【ピアノ】片手だけ先に暗譜する練習法:譜読み・難所攻略・テンポアップを加速させる

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【ピアノ】片手だけ先に暗譜する練習法:譜読み・難所攻略・テンポアップを加速させる

► はじめに

 

「難所の譜読みが進まない」「難所でいつも止まってしまう」「テンポが上がらない」——その原因の多くは、暗譜の不足にあると思ってください。本記事では、打開策として「片手だけ先に暗譜する」という方法を、具体的な楽曲例とともに解説します。

本記事の対象者:全レベルの学習者(ただし、譜例は中級〜上級の作品を掲載)

 

► なぜ「片手優先暗譜」が有効なのか

 

難所を弾くとき、楽譜を追いながら両手を同時にコントロールするのは認知的な負荷が非常に高い状態です。そのため、まず片手だけを完全に暗譜してしまい、その手が「無意識に動ける」状態を作ることが、上達を加速させる鍵になります。

 

► 場面別:片手暗譜が特に効く4つのパターン

‣ ケース①:跳躍が多い難所

 

モーツァルト「ピアノソナタ イ短調 K.310 第3楽章」

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、72-75小節)

モーツァルト「ピアノソナタ イ短調 K.310 第3楽章」72-75小節の楽譜。Prestoで大きな跳躍が連続する難所の譜例。

Prestoのテンポで大きな跳躍が連続する箇所では、楽譜を目で追う余裕がありません。跳躍先を目視で確認するためには、手が自然に動く状態——つまり完全な暗譜——が前提条件となります。

ゆっくりなら何とか弾けても、テンポを上げた途端に崩れるのは「暗譜が不十分なまま両手練習に進んでいる」ことがほとんどの原因です。

 

この場面での対処法:

・跳躍の多い右手パートのみ、先に暗譜してしまう
・楽譜なしで、Prestoのテンポで弾けるまで仕上げる
・その後はじめて、もう片方の手と合わせる

 

‣ ケース②:広音域にわたるアルペジオ

 

ラフマニノフ「前奏曲 ト短調 Op.23-5」

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、35-36小節)

ラフマニノフ「前奏曲 ト短調 Op.23-5」35-36小節の楽譜。広音域にわたるアルペジオの難所の譜例。

たとえシンプルでも広い音域を移動するアルペジオではポジション移動が伴うため、音を拾うのに精一杯になりやすい箇所です。

このような部分では、アルペジオを弾く手だけを先に暗譜しましょう。上がりと下がりのフレーズに分けて練習すると、ポジションの起点・終点を別々に身体に覚えさせることができるので、さらに効果的です。アルペジオの手が「楽譜も手元も見ずに探らず弾ける」状態になって初めて、もう片方への注意が向けられます。

 

この場面での対処法:

・アルペジオ側の手だけを先に完全暗譜する
・上行・下行を分割して練習する
・「片手のみ・暗譜で・速く弾ける」状態を作ってから合わせる

 

‣ ケース③:両手ともにハードルがある場面

 

ショパン「バラード 第1番 ト短調 Op.23」

譜例(PD作品、Sibeliusで作成、208-211小節)

ショパン「バラード 第1番 ト短調 Op.23」208-211小節の楽譜。両手ともにハードルのある難所の譜例。

 

シューマン「謝肉祭 より 16. ドイツ風ワルツ – 間奏曲(パガニーニ)」

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、パガニーニの冒頭)

シューマン「謝肉祭 より 16. ドイツ風ワルツ – 間奏曲(パガニーニ)」冒頭の楽譜。急速なパッセージと跳躍を含む難所の譜例。

これらのように、両手ともに跳躍や急速なパッセージを含む場合、どちらかの手が頼りになる状態でないと両手合わせが機能しません。この場合は両手をそれぞれ別々に暗譜してから合わせることが基本的なアプローチです。最低限、片方の手のパートは暗譜しておきましょう。

両手でテンポを上げる際は、ごく短い単位(2小節など)に区切って速いテンポで弾く練習を繰り返し、仕上がった部分を少しずつつなぎ合わせていきます。

 

この場面での対処法:

・まず左手だけを Presto で弾けるまで暗譜する(最低ライン)
・次に右手だけを Presto で弾けるまで暗譜する
・ごく短い単位で両手をゆっくり合わせ、徐々にテンポを上げる

 

‣ ケース④:譜読みのハードルが高い箇所

 

ラフマニノフ「音の絵 Op.39-9」

譜例(PD楽曲、Finaleで作成、6-9小節)

ラフマニノフ「音の絵 Op.39-9」6-9小節の楽譜。臨時記号が多く譜読みのハードルが高い難所の譜例。

臨時記号が多く、ゆっくり弾いても「これは合っているのか?」と判断しづらい作品があります。そういった箇所でいきなり両手合わせをすると、間違いに気づかないまま定着してしまうリスクがあるうえ、中々弾けるようにもなっていきません。

片手ずつを完全に仕上げておくことで、小節内有効臨時記号の見落としなどをこの段階でつぶしておけます。

 

この場面での対処法:

・「一段ずつ」など短い単位に区切る
・その部分を「片手のみ」「暗譜で」「テンポで」弾けるようにする — ここが最重要
・両手を合わせてゆっくりさらい始める

 

► 暗譜の精度:自分に厳しく接すること

 

「片手暗譜」という方法を実践するうえで、もっとも重要なのは暗譜の基準です。

「楽譜を見ながら割とスラスラ弾ける」は暗譜ではありません。楽譜がなくても、表現まで含めてきちんと音にできている状態を目指してください。

難しく感じても、ここまで徹底して初めて、片手暗譜の効果が現れます。基準をゆるく設定してしまうと、両手合わせの段階で再び崩れることになります。この段階でこそ、自分に厳しく接しましょう。

 

► 終わりに

 

場面 ポイント
跳躍難所 跳躍の多い手のみ先に暗譜。楽譜なしで理想のテンポに対応できる状態まで
広音域アルペジオ アルペジオ側を先に暗譜。単純なアルペジオの場合、上行・下行を分けて練習
両手ともにハードル 両手それぞれを個別に暗譜してから合わせる。両手合わせてからは、短い単位でつなぐ
譜読みが難解 短い単位で片手ずつ暗譜 → 臨時記号などチェック → 両手ゆっくり

 

どのケースにも共通する原則は一つ——「楽譜なしでテンポで弾ける」状態を片手で作ること。この土台があって初めて、両手の練習が実を結びます。

 

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