【ピアノ】「さらう」「転ぶ」「走る」…ピアノ学習で耳にするけど意味が曖昧な言葉を徹底解説

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【ピアノ】「さらう」「転ぶ」「走る」…ピアノ学習で耳にするけど意味が曖昧な言葉を徹底解説

► はじめに

 

ピアノを習っていると、先生や知人から「これ、どういう意味だろう?」と首をかしげてしまう言葉が出てくることがあります。日本語なのになんとなく通じているような、でも正確には分かっていないような、そんな音楽ならではの独特な表現たちです。

本記事では、ピアノ学習の場でよく耳にする表現を集めました。

 

► 迷いやすいピアノ学習で耳にする言葉

 

・あまり耳にしない言葉を★☆☆☆☆
・頻繁に耳にする言葉を★★★★★

としたうえで、相対的な使用頻度評価をしています。この評価は、筆者の主観によります。

 

‣ 演奏・練習に関する言葉

 

「さらう」 ★★★★★

「曲を練習する・確認する」こと全般を指し、特にレッスン前や本番前に曲をひと通り弾いて確認することを言います。筆者の印象としては、単純に「ピアノを練習すること全般」にこの言葉を使っている方が多いように感じます。

 

「曲を入れる」 ★★☆☆☆

「あの曲、もう入れてある?」という使い方をします。意味は「レパートリーとして身につける」こと。楽譜を見ながら弾けるだけでなく、ある程度暗譜して人前で演奏できる状態まで仕上げていることを指します。ストックしておける状態にする、というイメージを持つといいでしょう。

 

「転ぶ」 ★★★★★

演奏中にリズムが崩れてしまうことを言い、「ここで毎回転んでしまう」という使い方が定番です。特に速いパッセージが多い箇所でよく起きます。

 

「走る」 ★★★★★

実際に走るわけではありません。テンポが自然と速くなってしまうことを指します。「気持ちが先行したり、技術的な不安定さが出てしまって、演奏が前のめりになる状態」と言い換えてもいいでしょう。

「興奮すると走りやすい」など、アンサンブルや合唱伴奏でよく使われる言葉です。逆は「もたる」です。

 

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「転ぶ」「走る」「巻く」の区別

・前後関係が連続した前のめりは「巻き」
・前後関係が不連続になると「転び」

「走り」という言葉は、どちらの意味でも使われることがありますが、ほとんどは「意図せずそうなってしまった」というマイナスの意味で使われます。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

【ピアノ】演奏におけるアゴーギク:音楽表現を深める重要ポイント集
‣ 13.「転んじゃった」と「巻いた」の区別の仕方

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「もたる」 ★★☆☆☆

「走る」の反対で、テンポが遅れてしまうこと。「サビのところでもたりやすい」といった使い方をします。

 

「食う」 ★★★★★

① 演奏上の問題(タイミングが前にずれてしまう)

リズムを本来より少し早く取ってしまうこと。「その8分音符、少し食ってるよ」と言われたら、音の出るタイミングが前にずれているというサインです。リズム感の細かな問題を指摘するときによく使われます。

② 楽譜上の書法(意図的に拍の前から入ってくる音符)

以下の譜例の各タイの始まりの音は、「前のめりで入ってくる音」ですが、このようなときに「8分音符ぶん食って入ってきた音」などと、楽曲の書法自体を指して使われることもあります。こちらのほうが耳にする機会は多い印象です。

譜例(浄書ソフトで作成)

ポピュラーピアノで裏拍で一斉に食って入ってくる表現の譜例

 

「もつれる」 ★★★☆☆

指遣いやリズム、フレーズの流れがうまく整わず、滑らかに弾けていない状態です。「速くなるともつれる」という悩みはピアノあるあるの一つ。

 

「落とす」 ★☆☆☆☆

文脈によって意味が変わります:

・「音を落とす」:本来弾くべき音を抜いてしまうことを指す。意図的に省略する場合にも使われる
・「テンポを落とす」:テンポをゆっくりにすること

どの意味かは前後の文脈で判断しましょう。

 

‣ 音・響きに関する言葉

 

「立つ」 ★★★★☆

「音が立つ」「和音が立つ」という使い方をし、音が明瞭に聴こえる、輪郭がはっきりしているという意味です。逆に「音が立っていない」と言われたら、もう少しはっきりした音を出すよう求められています。

「粒立ちが良い」という言い方が特に多く用いられており、ここでいう「粒」とは、一音一音が独立して明瞭に聴こえる様子を表した比喩表現だと考えてください。

 

