【ピアノ】「ピアノ演奏のヒント」(徳末悦子 著)レビュー:楽しく学べる実践的アドバイス集
► はじめに
本書は、徳末悦子氏(1947-2022、相愛大学名誉教授)による、ピアノ演奏における幅広い内容を網羅した実践的なガイドブックです。特徴は、専門的な内容でありながら、親しみやすい文体とユーモアのあるイラストによって、読者を楽しませながら学びを提供している点です。
・出版社:音楽之友社
・初版:1986年
・ページ数:158ページ
・対象レベル:初中級~上級者
・ピアノ演奏のヒント 著:徳末悦子 / 音楽之友社
► 内容について
‣ 優れている点
1. バランスの取れた内容構成
・親しみやすい読み物の色が濃く出たうえで、基礎的な奏法から高度な演奏テクニックまで幅広く解説
・初中から上級者まで、それぞれのレベルに応じた学びが得られる
2. 実用的な技術指導
・トリル、スケール、アルペジオ、ペダリング、運指などの具体的なテクニックについての解説
・練習方法に関する具体的なアドバイス
3. 演奏者としての心構え
・音楽性の育成に関する深い視点
・ステージマナーやリサイタル準備など、実践的な知識
‣ 印象的な内容例
本書には、著者の長年の経験に基づく貴重なアドバイスが随所に見られます。例えば:
トリルを止めなければならぬ間際で、手が固くなってしまい、スムーズに流れない場合があります。まだまだトリルが続く、もっと先まで弾く、というつもりで、あまり止めるということを意識しすぎないようにすれば巧くゆくように思います。
(抜粋終わり)
これ(ソフト・ペダル)を踏むと、キーに遊びが生ずるのが普通です。
(抜粋終わり)
時には休止符が大きな意味・役割を果たしている場合もあり、決して軽視せず、そこに休止符が存在する意味の吟味が必要です。
(抜粋終わり)
‣ 著者の音楽観を幅広く学ぶ
本書は、純粋な技術書というよりも、「読み物」として価値があると言えるでしょう。ユニークなイラストと親しみやすい文体で、重要な演奏技術や音楽的な視点を効果的に伝えています。
リサイタル、コンクール、音楽高校の入試など、ある程度専門志向の内容が含まれる一方、初中級者でも読めるような、基本内容を分かりやすく伝えてくれる項目も含まれています。これはどういうことかというと、何か一つの問題解決が目的とされている書籍ではなく、専門家としての著者の音楽観を幅広く学ぶための書籍だということです。
► まとめ
本書は、通読するだけでなく、気分転換として時々手に取り、興味のある章から読み進めることをおすすめします。硬くなりがちな練習の合間のリフレッシュ読書としても最適な一冊と言えるでしょう。
・ピアノ演奏のヒント 著:徳末悦子 / 音楽之友社
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