【ピアノ】バスラインの分析と解釈:ベートーヴェン「Op.119-1」を例に
► はじめに
バスラインは音楽の進行感や和声感を形作っているので、着目することで楽曲理解を深めるヒントになります。
本記事では、ベートーヴェン「11のバガテル 第1番 Op.119-1 ト短調」を例に、その分析を行います。
► 実例分析:ベートーヴェン「11のバガテル 第1番 Op.119-1 ト短調」
‣ 着目点
ベートーヴェン「11のバガテル 第1番 Op.119-1 ト短調」
譜例1(PD楽曲、Sibeliusで作成、44-58小節)
この楽曲の中で、今回はカギマークで示した48-49小節と52-53小節に注目してみましょう。
この2箇所の左手パートは一見すると似たような動きをしていますが、それぞれの半音の動きが持つ役割や意味が異なる点に注意が必要です。それらの動きが曲の進行にどう影響を与えているのかを理解することが、楽曲分析において重要なポイントとなります。
‣ 48-49小節と52-53小節の違い
以下の上下の譜例を比較し、それぞれのバスラインの意味と解釈を見ていきましょう。下の譜例は、バスラインを抜き出したものです。
譜例2(48-49小節 および 52-53小節)
48-49小節:
49小節目のバスラインへのつながりを考えると、48小節目のCis音は「刺繍音」として扱われます。この音はバスライン自体の動きには影響を与えません。ここでの半音の動きは、あくまで装飾的な意味合いが強いものです。
52-53小節:
53小節目のバスラインへのつながりを考えると、52小節目のFis音やF音の半音の動きはバスラインとして扱われます。これらは次の和音への導入として機能し、和声進行を支えています。
48小節目ではバスが1小節2打点のみでした。したがって、48小節目と52小節目では進行感が異なることにも着目してください。
上記のように、似たような音型でも前後関係によって全く別の意味を持つことに注意しながら譜読みをしましょう。
► バスラインの解釈の重要性
上記の分析から、バスラインの微妙な違いが楽曲の表現に大きな影響を与えていることが分かりました。特に今回の譜例の部分では、半音の動きがなぜ異なる意味を持つのかに注目し、楽曲の進行における役割を理解することが大切です。
このような細かな部分を知ることで、演奏時に重みを入れるべき音が分かりますし、楽曲理解も深まります。
► 終わりに
細部に注意を払い、「バスラインがどのように配置されているのか」を意識しながら分析的に譜読みをするようにしましょう。
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