【ピアノ】「ピアノ・ペダルの芸術」レビュー:基礎から近現代奏法まで

スポンサーリンク

【ピアノ】「ピアノ・ペダルの芸術」レビュー:基礎から近現代奏法まで

► はじめに

 

ピアノを演奏する上で、ペダルの使用は最も繊細で奥深い技術の一つです。今回紹介する「ピアノ・ペダルの芸術」(アルガーノン・H.リンド 著、北野健次 訳)は、このテーマに正面から取り組んだ、貴重な一冊です。

 

・出版社:音楽之友社
・邦訳初版: 1976年
・ページ数:145ページ
・対象レベル:中級~上級者

 

・ピアノ・ペダルの芸術   著 : アルガーノン・H.リンド 訳 : 北野健次 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 

► こんな方におすすめ

 

・ペダリングの体系的な理解を深めたい方
・特に近現代作品に積極的に取り組んでいきたいと思っている方
・ピアノ指導者

 

留意点:

譜例のハウススタイルが独特で、少し戸惑う可能性があります。しかし、内容の本質的な価値を考えれば、これは大きな問題とはならないでしょう。

 

► 本書の特徴と位置づけ

 

本書の最大の特徴は、145ページという比較的コンパクトな分量でありながら、ペダリングの本質的な理解から実践的なテクニックまでを、科学的かつ系統的に解説している点です。同じテーマを扱う「ピアノ・ペダルの技法」(ジョーゼフ・バノウェツ 著)が340ページを超える大著であることを考えると、その凝縮度の高さが際立ちます。

 

► 内容の充実度

 

本書は以下のような点で特に優れています:

1. 基本原理の明確な解説

著者は「ペダルはピアノ音楽に一種の色彩を加えるものである」と述べつつ、その使用には明確な判断基準が必要だと説いています。

2. 時代考証に基づいたアプローチ

楽曲が属する時代や楽派に応じたペダリングの選択について、具体的な指針を示しています。これは特にロマン派までの作品を演奏する際に重要な視点となります。

3. 実践的なテクニックの網羅

・フィンガーペダルの具体的な使用法
・ハーフ・ペダリングやトレモロ・ペダリングの実践テクニック
・近現代作品における特殊なペダリング技法

 

特筆すべきは、ダンパーペダルの本質について「単音や和音を明確に持続するものではなく、正しい和声雰囲気でそれらの間のすきまを満たすにすぎない」という著者の洞察です。この視点は:

・ペダルに頼り切らず、手による音価の扱いも重視すべき
・ペダリングを単なる技術としてではなく、音楽表現の本質的な要素として捉える

これらの重要性を示しています。

 

► 特徴的な抜粋

 

(以下、抜粋)
ペダルは金管楽器や木管楽器が管弦楽の音楽におけると同じように、ピアノ音楽に一種の色彩を加えるものではあるが、しかし色彩は無差別に使われてはならない。
だから、どのような場合に色彩を使うべきかを知ると同様に、どのような場合、それを使わずにおくかを学ぶことが必要である。
(抜粋終わり)

 

(以下、抜粋)
ペダルを使用すべきか否かについて疑問を持つ場合には、試みに用いようとする方法が、問題の楽行にだけではなく、その音楽が属する時代や楽派に、適当であるかどうかをよく考える必要がある。
(抜粋終わり)

 

► 結論

 

本書は、ペダリングという極めて繊細な技術について、実践的かつ体系的な理解を提供してくれる貴重な一冊です。「ピアノ ペダリング」(ライマー・リーフリング 著)と比べてより高度な内容を扱っており、本格的にピアノ演奏を学ぶ方にとって、必携の書と言えるでしょう。

ペダリングが「ピアノ演奏における最後の芸術的完成」であるという訳者の言葉は、本書の価値を端的に表現しています。

 

・ピアノ・ペダルの芸術   著 : アルガーノン・H.リンド 訳 : 北野健次 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 


 

► 関連コンテンツ

著者の電子書籍シリーズ
・徹底分析シリーズ(楽曲構造・音楽理論)
Amazon著者ページはこちら

・SNS/問い合わせ
X(Twitter)はこちら

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました