【ピアノ】「ピアノ奏法の研究」レビュー:クルト・シューベルトが説く技術と芸術性の融合

スポンサーリンク

【ピアノ】「ピアノ奏法の研究」レビュー:クルト・シューベルトが説く技術と芸術性の融合

► 概要

 

本書は、ピアノ演奏における芸術性と技術的側面を深く結びつけた実用書です。著者のクルト・シューベルトは教育者として高い評価を受け、その教育理論は現代でも色あせることなく、多くのピアニストや教育者に影響を与え続けています。

 

・出版社:音楽之友社
・邦訳初版:1973年
・ページ数:本編 186ページ
・対象レベル:中級~上級者

 

・ピアノ奏法の研究 音楽作品の芸術的理解にもとづく 著 : クルト・シューベルト  訳 : 佐藤峰雄 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 

► 際立つ特徴

 

1. 科学的アプローチと芸術的理解の融合

・生理学的な観点から指の重さや打鍵に必要な力を具体的な数値で示し(例:指の重さ15.5g〜27.3g、打鍵に必要な力約70g)、科学的根拠に基づいた演奏技術の解説を行っている
・同時に、ベートーヴェンのフレージング解釈など、芸術的な表現についても深い考察を展開

2. 実践的な演奏技術の探求

・運指法の重要性を強調し、困難な箇所を克服するための具体的な方法を提示
・オクターヴ演奏における指使いの比較(1-5の方が1-4よりも響きが豊かになる)など、実践的な知見を提供
・小指の跳躍時における練習方法など、具体的な技術的アドバイスを含む

3. 聴覚の重要性の強調

・「実際の音と意図した音との比較」を練習の核心として位置づけ
・技術向上における聴覚の役割を重視し、「練習とは、まずなによりも聴覚による監督を厳しくすること」と明確に述べている

4. リズム解釈の独自の視点

・速度や複雑さに応じて、拍子の細分化や統合を柔軟に行うことを提案
・楽曲の性質に応じた適切なリズム理解の方法を提案

 

► 本書の構成の特徴

 

本書は主要セクションと補遺で構成され、それぞれが関連し合っています:

・ピアノ奏者の基礎教養
・楽譜の芸術的理解と解釈
・演奏における運動現象
・運指法の詳細な研究

特に注目すべきは、これらの要素が単独で扱われるのではなく、相互に関連付けられながら解説されている点です。

 

► 現代のピアニストにとっての価値

 

1. 技術と芸術性の統合

・機械的な練習に陥りがちな現代のピアノ学習者に、技術と芸術性の融合の重要性を示唆
・身体の使い方と音楽表現の関係性についての深い考えを提供

2. 科学的根拠に基づいた実践的アドバイス

・生理学的な知見に基づく演奏技術の解説
・具体的な数値や事例を用いた説得力のある解説

3. 体系的な学習アプローチ

・基礎教養から高度な演奏技術まで、段階的な学習の道筋を提示
・各要素の関連性を示し、総合的な演奏力の向上を支援

 

► まとめ

 

本書は、1973年の邦訳初版から半世紀近くを経た現在でも、その価値を失っていません。特に、技術と芸術性の統合、科学的アプローチと音楽的表現の調和という観点は、現代のピアノ教育においても重要な視点を与えています。中級〜上級者向けの専門書ではありますが、ピアノ演奏の探求を志す学習者にとって、必読の古典的名著と言えるでしょう。

 

・ピアノ奏法の研究 音楽作品の芸術的理解にもとづく 著 : クルト・シューベルト  訳 : 佐藤峰雄 / 音楽之友社

 

 

 

 

 

 


 

► 関連コンテンツ

著者の電子書籍シリーズ
・徹底分析シリーズ(楽曲構造・音楽理論)
Amazon著者ページはこちら

・SNS/問い合わせ
X(Twitter)はこちら

 

この記事を書いた人
タカノユウヤ

ピアノ音楽(ピアノソロ、ピアノが編成に入った室内楽 など)に心惹かれ、早何十年。
ピアノ音楽の作曲・編曲が専門。
物書きとしては楽譜だけでなく文章も書いており、
音楽雑誌やサイトなどでピアノ関連の文筆を手がけています。
Webメディア「大人のための独学用Webピアノ教室」の運営もしています。
受賞歴として、第88回日本音楽コンクール 作曲部門 入賞 他。

タカノユウヤをフォローする
- ピアノ関連書籍レビュー
スポンサーリンク
タカノユウヤをフォローする
大人のための独学用Webピアノ教室(ブログ版)

コメント

タイトルとURLをコピーしました