【ピアノ】ピーター・コラッジオ「ピアノ・テクニックの基本」レビュー
► はじめに
ハワイ大学名誉教授であり、世界的に著名なピアニストであるピーター・コラッジオ氏による本書は、専門的な内容を驚くほど親しみやすく解説した稀有な教則本です。日本でもマスタークラスを開催した経験を持つ著者の深い知見と、温かい人間性が随所に感じられる一冊となっています。
著者:ピーター コラッジオ
訳者:坂本暁美、坂本示洋
出版社:音楽之友社
発行年:2005年
ページ数:175ページ
・ピアノ・テクニックの基本 ピーター コラッジオ (著)、坂本暁美、坂本示洋 (翻訳) 音楽之友社
► 対象読者
・ブルグミュラー25の練習曲程度の楽譜が読める方
・楽典の基礎知識を持つ初中級〜上級者
・体系的にピアノ技術を学びたい方
・時代様式に基づいた演奏法を身につけたい方
► 本書の特徴
最大の魅力は、専門的な内容をユーモアたっぷりに伝える手法です。豊富なイラストと親しみやすい説明は、一見すると初級者向けの教材かと思わせるほど。しかし、その内容は実践的で深い専門性を備えています。
► 構成と内容
‣ 第1部:テクニックの基本
第1部では、オクターヴ、スケール、フィンガリングなどの基本的なテクニックについて解説されていきます。練習における心構えや、あがりの克服法など、マインドセットについても多く書かれており、単なる技術解説に留まらず、実践的なトピックを網羅しています。
取り上げられている項目の例:
・初見能力を高めるためのチェックリスト 12項目
・スケール上達の秘訣
・新しい作品に取りかかる時の心構え
‣ 第2部:時代様式と演奏
バロック期から近現代まで、各時代の音楽様式が演奏の観点から詳細に解説されています:
・時代精神
・演奏場所
・演奏技法
・楽曲形式と作品の長さ
・テクスチュアと和声
・リズムとテンポ
・デュナーミクと表情豊かなタッチ
・装飾
・ペダリング
・バランス
ピアニストの視点から様式と演奏について分かりやすく書かれている書籍はそれほど多くない印象であり、貴重な資料です。
► 総評
本書の真価は、技術面と精神面の両方をバランスよく扱い、実践的なアドバイスを提供する点にあります。特に第2部の時代様式に関する解説は、「全ての曲をロマン派風に演奏してしまう」という悩みを持つ学習者にとって、貴重な指針となるでしょう。
親しみやすい語り口で専門的な内容を伝える本書は、真摯にピアノ演奏の向上を目指す方々にとって、長く座右の書となる一冊です。
► 購入をおすすめする方
・体系的にピアノ技術を学びたい方
・各時代様式に基づいた適切な演奏法を身につけたい方
・技術面だけでなく、演奏の精神面についても学びたい方
・実践的なアドバイスを求めている方
・ピアノ・テクニックの基本 ピーター コラッジオ (著)、坂本暁美、坂本示洋 (翻訳) 音楽之友社
► 関連コンテンツ
著者の電子書籍シリーズ
・徹底分析シリーズ(楽曲構造・音楽理論)
Amazon著者ページはこちら
・SNS/問い合わせ
X(Twitter)はこちら
コメント