【ピアノ】「エリーゼのために」の楽曲分析:バス音に隠された音楽の流れ
► はじめに
ピアノ曲において、メロディラインだけでなく、伴奏部分に含まれるバス音の動きは楽曲の印象を大きく左右します。本記事では、ベートーヴェンの名曲「エリーゼのために」の一部分を例に、伴奏部分に内包されたバス音が音楽の流れにどのように影響を与えているのかを詳しく見ていきましょう。
► 実例分析:ベートーヴェン「エリーゼのために」
‣ バス音のパルスによる進行感
ベートーヴェン「エリーゼのために」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、23-30小節)
構成の細分化を太線の小節線で示しました。23-29小節は、「4+3」の7小節で構成されています。
「エリーゼのために」の23-30小節において、特徴的なバス音のパターンが見られます。この部分では、バス音が以下のような異なるパルス(リズムの単位)で現れます:
1小節一つのパルス (23,24,26,27小節目)
・各小節内で1回のバス音
・伴奏部分を一つのまとまりとして安定感を生み出す
・F音による保続低音が土台となり、安定した響きを形成
1小節三つのパルス(25,29小節目)
・各小節内で3回のバス音
・より強い前進感を生み出す
・25小節目では、メロディの頂点と合わさって山場を形成
・29小節目では、30小節目からのより運動性の高いセクションへ向かっていく効果
1小節二つのパルス(28小節目)
・和音の変化に合わせた2回のバス音
・中間的な運動性を持つ
‣ 音楽的効果の分析
この部分におけるバス音の使い方には、以下のような音楽的意図が読み取れます:
1. 構造的な安定感
・F音による保続低音(23-27小節)が、セクション全体に統一感を与えています
・1小節一つのパルスが基本となり、安定した土台を形成
2. クライマックスの形成
・25小節での3パルスが、メロディの盛り上がりを効果的に支える
・4小節のフレーズ(23-26小節)の終わりへ向けて緊張感を高める
3. 次のセクションへの橋渡し
・29小節の3パルスが、30小節からの新しいセクションへの期待感を高める
・進行感の増加により、自然な展開を実現
► まとめ
バス音のパルスは、単なる伴奏の一部ではなく、楽曲の進行感や表現を大きく左右する重要な要素です。ベートーヴェンは、バス音のパルスを緻密に設計することで、安定感と前進感のバランスを取り、効果的な音楽表現を実現しています。
演奏する際には、これらのバス音の役割を意識するようにしましょう。また、ピアノ曲の作曲や編曲においても、バス音のパルスの使い方は重要な参考になります。
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