【ピアノ】ハノン練習法の完全解説:4つの重要課題と練習のポイント
► はじめに
ハノンの練習曲は、ピアノ演奏の基礎を築く上で非常に重要な教材です。
本記事では、特に重要な4つの課題(第39番、第41番、第42番、第48番)を取り上げ、効果的な練習方法と具体的な上達のポイントを解説します。
► 第39番 全調スケール
‣ 1. 指使いの重要性
正確な指使いは、効率的な練習の基礎となります。
なぜ楽譜の指示を守るべきか
一貫性の維持:毎回同じ指使いを使用することで、動作が自動化される
練習の効率化:指使いが定まることで、練習の積み重ねが可能になる
例えば、以下の2つの譜例を見比べてみてください。
「ハノン 第39番 ハ長調」の右手のみを取り出したもの
譜例(PD楽曲、Finaleで作成)
「親指を使う位置」が異なっていますが、正直、どちらの運指でも演奏自体は可能。
しかし、弾くたびにこれらが混在してしまうと練習の効率が上がりません。
自身の楽譜に書かれている方の運指を使い、大変でもそれを確実に身につけましょう。
‣ 2. 親指の制御
特に注意が必要な場面:
・上行形での右手の親指
・下行形での左手の親指
練習ステップ:
1. テンポ: ♩ = 60 から開始
2. 親指をくぐらせる動作を意識的に素早く行う
3. 音量の均一性を確認
4. 完全に安定してから、徐々にテンポを上げる
スケールだけでなくアルペジオなどにも言えることですが、1の指(親指)で打鍵するときにその音が大きくとびだしがちです。
特に、「上行形では右手」「下行形では左手」に注意。親指が他の指の下をくぐった直後に打鍵するからです。
まずゆっくりのテンポで完全に身につけてから、はじめてテンポを上げましょう。
‣ 3. カデンツの正確な演奏
譜例(PD楽曲、Finaleで作成)
よくある間違い:
・スタッカートをつけてしまう
・フェルマータをつけてしまう
・リズムが不安定になる
正しい演奏のための練習方法:
1. メトロノームを使用して厳格なリズムを維持
2. 楽譜に書かれている通りの音価を守る
3. カデンツ部分も通常の音階と同じ強さで演奏
譜例のようなニュアンスをつけてカデンツを弾いてしまう例は多く聴かれます。
「スタッカート」や「フェルマータ」をつけてしまっていませんか。
► 第41番 全調アルペジオ
‣ 1. 練習の目的を理解する
このエチュードでは以下の能力を養います:
・アルペジオの基本パターンの習得
・第1指と第2指の開発
・音域間の移動技術
第41番の最初のC-durを読譜してみましょう。
全音版の場合、右手の運指は 123123123….、左手の運指は 5421421421….、となっており、
3つの指でほとんどの音を弾いていくことになります。
つまり、「アルペジオ」の練習であると同時に「1と2の指の開発」でもあります。
‣ 2. 正しい座位置の確保
ポイント:
・ピアノ椅子の中央に座る
・低音域から高音域まで無理なく届く位置を確保
・練習開始時に毎回同じ位置を意識
基本的には同じことが平行移動されているだけですが、身体の使い方は変わっていきます。
両手ともにオクターヴユニゾンで動くため、中音域のドミソのときは身体は自然体ですが、低音域や高音域の時には身体の重心がやや変わることになります。
つまり、「ピアノ椅子への座る位置」が重要。
同じ楽譜の内容で練習しても、座る位置によって身体の使い方という技術自体が変わってしまうのです。
► 第42番 減七のアルペジオ
‣ 1. 技術的な課題
譜例(PD作品、Finaleで作成、曲頭)
主な難しさ:
・白鍵と黒鍵の組み合わせによる指の開き
・音量バランスの維持
・連続する素早い指の移動
このエチュードをやってみると気がつくと思いますが、意外と弾きにくい。
減七(ポピュラーでいう、ディミニッシュ)の分散和音では、白鍵と黒鍵の両方が含まれて凸凹していますし、各指を開く必要があるので、力強く打鍵するのには練習が必要です。
そして、どれかひとつの音が飛び出たりしないように気をつけながら粒を揃えて練習していく必要があります。
‣ 2. 効果的な練習方法
段階的アプローチ:
1. 非利き手での練習
・テンポ:♩ = 52 から開始
・完全な制御ができるまで繰り返す
2. 各音の質の確認
・音量の均一性
・タッチの明確さ
・指の独立性
3. 両手での練習
・まずゆっくりと(♩ = 44)
・徐々にテンポを上げる(目標テンポまで)
やるべき練習方法は、上記のことを気を付けながら「利き手でない方の手だけで練習する」というやり方。
これを、「違和感なく」「力強く」「揃えて」の三拍子揃って弾けるようになるまで徹底的に片手練習してください。
► 第48番 手首の練習
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、1-2小節)
注意点:
・和音の変わり目での音抜け防止
・手首の柔軟な使用
・均一な音量維持
このような和音連打が続くときに気をつけるべきなのは、譜例に矢印で示したような和音の変わり目の最終音がいい加減になってしまっていないかということ。
「いい加減」というのは例えば:
・処理が雑になって、音が欠けてしまう
・焦って、そこだけ転んでしまう
などといった内容です。
► まとめ
これらの練習課題に取り組む際の重要ポイント:
1. 基本的な注意事項
・正確な指使いの徹底
・適切な座位置の確保
・メトロノームを使用した計画的な練習
2. 練習の進め方
・毎日の集中的な練習
・2週間単位での目標設定
・定期的な録音による自己チェック
3. 次のステップ
・学んだ技術の実際の楽曲への応用
・より高度な練習課題への挑戦
・定期的な見直しと修正
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