【ピアノ】J.S.バッハ シンフォニア 第11番 BWV797 全運指付き楽譜と練習のコツ
► はじめに
J.S.バッハ「シンフォニア 第11番 BWV797」は、他の対位法的なシンフォニア作品と比較して、ホモフォニー(主旋律と伴奏)の要素が強めに現れた興味深い作品です。技術的に困難な箇所は少ないものの、J.S.バッハ特有の音楽的表現を適切に演奏するためには、いくつかの重要な注意点があります。
本記事では、この楽曲に取り組む方のために、「全運指」を付けた楽譜を提供し、練習のヒントも解説していきます。
►「全運指」の解説
この楽曲はパブリックドメインです。運営者が浄書ソフトウェアで作成した楽譜を使用しています。
運指について重要な注意点
この運指は一例です。手の大きさや個人差に合わせて調整してください。また、どのようなアーティキュレーションを付けるのかによっても適切な運指は変わります。お手持ちの楽譜の内容と照らし合わせながら、必要に応じて参考にしてください。
► 具体的な練習のヒント
‣ 適切なテンポ設定
推奨テンポ設定:
練習開始時:♩. = 30-36(正確性と安定性重視)
中間段階:♩. = 36-42(表現力の向上期)
目標テンポ:♩. = 44(ヘルマン・ケラー提案)
なぜ、このテンポが適切なのか:
ヘルマン・ケラーが提案する♩. = 44 は、以下の特徴があります:
・楽曲の内省的な性格を表現するのに適した、速過ぎない速度
・一小節を一つで感じとるのに問題のない速度
‣ 演奏上の重要なポイント
· 各声部の音域が近い部分における重要ラインの抽出
譜例(3-6小節)
注意が必要な箇所:
・3-6小節
・31-32小節
・67-70小節
これらの小節では、右手の各声部の音域が近いのが特徴です。したがって、すべての音が同等にメロディのように聴こえないよう、トップノートを適切に浮き立たせる必要があります。
· 弾き直し音符の適切な処理
基本的な考え方
同じ音が連続して現れる場合、音楽的文脈に応じて音価を調整する必要があります。ピアノという楽器の特性上表現できない音価を、演奏者の解釈によって補完することが重要です。
譜例(7-18小節)
具体例:12小節目の処理
付点4分音符のC音(レッド音符)が伸びている最中に同音(ブルー音符)が再度現れるので:
・カッコで示したように、16分休符を補完
・この処理により、音楽的な流れを損なうことなく技術的問題を解決
・17,34小節目も同様に処理
譜例(31-36小節)
► 終わりに
適切なテンポ設定、声部の役割理解、そして楽器の特性を考慮した演奏技法の習得が、この作品を美しく演奏するための鍵となります。
この作品についてさらなる演奏ヒントが必要な方は、以下の解釈版を参考にしてください。
・園田高弘 校訂版 J.S.バッハ シンフォニア BWV787−801
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