【ピアノ】K.U.シュナーベル「ペダルの現代技法」レビュー:ダンパーペダルの「中間位置」特化学習
► 概要
・出版社:音楽之友社
・邦訳初版:1964年
・ページ数:67ページ
・対象レベル:中級~上級者
本書の著者 K.U.シュナーベルは、20世紀を代表するピアニスト、アルトゥール・シュナーベルの息子です。父から受け継いだ深い音楽的洞察と、自身の演奏・教育経験に基づいた実践的な知見が、本書の随所に活かされています。
・ペダルの現代技法―ピアノ・ペダルの研究 著 : K.U.シュナーベル 訳 :青木 和子 / 音楽之友社
► 内容について
‣ 本書の最大の特徴
本書の最大の特徴は、ダンパーペダルの「中間位置」に関する詳細な解説です。多くのピアノ教則本ではあまり触れられない¼ペダル、½ペダル、¾ペダルなどの繊細なペダリング技法について、具体的な譜例とともに丁寧に説明されています。
著者は序文で興味深い指摘をしています。多くのピアニストが「自分自身どうペダルを使っているか分かっていない」という現状認識から始まり、耳だけに頼ったペダリングの限界について言及しています。確かに、望ましい響きを耳で判断することは重要ですが、それを実現するための具体的な方法論が必要だと著者は説きます。
‣ 本書の構成と内容
1. 基本から応用まで体系的な構成
・通常のフルペダルから始まり、段階的により高度な技法へと進んでいく
・各章は独立しているため、必要な項目から学習可能
2. 実践的な学習サポート
・ほぼすべての解説に譜例が付属
・理論だけでなく、実際の音で確認しながら学習可能
3. 特筆すべき技術的知見
・スラー線が休符の上にかかっている場合のペダリング解釈
・ヴァイブレーティング・ペダルの効果的な使用法(特に音階演奏時)
・中間位置ペダルの詳細な解説と実践方法
‣ 重要な学びのポイント
著者は特に以下の点を強調しています:
「¼P.、½P.、¾P.等の用語は、特定のペダルやダンパーの位置ではなく、キーを放したときの残響の量を示す」
この認識は非常に重要な視点と言えるでしょう。
ペダルを踏んだ状態で鍵盤から指を上げた時、ペダルの中間位置によって、全く別の表現が得られます。機械的なペダルの位置ではなく、実際の音の響きに着目することで、より繊細で音楽的なペダリングが可能になります。
► 対象読者と活用方法
本書は以下のような方におすすめです:
・基本的なペダリングはマスターしている中級~上級者
・より繊細な音色やニュアンスの表現を目指す方
・中間位置のペダリング技術を学びたい方
67ページというコンパクトな分量ながら、内容は濃密です。各章を実践的に学習することで、確実にペダリング技術の向上が期待できます。
ソフトペダルやソステヌートペダルについてはごくわずかしか触れられていません。ダンパーペダルの「中間位置」について特化学習をするための書籍だと思ってください。
► まとめ
現代のピアノ演奏において重要性を増している「音色の多様性」という観点から、改めて重要性が認識されるべき一冊だと考えます。
ペダリングは「暗黙知」として扱われがちな分野ですが、本書はそれを理論的かつ実践的に解き明かしています。中間位置を駆使して表現力豊かなピアノ演奏を目指す方にとって、間違いなく必読の書と言えるでしょう。
・ペダルの現代技法―ピアノ・ペダルの研究 著 : K.U.シュナーベル 訳 :青木 和子 / 音楽之友社
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