【ピアノ】ショパン「ワルツ イ短調 遺作 (2024年発見)」:概要・楽譜・演奏ポイント
► はじめに
2024年、ショパンの知られざる作品が、約200年の時を経て発見されました。発見の報を聞いて、胸が高鳴った方も多いのではないでしょうか。
本記事では、「ワルツ イ短調 遺作(2024年発見)」の背景や楽譜情報、そして実際に弾く際の演奏ポイントを紹介します。ブルグミュラー25番修了程度の難易度なので、中級手前の方でも十分挑戦できる一曲です。ぜひ最後まで読んでみてください。
► ショパン「ワルツ イ短調 遺作 (2024年発見)」とは
譜例(PD作品、Sibeliusで作成、曲頭)

‣ 発見の経緯
この曲が世に出たのは2024年のこと。眠っていた場所は、ニューヨークのモルガン図書館・博物館でした。発見後は筆跡・紙質・インクにわたる精密な鑑定が実施され、ショパン自身が書いた真作と認定されています。
作曲されたのは1830〜1835年頃とみられています。ポーランド国立ショパン研究所長のA. シュクルネル氏が注目したのは、その楽譜の小ささです。縦横わずか約10.2×13cmというサイズから、誰かに手渡すために書かれた楽譜だったのではないかと考えられています。小さな紙片に記された、個人への贈りもの——そう思って眺めると、200年の時を越えてぐっと身近に感じられます。
初録音は2024年11月8日、ピアニストのラン・ランの演奏でドイツ・グラモフォンからリリースされました。
‣ 基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作曲時期 | 1830〜1835年頃 |
| 拍子・調性 | 3/4拍子、イ短調(a-moll) |
| 演奏時間 | 約1分10秒(リピート込み) |
| 難易度 | ブルグミュラー25の練習曲修了程度 |
► 楽譜について
原典版も出版されていますが、ぷりんと楽譜版がおすすめです。ショパン自身が書いた記号とそれ以外の記号を [ ] で明確に区別して表記しているため、「これはショパンの指示なのか、後から編集者が加えたものなのか」が一目で分かります。
作曲家の意図を大切にして弾きたい方は、こちらの版を使用しましょう。
ショパンの原典に近い形で学べる楽譜はこちら:
・1曲単品で購入OK
・ダウンロード後すぐに練習可能
・印刷・タブレットどちらでも使える
► 演奏のヒント
全体を通じてポイントになるのは、2声部的な書法への意識です。詳しくは後述しますが、右手が単なる1本の線としてのメロディではなく、1本の線に見えるけれども多声表現になっている箇所や、本当に複数の声部が絡み合う場面が随所に登場します。それぞれの声部の動きを丁寧に聴き分けながら弾くことで、この曲の魅力を引き出しましょう。
なお、1-8小節は序奏的な役割を担っています。この長さについては興味深い見方もあり、曲全体のバランスから考えると序奏が少し長すぎる気がするため、「まだ発見されていない続きがあるのでは?」という推測もできるのです。ショパンの謎は、まだまだ尽きないのかもしれません。
‣ 1-8小節
・1小節目からの右手パートは2声的な書法
・実質「何度も鳴らされるC音」と「E Dis D」と動くラインとに分かれている
・そこで、曲頭のアウフタクトのA音は、1小節2拍目のE音とC音のどちらにも関連のある音として扱う
・2小節2拍目の運指は「1 3」で弾くと、3拍目へ無理なく接続できる
・「2 5」で弾かないように注意する
‣ 9-16小節
・9小節目の入りのメロディE音は、前からの終わりの音であり、新しいメロディの始まりの音でもある
・アクセントが続いているので、演奏上は新しいメロディの始まりの音としての意識で弾くことになる
・9-15小節まで低音保続になっており、ずっとA音が鳴らされる
・このA音が均等に響くように注意し、一つだけコブを作ったりしないように
・13-14小節の右手パートも2声的な書法
・何度も鳴らされるE音がうるさくならないように注意する
・14小節目の最後のH音は、休符を挟んで15小節目のメロディA音につながっている
・音量バランスに注意し、この2つの音が無関係にならないように注意する
・15小節目の右手の運指は、「3432154」で弾くのを推奨
・16小節2拍目表と裏はフレーズが別になる
‣ 17-24小節
・19小節1拍目のE音はメロディだが、2拍目からは別の声部でのメロディが出てくる
・これを「Mi Do」というメロディだと勘違いしないように
・声部別によく聴いて弾き分ける
・19小節目から21小節目にかけて、一時的にC-durになる
・19小節3拍目は、ドッペルドミナント(Ⅴへ行くためのⅤ)と言われる和音の亜種
・本来はコードネームD7になるところを、共通音を2つ持つA♭7の和音に置き換えたもの
・20小節3拍目から次の小節へかけてメロディが3度音程で装飾される
・これまでの響きとの差を感じて弾く
・21小節1拍目からメロディにE音が5連続出てくる
・22小節1拍目のE音に一番重みが入るように演奏すると音楽的
・22小節3拍目は、他の箇所と異なり左手が休符になるのを見落とさない
・ペダルを離して、きちんと無伴奏表現(ソロ)にする必要がある
・23小節1拍目の左手は、付点2分音符で「1-4」の替え指をする
・右手の運指は「312514」を推奨
・ここの右手も2声的な書法になっているので、「C C H A」「E Dis D C」の各声部を別々にバランス取る
・それに対して「E Fis Gis A」という左手のラインまで絡んでくる、めまいのようなサウンド
・この小節は1拍目のみペダルを踏むのを推奨
► 終わりに
ショパンが約200年前に書き残した、たった1分ちょっとの小品。けれどそこには、彼の繊細な声部書法や、豊かな和声の色彩が詰まっています。
演奏時間が短いぶん、じっくりと細部まで向き合える曲でもあります。1声部ずつ丁寧に音を聴き分け、ショパンがこの小さな楽譜に込めた世界を、ぜひ自分の指先から紡いでみてください。
今回紹介した楽譜はこちら(すぐダウンロード可)
次に弾くならこちら:
・【ピアノ】ショパン初心者のための第一歩:前奏曲集 第7番 完全解説(本楽曲よりも少し易しい)
・【ピアノ】ショパン「24のプレリュード 第4番 ホ短調 Op.28-4」演奏完全ガイド(本楽曲と同程度の難易度)
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