【ピアノ】自分一人でも音楽的な演奏に仕上げるヒント

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【ピアノ】自分一人でも音楽的な演奏に仕上げるヒント

► はじめに

 

新しい楽曲へ取り組む時に振り出しへ戻らず自分一人で立派な音楽へ仕上げる力をつけるためには、日頃から自ら考え、探求し、成長する姿勢が不可欠です。

本記事では、独学で音楽性を磨くための実践的なアプローチをお伝えします。

 

► 5つのヒント

‣ 1. 新しい楽曲への挑戦:過去の経験を活かす方

 

音楽では、「パターン」でものを考えるのはあまり良いとされない傾向があります。

型にハマりすぎてしまうと、演奏が一本調子になってしまったり、音楽性の伸びに歯止めがかかってしまう可能性があるからです。

 

一方、「楽曲が変わっても普遍的な部分」については、ある程度「パターン化」で考えても構いません

そうすることで、前に取り組んだ楽曲の中で学んだことを新しく取り組み始めた楽曲へ活かすことができます。

 

例えば:

・速いパッセージでは、指を高く上げすぎると速く弾けないんだったな
・こういったスタッカートの連続は、鍵盤の近くから打鍵すると効率よく打鍵できたな
・フレーズが細切れになってしまうのがクセだから、まずはフレージングを意識して譜読みしてみよう

 

このように、楽曲が変わっても引っ張ってこれる普遍的な部分は、実はたくさんあります。新しい楽曲になった時にも頭に浮かぶかどうかがカギ。

そのうちの多くは、前に学んだ楽曲と新しい楽曲との共通点を楽譜から見つけ出すことで、頭に浮かんでくるでしょう。

 

自分ひとりで演奏を組み立てていく力を伸ばしていくために、まずは、以下のことを意識して新しい楽曲に取り組んでみましょう:

・普遍的な部分はある程度パターン化で考える
・そのために、前に学んだ楽曲と新しい楽曲との共通点を見つけ出す
・そのために、もっと短く区切って練習する

 

‣ 2. パターンの積み重ねで想像力を広げる

 

「パターン化」という部分についてもう少し解説しておきます。

 

ピアノ演奏はもちろん、楽器演奏全般において「想像力を持つこと」が神格化されています。

確かに重要なのは間違いありませんがただ単に想像していても知らないことは出てきません

例えば、「カルミナ・ブラーナみたいな合唱を想像しながら演奏して」などと言われたとき、カルミナ・ブラーナを知っていれば想像できます。しかし、知らなければ、それがどんな緊張感の音楽なのかすら分からないですね。

 

そこで必要になってくるのが、「知識」はもちろん、「パターンの蓄積」

「こうきたら、このように解釈するといい」というパターンをいくつもストックすることで、新しく取り組む作品であっても「あの作品の、あの部分の形と似ているから、応用できるかも」などと想像していくことができます。

 

こういったパターンが多くたまってくると、それらのストックが結びついたりして想像力の幅が広がるのです。

 

「想像力不足」に悩んでいる方は、むしろ「蓄積不足」を疑ってみてください

想像して思いついた画期的なアイディアも、ほとんどの場合は過去の何かの影響を受けているものです。

 

‣ 3. 感覚に頼り過ぎず、音楽を深く読む

 

音楽にとって「感覚」は大切です。左脳派的に頭で考えてひねり出した音楽ではなく、直感に頼って自由に演奏することも時には必要でしょう。

しかし筆者の印象からすると、「みんな、あまりにも感覚に頼り過ぎ。もっと音楽を読み取らないと。」と言いたくなるのです。

 

例えば:

・シャープ系やフラット系へ転調したのであれば、音色をどう変えれば適切なのかを考える
f を見たら、どのような性格の ”強く” なのかを考える
・アクセントを見たら、ただ強調するのではなく、”どのような表情で強調するべきか” を考える
・rit. が書かれている時に、どれくらいの加減で rit. すれば全体のバランスとして不自然でないかを考える
・作品の背景を知った上で、そのパッセージはどのような表情で弾くべきかを考える

などをはじめとし、音楽を読み取るために必要なことはたくさんあります。

 

