【ピアノ】J.S.バッハ インヴェンション 第3番 BWV774 全運指付き楽譜と練習のコツ

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【ピアノ】J.S.バッハ インヴェンション 第3番 BWV774 全運指付き楽譜と練習のコツ

► はじめに

 

本記事では、J.S.バッハ「インヴェンション 第3番 BWV774」に取り組む方のために、「全運指」を付けた楽譜を提供し、練習のヒントも解説していきます。装飾音符の入れ方から、ヘミオラの理解、さらには楽曲構成を活かした表現方法まで、詳しく見ていきましょう。

 

►「全運指」の解説

 

この楽曲はパブリックドメインです。運営者が浄書ソフトウェアで作成した楽譜を使用しています。

 

 

 

運指について重要な注意点

この運指は一例です。手の大きさや個人差に合わせて調整してください。また、どのようなアーティキュレーションを付けるのかによっても適切な運指は変わります。お手持ちの楽譜の内容と照らし合わせながら、必要に応じて参考にしてください。

 

► 具体的な練習のヒント

‣ 4小節目の装飾音符の入れ方

 

譜例(4小節目)

4小節目は装飾音符の入れ方に迷うかもしれません。

ヘルマン・ケラーと市田儀一郎氏が提案する奏法をそれぞれ掲載しておきます。プラルトリラーを主音から始めるかどうかに差がありますが、技術的に難しければ、ヘルマン・ケラーの奏法で弾くのも良いでしょう。

上記「全運指」は、市田儀一郎氏のほうで演奏する場合の運指を付けました。

 

‣ 適切なテンポ設定

 

推奨テンポ設定:

練習開始時:♪ = 100-120(正確性と安定性重視)
中間段階:♪=120-135(表現力の向上期)
目標テンポ:♪=138(ヘルマン・ケラー提案)

 

なぜ、このテンポが適切なのか:

ヘルマン・ケラーが提案する♪=138は、以下の理由で適切です:

・作品の明るい性格を損なわない速度
・初中級者でも技術的に目標にできる
・これ以上速くなると装飾音符を入れるのが困難になる

 

‣ 「ヘミオラ」を理解する

 

ヘミオラとは、「3拍子系の曲で、2つの小節を3分割するリズムの取り方」。より広義には、「2つの奇数拍子の小節を1つにする」という解釈もあります。

 

具体的には以下のような形で現れます(3/4拍子の場合):

・通常の3拍子:│♩ ♩ ♩│♩ ♩ ♩│
・ヘミオラ:     │♩     ♩       ♩    │

以下、これを3/8拍子の形でも考えてみましょう。

 

譜例(10-11小節、22-23小節、52-53小節)

この楽曲では、三箇所でヘミオラが現れます。すべてカデンツの位置に来ています。

カギマークに注目してください。「2つの小節を3分割するリズムの取り方」。これは結局のところ「3分割」なので、「今までの3拍子の各拍の長さが倍になった」と考えることもできます。

この部分のメロディを単純に「3/8 × 2」で演奏しようとすると、しっくりこないことが分かるでしょう。右手の鍵マーク頭の音をやや深めに演奏し、ヘミオラになっていることを演奏でも示すと音楽的です。

同じカデンツでも、36-37小節や58-59小節などのヘミオラになっていない部分との差を感じて演奏するようにしましょう。

 

‣ 本楽曲でよくある問題点と対策

· 8分音符の同音連打におけるニュアンスの乱れ

 

譜例(5-9小節)

レッド音符で示した8分音符の同音連打の部分では、一つだけ音が大きく飛び出てコブができたようにならないよう、注意しましょう。

このような弾きやすいところにこそ、気を配って演奏する必要があります。

 

· 54小節目の入りで極端に遅くなってしまう

 

譜例(53-59小節)

 

問題の背景:

54-59小節はコーダ(楽曲の終結部分)なので、その入りにおいても終結感を出したい気持ちは理解できますが、59小節目に「真の楽曲終結」があることを考慮する必要があります。54小節目の入りでも遅くし過ぎてしまうと、何度も段落感がついてしまい構成バランスを欠く結果となります。

 

適切な処理方法:

もしテンポをゆるめたいのであれば、53小節2-3拍目で「少し息を入れる」程度にして、rit. だと思わないようにしてください。本当の終結は最後の小節で表現しましょう。

 

► 終わりに

 

本記事で解説した運指や練習のポイントを参考に、焦らず段階的に取り組んでみましょう。

この作品についてさらなる演奏ヒントが必要な方は、以下の解釈版を参考にしてください。

【ピアノ】園田高弘 校訂版 J.S.バッハ インヴェンション:独学学習者のための決定版

 


 

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この記事を書いた人
タカノユウヤ

ピアノ音楽の作曲・編曲をしたり、音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆を手がけています。Webメディア「大人のための独学用Webピアノ教室」の運営もしています。
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

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