【ピアノ】グラナドス「スペイン舞曲集」から厳選:発表会で映える中級向け2曲
► はじめに
エンリケ・グラナドス(1867-1916)は、スペインの民族性を西洋クラシック音楽に昇華させた作曲家の一人です。彼の代表作「スペイン舞曲集 Op.37」は、技術的な難易度が手頃でありながら、スペイン音楽の情熱と優雅さを存分に味わえる珠玉の作品集として親しまれています。
本記事では、この作品集の中から発表会での演奏に特におすすめの2曲を紹介します。どちらも初中級レベル(ツェルニー30番入門~程度)の技術で挑戦可能でありながら、聴衆に強い印象を残す魅力的な楽曲です。グラナドス作品への入門としても最適な選曲となっています。
► 発表会で映える中級向け2曲
‣ スペイン舞曲集 Op.37より 第1曲「メヌエット」
譜例(PD作品、Sibeliusで作成、曲頭)
作曲年:1892年
演奏時間:約2分半
作品の特徴:
・堂々とした強奏(フォルティッシモ)で始まる印象的な開始部
・演奏時間が短くシンプルな中に、多様な表情を見せる構成
・舞曲特有の優雅な性格とアクセント
技術的なポイント:
・テンポの変化に伴う表現の使い分け
・1拍目以外から始まる特徴的なフレージング
・優雅なメヌエットのリズム感の表現
演奏レベル:
・推奨:中級レベル(ツェルニー40番中盤~程度)
・初中級レベル(ツェルニー30番入門~程度)でも挑戦可能
その他:
・発表会の開始曲として最適
・後述の「アンダルーサ」と組み合わせることで、スペイン音楽の多様な魅力を表現可能
‣ スペイン舞曲集 Op.37より 第5曲「アンダルーサ」
譜例(PD作品、Sibeliusで作成、曲頭)
作曲年:1892年
演奏時間:約4分
作品の特徴:
・スペインの民族色豊かな旋律
・歌うような旋律(カンタービレ)と力強い部分のコントラスト
・場面転換明瞭で、豊かな音楽表現が可能な構成
技術的なポイント:
・リズミカルな中における、歌うような旋律の表現力
・強奏部分での音量コントロール
・スペイン舞曲特有のリズム感の表現
演奏レベル:
・推奨:中級レベル(ツェルニー40番中盤~程度)
・初中級レベル(ツェルニー30番入門~程度)でも挑戦可能
その他:
・グラナドスのピアノ曲の中で最も有名
・他の作曲家の作品と上手く組み合わせることで、魅力あふれるプログラムを作れる(後述)
► おすすめ楽譜
グラナドスの使用楽譜の版には、特に定番のものはありません。信頼性の高さからヘンレ原典版が一番のおすすめですが、以下の全音楽譜出版社の楽譜はリーズナブルで日本語解説もついているので、より学習向きと言えるでしょう。
以下の楽譜集は、本記事で紹介している2曲を両曲とも収載しています。
・グラナドス スペイン舞曲集 ヘンレ版
・グラナドス スペイン舞曲集 解説付 全音楽譜出版社
► プログラム構成の提案
本記事で紹介した作品を使ったコンサートプログラム例を提案します:
プログラム①:本記事で取り上げた2曲を組み合わせた選曲
1. スペイン舞曲集 Op.37より 第1曲「メヌエット」
2. スペイン舞曲集 Op.37より 第5曲「アンダルーサ」
・中級程度の学習者向け
・演奏可能時間短めの本番で(約6分半)
・スペイン色が前面に出た選曲
プログラム②:他の作曲家の作品と組み合わせた多彩なプログラム
1. スペイン舞曲集 Op.37より 第5曲「アンダルーサ」(導入として)
2. ラヴェル「ソナチネ」(スペイン的な要素を含む作品と相性の良い作曲家として)
3. リスト「バラード 第2番 S.171 R.16」(メインプログラムとして)
・上級者向けの本格的なプログラム
・ミニリサイタルサイズのまとまった演奏披露(約30分)
・プログラム同士のバランスを考えた選曲
本記事の内容の選曲から、将来的にこのような上級プログラムを想定することもできます。
► 終わりに
今回紹介した「メヌエット」と「アンダルーサ」は、グラナドスの音楽世界への扉を開く重要な作品です。手頃な難易度でありながら、スペイン音楽特有の情熱的な表現力と繊細な美しさを学ぶことができます。
これらの作品を通してグラナドスの音楽に魅力を感じたら、「演奏会用アレグロ」「ゴイェスカス」「詩的なワルツ集」といった、より高度な作品にも挑戦してみてください。
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