【ピアノ】J.S.バッハ インヴェンション 第5番 BWV776 全運指付き楽譜と練習のコツ
► はじめに
J.S.バッハ「インヴェンション 第5番 BWV776」は、絶え間なく続く16分音符の流れが特徴的で、技術的にも音楽的にも充実した内容を持っています。
本記事では、この作品に取り組む方のために、「全運指」を付けた楽譜を提供し、練習のヒントも解説していきます。
►「全運指」の解説
この楽曲はパブリックドメインです。運営者が浄書ソフトウェアで作成した楽譜を使用しています。
運指について重要な注意点
この運指は一例です。手の大きさや個人差に合わせて調整してください。また、どのようなアーティキュレーションを付けるのかによっても適切な運指は変わります。お手持ちの楽譜の内容と照らし合わせながら、必要に応じて参考にしてください。
► 具体的な練習のヒント
‣ 適切なテンポ設定
推奨テンポ設定:
練習開始時:♩= 50-60(正確性と安定性重視)
中間段階:♩= 60-70(表現力の向上期)
目標テンポ:♩= 72(ヘルマン・ケラー提案)
なぜ、このテンポが適切なのか:
ヘルマン・ケラーが提案する♩= 72 は、以下の理由で適切です:
・16分音符が絶え間なく続く構造上、ある程度の速さが楽曲の躍動感を表現するために必要
・初中級者でも到達可能な現実的な目標設定
・これ以上速くなると、モルデント等の装飾音符を正確に演奏することが困難になる
‣ 本楽曲でよくある問題点と対策
· 冒頭主題の16分音符が重くなってしまう
譜例(曲頭)
譜例の部分の右手パートが主題になりますが、この出始めの16分音符二つが重くなってしまう演奏が散見されます。楽曲の性格をよく考えて、「通り過ぎるだけ」と思ってさりげなく演奏するといいでしょう。
楽曲中に何度も出てくるので、その都度注意して軽やかに処理しましょう。
· 不必要なテンポの揺れが生じてしまう
この楽曲の特徴は、絶え間なく続く連続的な音の連なりにあります。一番最初の小節と最終小節以外は全ての小節で常に16分音符が詰まっていることから、楽曲のエネルギーの方向性を読み取らなくてはいけません。
具体的には、変なところでテンポを揺らしてしまわないように注意し、最終小節までノンストップで突っ切って演奏することをおすすめします。エネルギーの方向性を保ち、楽曲全体を一つの大きな流れとして捉えるといいでしょう。
· 数多い装飾音符の処理が統一されていない
この楽曲ではモルデントが非常に多く出てきます。このような書法の時に注意すべきは、「装飾音符の扱い方に統一性を持たせる」こと。弾く度に拍の前へ出す装飾音とそうでないものが混在している演奏を耳にしていますが、「拍の前へ出さない」で統一するといいでしょう。
バロック時代の作品に出てくる装飾音符は、拍の前ではなく、拍の頭から演奏を始めることが原則とされています。装飾音は素早く演奏するよう心がけましょう。
► 終わりに
16分音符が絶え間なく続く構造は一見複雑に見えますが、本記事で紹介した練習ポイントを踏まえて練習することで、楽曲本来の美しさと躍動感を表現できるようになるでしょう。
この作品についてさらなる演奏ヒントが必要な方は、以下の解釈版を参考にしてください。
【ピアノ】園田高弘 校訂版 J.S.バッハ インヴェンション:独学学習者のための決定版
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