【ピアノ】ヘンレ版がなぜ独特の香りがするのか、ヘンレ社に問い合わせてみた
► はじめに
ピアノを弾く人なら誰もが知っている青い表紙の楽譜、ヘンレ版(G. Henle Verlag)。その正確な校訂と美しい装丁で世界中の音楽家に愛されていますが、実はもう一つ、多くの人が気づいている「特徴」があります。
それは、「独特の香り」です。
ヘンレ版を開いたとき、他の楽譜とは明らかに違う独特な紙の香りがする——そう感じたことがある方も多いのではないでしょうか。この香りの正体が気になり、ヘンレ社に直接問い合わせてみました。
※ 問い合わせは2025年10月4日に行い、10月6日に回答をいただきました。問い合わせの際には、この内容をブログで紹介させていただく旨を事前にお伝えしてあります。
► 調査結果
‣ ヘンレ社からの回答
ヘンレ社からは、とても丁寧で興味深い回答をいただきました。以下、その内容を紹介します。実際の回答は英語でいただきました。
ご質問をありがとうございます。非常に珍しいお問い合わせですね。
製造部門に確認したところ、印刷会社(バイエルン州グムント所在)は、ドイツ国内の材料(紙、厚紙、糊)を使用していますが、特別なものは何も使っていません。
この「匂い」は、紙や糊の製造工程にわずかな違いがあるため、他の出版社の楽譜とは多少異なるでしょう——しかし、繰り返しになりますが、特別なものではありません。
ただし、この匂いが日本で「香り」として認識されていることは、私たちにとって大変嬉しいことです!
‣ 分かったこと
ヘンレ社の回答から、以下のことが明らかになりました:
1. 特別な材料は使っていない
ヘンレ版の香りの秘密は、何か特殊な香料や素材を使っているわけではありません。使用されているのは、バイエルン州グムントの印刷会社による、ドイツ国内で調達された紙、厚紙、糊といった一般的な材料です。
2. 製造工程の違いが香りを生む
では、なぜあの独特の香りがするのか。それは、紙や糊の製造工程における「わずかな違い」によるものだそうです。同じ材料を使っていても、製造方法や配合が少しずつ異なることで、出版社ごとに異なる「香り」が生まれるのでしょう。
3. ヘンレ社も喜んでくれている
そして何より心温まったのは、この「匂い」が日本で「香り」として認識されていることを、ヘンレ社が喜んでくださったことです。
‣ ヘンレ版の香りの正体
つまり、ヘンレ版の香りの正体は、意図して作られた香りではなく、ドイツの伝統的な製紙・製本技術と、その土地の材料が生み出す、自然な副産物だったのです。
楽譜を開くたびに広がるあの香りは、バイエルンの印刷所で丁寧に作られた証であり、ヘンレ社の品質へのこだわりの表れでもあるのです。
► 終わりに
今回、素朴な疑問を投げかけた筆者に、真摯に、そして温かく対応してくださったヘンレ社に心から感謝いたします。
製造部門にまで確認を取り、丁寧な回答をくださったこと、そして何より、筆者を含め日本でもヘンレ版の香りに興味を持っている音楽家がいることを喜んでくださったこと——その姿勢に、改めてヘンレ社の誠実さと音楽への愛を感じました。
これからも、あの青い表紙を開くたびに、バイエルンの工房から届いた「香り」とともに、美しい音楽を楽しんでいきたいと思います。
ヘンレ社、本当にありがとうございました。
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