どうしてそう弾くのかについて何も考えを持っていない状態になっていないかを、今一度振り返ってみてください。

 

‣ 4. 疑問が成長の鍵:「どうして?」を考え抜く力

 

ピアノ教室に行ったり、独学の方は教材などを見ていると:

・「この音は大きくしないで」
・「ここでは遅くしないで」

などと、結果だけの指導がとんでくることはありませんか?むしろそれが主流になっていると思います。

 

このような時に、「どうして?」という疑問を常に持ち続けて、自分で理由を考えてみることが重要で、楽曲が変わっても対応できる力をつけるためには必須です。

言われた通りのことをやっていれば、とりあえずその楽曲は仕上がります。しかし、楽曲が変わると何もできなくなってしまうようでは、さらに上の段階は目指せません。

 

できる限り理由を明確にしたうえで物事を判断しましょう。

例えば:

「遅くしない」ではなく:
・音価を細かくしていくことでせき込んでいるから、遅くすると音楽の方向性が逆を行ってしまう
・直後にフェルマータがあるから、rit. までしてしまうとフェルマータ(一時停止)の表現が薄れてしまう

などといったように、「遅しないで欲しい」というところでも何かしらの理由があります。

 

初めのうちは、疑問を持つだけで結局答えが出ないこともあるでしょう。

しかし、「その疑問について考える」という機会を持っておくと、別の学習をしているときにふと答えが結びつくこともあります。

それでも分からないことは、とりあえずチェックだけつけておき、もっと学習が進んでから再度考え直すと、案外すんなりと答えが見つかったりするものです。

 

‣ 5.「一人でこんな立派に仕上げられる」というところを見せよう

 

・どんな人に習えばいいか
・どんな教材を使えばいいか

こういったことばかりに上達のきっかけがあると信じてやまない学習者がいるようです。

しかしまずは、自分が能動的に動いて、今やっていることにきちんと時間を投下しているかどうかを確認すべき

自ら考えて学習に取り組んでいるかどうか。

 

優れた教材を使って力のある指導者に習うのがいいのは、間違いありません。しかし、人や物に頼り過ぎるのは思考停止のサイン。

もっと自分でできることもあるじゃないかと、いつも思わされます。それは、人が出しているヒントを自分から能動的に拾いにいくことも含まれます。

 

「一人でこんな立派に仕上げられる」というところを周りに見せてください

 

結局は、自身の中に先生を育てていくしかありません。そうしたら変なことをやっているのに気づくようになるし、どうしたらいいのかを考えるようになる。

 

筆者の過去の経験や知識などから:

・こうしたら、筆者の場合は上手くいった
・こうしたら、上手くいかなかった
・この楽曲は、このような作りになっている

などといったことは伝えられても、それをどのように理解して身に付けて、どのように新しい楽曲の中で活かすのかについては、完全に演奏者次第。

極論、音楽を教えることはできず、どこまでいっても自分なのです。

 

すぐには役に立たなそうなものも含めて、どんなにちょっとしたノウハウや知識でもいちいち興味をもって吸収して、常に自分の中にいる先生を育てていくように心がける。

それをしないと、「何となくで弾く」というところからいつまで経っても抜け出すことはできません。

 

初めての楽曲でも「ひとりでできるもん」状態を目指して、毎日積み重ねていきましょう。

 

► 終わりに

 

音楽を演奏する上で最も大切なのは、他者の意見や指導を受け入れつつも、自分の内にある「音楽家としての考え方」を育てることです。他人の助けを借りることも重要ですが、最終的には自分の力で音楽を解釈し、演奏を形作っていく力が求められます。

本記事で紹介したヒントを実践しながら、日々の練習を通じて、自分自身の音楽を作り上げていってください。

 


 

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この記事を書いた人
タカノユウヤ

ピアノ音楽(ピアノソロ、ピアノが編成に入った室内楽 など)に心惹かれ、早何十年。
ピアノ音楽の作曲・編曲が専門。
物書きとしては楽譜だけでなく文章も書いており、
音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆を手がけています。
Webメディア「大人のための独学用Webピアノ教室」の運営もしています。
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

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