【ピアノ】J.S.バッハ シンフォニア 第14番 BWV800 全運指付き楽譜と練習のコツ
► はじめに
J.S.バッハ「シンフォニア 第14番 BWV800」は、シンフォニアの中でも特にストレッタの多用が印象的な作品です。平静な美しさと緊張感が絶妙に調和した、充実度の高い楽曲として知られています。
本記事では、この楽曲に取り組む方のために、「全運指」を付けた楽譜を提供し、練習のヒントも解説していきます。
ストレッタとは:
フーガ形式において楽曲に緊迫感と盛り上がりを与える重要な作曲技法です。
特徴:
・その主題応答が終わらないうちに、かぶさるように主題(応答)を別の声部に現す
・先行の主題(応答)の末尾と、追行のそれのはじめが重複するようにする
参考:「楽式論 著:石桁真礼生 / 音楽之友社」
本作品では、特に12小節目以降のストレッタの展開が聴きどころとなっています。
►「全運指」の解説
この楽曲はパブリックドメインです。運営者が浄書ソフトウェアで作成した楽譜を使用しています。
運指について重要な注意点
この運指は一例です。手の大きさや個人差に合わせて調整してください。また、どのようなアーティキュレーションを付けるのかによっても適切な運指は変わります。お手持ちの楽譜の内容と照らし合わせながら、必要に応じて参考にしてください。
► 具体的な練習のヒント
‣ 適切なテンポ設定
推奨テンポ設定:
練習開始時:♩ = 40-46(正確性と安定性重視)
中間段階:♩ = 46-52(表現力の向上期)
目標テンポ:♩ = 54(ヘルマン・ケラー提案)
なぜ、このテンポが適切なのか:
ヘルマン・ケラーが提案する ♩ = 54 は、以下の特徴があります:
・楽曲固有の平静で内省的な性格を適切に表現できる
・多出するストレッタを明確に聴き分けながら演奏可能な速度
‣ 演奏上の重要なポイント
· テーマの構造を正確に把握する
譜例(曲頭)
多くの学習者が見落としがちなポイント:
・テーマは直前の8分音符で終わるのではなく、レッド音符で示した音まで
・テーマは開始音から丁度1オクターヴ下行して締めくくられる
同じ形は何度も出てくるので、どの音が最終音なのかを理解して演奏するようにしましょう。
· その他の重要な演奏注意点
ストレッタの位置を把握する
本作品では、12小節目以降のストレッタの展開が特徴的です。先行の主題(応答)の末尾と、追行のそれのはじめが重複してくるので、それら全箇所の入りと終わりをチェックしておくようにしましょう。クライマックスの20-21小節には、全声部でのストレッタまで見られます。
このような学習習慣は、今後「平均律クラヴィーア曲集」のフーガなどを学習する際の基礎になります。
音楽の横の流れを重視する(22-23小節)
22-23小節は、左手パートが8分音符で刻んでいく、ホモフォニー(主旋律と伴奏)的な書法に変化します。20-21小節での充実した全声部でのストレッタから解放された、開放的な印象です。
左手パートが刻むからこそ、常に横への大きな流れを意識したうえで演奏するようにしましょう。うっかりすると音楽を縦割りに刻んでしまいがちです。
► 終わりに
本作品は、より高度なフーガ作品の学習に先駆けた、ストレッタ技法の理解と実践において格好の教材です。楽曲構造の正確な把握を前提に学習を進めていきましょう。
この作品についてさらなる演奏ヒントが必要な方は、以下の解釈版を参考にしてください。
・園田高弘 校訂版 J.S.バッハ シンフォニア BWV787−801
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