「鳴らす」 ★★★★★

楽器を十分に響かせることを指します。単に大きな音を出すというより、「豊かに響かせる」というニュアンス。「あのホール、鳴らすのが難しい」と言えば、残響が少なかったり響かせにくい音響環境だということです。

 

「歌う」 ★★★★★

声楽だけに使う言葉ではありません。ピアノでも「そのメロディ、もっと歌って」と言われます。フレーズを自然な呼吸感・流れで表現すること、音楽に抑揚や方向性を持たせることを指します。機械的にならず、人の声のように弾くイメージです。

 

‣ アンサンブル・合奏に関する言葉

 

「ハマる」 ★★☆☆☆

リズム・呼吸・アンサンブルがぴったり合った瞬間に使います。音楽的に一体感が生まれた状態を表します。

 

「縦を合わせる」 ★★★★★

アンサンブルで、複数の奏者の音の出るタイミングをそろえることです。楽譜上の「縦の線(拍)」をそろえるイメージから来ていると考えると腑に落ちるのではないでしょうか。「縦が合っていない」と言われたら、ほかの奏者との発音タイミングがずれているということです。

 

‣ 舞台・本番に関する言葉

 

「本番」 ★★★★★

一般的には「イベント当日」程度の意味ですが、演奏家にとっては特別な重みを持つ言葉です。「本番に強い」「本番力を上げる」など、練習とは別次元の集中力や精神的な準備を意識した独特の派生語も存在します。

 

「上手(かみて)/下手(しもて)」 ★★★★☆

「じょうず・へた」とは読みません。これは舞台用語で、客席から見て右側を「上手(かみて)」、左側を「下手(しもて)」といいます。発表会の打ち合わせなどで使われるので、覚えておくと役立ちます。

 

「箱」 ★★☆☆☆

演奏会場・ライブ会場のことを指す業界用語です。音響や雰囲気も含めて評価されることが多く、「いい箱」という言い方をします。プロの演奏家や音楽関係者がよく使う表現だと把握しておいてください。

 

「トッパライ」 ★☆☆☆☆(日常的にはほとんど耳にしないが、プロの現場ではよく使う言葉)

ギャラの当日手渡し払い・受け取りのことです。

 

►「さらう」をもっと詳しく

 

「ピアノを“さらう”」の「さらう」は、音楽業界や芸事で使われる言い方で、 もともとは「一通りざっと目を通す・流してやる」という意味の動詞「浚う(さらう)」から来ています

この「浚う」は、川底をさらって泥を取り除く「浚渫(しゅんせつ)」の「浚」です。 そこから転じて:

・本や台本をざっと読む
・曲を最初から最後まで一通りやる
・稽古として全体を確認する

という意味で使われるようになりました。

したがって、「ピアノをさらう」は、「曲を一通り弾いて確認する」「稽古として通して弾く」というニュアンスです。特に邦楽、クラシック、演劇、落語など、師弟文化のある芸事では昔からよく使われてきました。

なお、日常語の「攫う(さらう)=連れ去る」とは別語源です。 漢字で書くと区別できて:

浚う → 復習する・通す
攫う → かっさらう

になります。

 

► なぜ、音楽用語には独特な言い回しが多いのか?

 

ここまで見てきたように、音楽の世界には「さらう」「転ぶ」「走る」など、日常生活ではあまり耳にしない独特な言い回しが数多く存在します。これは、音楽が単なる知識ではなく、「感覚」や「身体感覚」を共有する文化として発展してきたことと深く関係しています。

特にクラシック音楽や邦楽、演劇などの世界では、長いあいだ “師匠から弟子へ” という形で技術が受け継がれてきました。そのため、「理論的に厳密な言葉」よりも、「感覚的に伝わる言葉」のほうが重視される場面が多くあります。「歌うように」「音を立てる」「転ばないように」といった表現は、その代表例です。

また、音楽は「正確さ」だけでは成立しません。同じ楽譜を弾いても、演奏者によってニュアンスや呼吸感が変わります。そのため、音楽の現場では「言葉で完全に説明しきれない感覚」を共有する必要があり、比喩的な表現や業界独特の言い回しが自然と発達していきました。

 

► 終わりに

 

最初は戸惑うこともあるかもしれませんが、こうした言葉の背景を知ると、音楽の世界ならではの文化やコミュニケーションの面白さも感じられるようになるでしょう。

 

併読推奨記事

音名と階名、移調と転調、テヌートの連続とレガート、アーティキュレーションとフレージングなど、似ているけれど意味が異なる用語の意味を具体例とともに整理した記事です。

【ピアノ】どっちがどっち?音楽学習が深まる「紛らわしい音楽用語」徹底解説

 


 

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