【ピアノ】フーガの譜読み:効率的なアプローチと実践的なコツ
► はじめに
フーガの譜読みには独特の難しさがありますが、適切なアプローチを知っておくことで、より効率的に学習を進めることができます。
本記事では、特にJ.S.バッハの作品を中心に、フーガの譜読みにおける重要なポイントをご紹介します。
► 1. テーマの理解が最重要
「伝統的なフーガの譜読みは、テーマをしっかり理解すれば半分終わったようなもの」
フーガの譜読みで最も重要なのは、「先を急がず、まずは徹底的にテーマ(主題)を理解することから始める」という点です。
これには以下のような利点があります:
演奏バランスの効率的な習得
・テーマ各音の音量バランスのとり方を最初に確立することで、後続の同型パターンにも応用可能
・最初の段階での丁寧な理解が、後の練習効率を大きく向上させる
・雑な譜読みによる悪いクセの形成を防ぐ
暗譜のための強固な基盤作り
・テーマの基本形をしっかり理解することで、変形箇所の把握が容易に
・「似ているけど少し異なっている部分」の整理が、暗譜を確実にする
・フーガは暗譜が飛びやすい楽曲の代表例であり、この対策は重要
楽曲全体の理解深化
・テーマの特徴的なリズムや音程が、他の要素(応答、対位主題、自由声部、嬉遊部など)にも反映されている
・特にJ.S.バッハの伝統的なフーガでは、テーマとの関連性が強い
► 2. 視覚的補助の活用
J.S.バッハをはじめとするフーガの譜読みでは、 主題や応答が各声部に現れますね。
これらの「入り」と「終わり」を赤や青などの目立つ色でマーキングすることで、 譜読みが効率的になります。
J.S.バッハ「平均律クラヴィーア曲集 第2巻 第7番 BWV 876 変ホ長調 フーガ」
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、35-39小節)
①「テノールによる応答の終わり」
②「バスによる主題の終わり」
③「アルトによる応答の始まり」
④「ソプラノによる主題の始まり」
をマーキングしました。
マーキングをすることで、以下のようなメリットがあります。
譜読みで楽譜へかじりついているときというのは、視覚的要素に大きく依存しています。
色による強調は、楽譜の中で重要なところを即座に認識することを助けます。
フーガでは主題や応答を他の声部よりも際立たせる必要がありますが、
特に3声以上になると、慣れないうちは全体のバランスを把握するのが困難に。
マーキングによって、各声部の重要度の変化を視覚的に理解しやすくなります。
楽譜へかじりついているときは、主題や応答が始まっても他と同一化して埋もれていたり、
反対に、終わっても鳴らしっぱなしだったりします。
しかし、マーキングがそれらの入りと終わりをアナウンスしてくれるので、
余裕がないうちでも、最低限のダイナミクスコントロールができるというわけです。
ちなみに、マーキングは以下のような工夫も効果的です:
・主題と応答で異なる色を使用する
・声部ごとに色を変える
・入りと終わりで異なるマークを使用する
► 3. 運指の重要性
運指の書き込みについて
・フーガでは特に運指の書き込みが重要
・2〜5声部を2本の腕で分担するため、各指の役割分担を明確に
・譜読みに行き詰まった際は、全運指の書き込みを検討
全運指書き込みのメリット
・気分転換としての効果
・視覚的な助けとなり、譜読みの効率が向上
・将来的な再学習時にも有用
・明白な運指でも書き込んでおくことで、一貫性を保持
J.S.バッハをはじめとした作曲家の「フーガ」を譜読みするときには特に、運指の書き込みが重要になってきます。
2本の腕で2声〜5声程度の声部を分担するので、各指の役割分担をきちんと決めて毎回同じ運指で練習するべきだから。
運指を書き込みながらフーガの譜読みをしていく中で譜読みに行き詰まったら、
いっそのこと全運指を書き込んでしまってください。
ある意味、気晴らしになる利点がありますし、
全運指が書き込み終わった楽譜を使って譜読みを再開すると、ずいぶんと効率が上がるという利点もあります。
この時期というのは、弾いている最中にまだ視覚的要素に頼りまくっているので、書き込み内容に助けてもらえるわけですね。
さらに言うと、フーガというのは運指が複雑になりがちなので、
その楽曲を将来的に寝かせてから起こしたときに全運指が書かれていると、とても助かります。
運指をわざわざ書き込まなくても分かるようなところの番号ですら書いてしまっていいですし、
譜読みが終わってからそれを消す必要もありません。
► まとめ
フーガの譜読みは、テーマの理解を基礎として、視覚的補助と適切な運指の活用を組み合わせることで、より効率的に進めることができます。
これらの要素は互いに補完し合い、楽曲の深い理解と確実な演奏につながります。
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