【ピアノ】J.S.バッハ インヴェンション 第10番 BWV781 全運指付き楽譜と練習のコツ
► はじめに
本記事では、J.S.バッハ「インヴェンション 第10番 BWV781」に取り組む方のために、「全運指」を付けた楽譜を提供し、練習のヒントも解説していきます。
技術的な正確性と音楽的な表現力の両方を求められ、譜面の印象よりも意外と弾きにくい一曲としても知られています。
►「全運指」の解説
この楽曲はパブリックドメインです。運営者が浄書ソフトウェアで作成した楽譜を使用しています。
運指について重要な注意点
この運指は一例です。手の大きさや個人差に合わせて調整してください。また、どのようなアーティキュレーションを付けるのかによっても適切な運指は変わります。お手持ちの楽譜の内容と照らし合わせながら、必要に応じて参考にしてください。
► 具体的な練習のヒント
‣ 適切なテンポ設定
推奨テンポ設定:
練習開始時: ♩. = 80-90(正確性と安定性重視)
中間段階: ♩. = 90-105(表現力の向上期)
目標テンポ:♩. = 108(ヘルマン・ケラー提案)
なぜ、このテンポが適切なのか:
ヘルマン・ケラーが提案する♩. = 108は、以下の理由で適切です:
・作品の快活な性格を損なわない速度
・無窮動的な流れを自然に表現できる
・初中級者でも技術的に目標にできる
・聴衆にとって楽曲の魅力が最も伝わりやすい
テンポは速ければ良いというものではありませんが、この種の軽快で連続的な楽曲では、適度な速さが作品の生命力を引き出します。上記のテンポを目標値として設定し、段階的に到達することを目指しましょう。
‣ 本楽曲でよくある問題点と対策
· 同型反復のつなぎ目への対処
譜例(4-6小節)
4小節目からは1小節単位の同型反復で2度ずつ下行する構造になっています。
よくある問題:
・つなぎ目(レッド音符部分)がいい加減になってしまう
・その部分で音楽の流れが途切れてしまう
レッド音符で示した「つなぎ目」で転んだりいい加減になってしまわないように気をつけましょう。むしろ、「つなぎ目をピックアップして歌う」くらいに思っていても構いません。
本楽曲では、この譜例の箇所以外でも同型反復が見られるので、同様の注意をしながら練習してください。
· ♩♪リズムでの音量バランス
譜例(26-28小節)
よくある問題:
・♩♪のリズムにおける♪の部分が突然大きな音になってしまう
・装飾音の演奏に気を取られてリズムが不安定になってしまう
本楽曲では、♩♪のリズムが度々出てきます。このリズムにおける「♪」の部分で唐突に大きな音になってしまう演奏が散見されます。特に、譜例で示した26小節目では、装飾音の演奏に全意識を持っていかれがちなので、注意しましょう。
· 最終小節の両手の受け渡し
よくある問題:
・最終小節における右手から左手への受け渡しがぎこちなくなる
効果的な対策:
・テンポの管理:
– 受け渡し前の右手部分はテンポを維持
– 左手の最後の3音で初めてテンポを調整
・音楽的解釈の選択肢:
– 選択肢A: 最後にわずかにテンポを緩める
– 選択肢B: 快活な性格を保ち、ノンストップでフィニッシュする
演奏上のコツとしては、受け渡すよりも前にテンポをいじらないことです。楽曲の締めくくりで多少テンポを緩めるのは問題ありませんが、「左手の最後の3つの音で緩める」と思っておき、その前の右手はテンポで弾くといいでしょう。
► 終わりに
本記事の内容をもとに丁寧に取り組み、J.S.バッハの音楽の奥深さを味わいながら練習を進めてみましょう。
この作品についてさらなる演奏ヒントが必要な方は、以下の解釈版を参考にしてください。
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