアルペッジョが組み合わされた記譜法が多く見られます。

 

ショパン「ノクターン(夜想曲)第11番 ト短調 Op.37-1」

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、41-44小節)

 

ショパン「プレリュード(前奏曲)第8番 嬰ヘ短調 Op.28-8」

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲尾)

 

この奏法に関しては、「【ピアノ】装飾音の応用:バロックから現代までの技法と解釈」という記事の「‣ 10. ショパンの前打音付きアルペッジョの弾き方」で解説しているので、あわせて参考にしてください。

 

► 終わりに

 

アルペッジョの記号を正確に読み取ることで、作曲者の意図により近い表現が可能になります。特にロングアルペッジョの判別や、作曲家特有の記譜法の理解は、演奏の質を大きく左右する重要な要素です。技術的な装飾としてではなく、音楽表現の重要な手段として、アルペッジョを捉えるようにしましょう。

実際の演奏におけるアルペッジョの表現技術については、以下の記事の中で解説しています。

【ピアノ】アルペッジョの基本演奏から応用テクニック

 


 

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この記事を書いた人
タカノユウヤ

ピアノ音楽の作曲・編曲をしたり、音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆を手がけています。Webメディア「大人のための独学用Webピアノ教室」の運営もしています。
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

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