【ピアノ】「ピアノ演奏の秘訣―音楽的技法のエッセンス」レビュー
► はじめに
「ピアノ演奏の秘訣―音楽的技法のエッセンス」(森山ゆり子、森山光子 著)は 親子ピアニストが贈る、親しみやすさのあるピアノ演奏技法の解説書です。
・出版社:音楽之友社
・初版:2000年
・ページ数:107ページ
・対象レベル:初中級~上級者
・ピアノ演奏の秘訣―音楽的技法のエッセンス 著:森山ゆり子、森山光子 / 音楽之友社
► 内容について
‣ 本書の特徴
本書の特徴として、繊細な演奏技術を身体感覚と結びつけた説明が随所に見られます。特に注目すべきは、「手掌窩(しゅしょうか)」という手のひらの中心部分のくぼみを意識した演奏法の解説です。この部分の使い方が、音色とテクニックの安定に大きく影響するという視点は、極めて重要な知見と言えるでしょう。
1. 分かりやすい比喩表現による解説
・腕の脱力を缶ジュースで例える
・肩から指先までの力の伝達を水の流れに例える
・手首を列車の連結部に例える
これらの比喩により、抽象的になりがちな演奏技術が具体的にイメージできます。
2. 豊富なビジュアル資料
譜例、図解、写真が多用されており、テキストだけでは伝わりにくい微妙な技術的ニュアンスを視覚的に理解できます。上級者向けの譜例も含まれていますが、解説自体は初中級者でも十分に理解し、実践できる内容となっています。
3. 実践的なQ&Aセクション
第4章には、学習者からよく寄せられる質問への回答が10項目収録されています。初歩的な内容が中心ですが、多くの学習者が直面する課題への具体的なアドバイスが得られます。
‣ 特に参考になる技術的アドバイス
音色の制御:
・ピアニッシモ( pp )でも遠くまで響く美しい音の出し方
・フォルテ( f )が荒くなることを防ぐテクニック
・均一な響きを得るための5本指の使い方
基本的な奏法の改善:
・呼吸法(フラスコ型とシャンパングラス型の比較)
・正しい膝のかけ方と骨盤の位置
・腕から指先へのフォームづくり
応用テクニック:
・スケールとアルペジオの効果的な練習法
・トレモロとトリルの習得方法
・ポジション移動の準備と実践
‣ 構成の特徴
本書は4つの章で構成され、基礎から応用まで体系的に学べます:
1. 姿勢と呼吸
2. 手の動きのバリエーション
3. 実践編
4. Q&Aコーナー
第3章の実践編では、ツェルニー40番やショパンの楽曲を例に、譜例と姿勢図を融合させたビジュアルサポートで具体的な演奏法が解説されています。
► おすすめの読者層
・初中級~上級の学習者
・音色や表現力の向上を目指す方
・身体の使い方に課題を感じている学習者
・ピアノ指導者
► まとめ
本書の最大の特徴は、技術的な説明を身体感覚と結びつけたアプローチにあります。特に手掌窩の意識付けや、様々な比喩を用いた解説は、抽象的になりがちなピアノ演奏技術を具体的に理解する助けとなります。
107ページという比較的コンパクトな量ながら、基礎から応用まで幅広い内容を網羅しており、練習の質を高めたい学習者にとって、価値のある一冊と言えます。
・ピアノ演奏の秘訣―音楽的技法のエッセンス 著:森山ゆり子、森山光子 / 音楽之友社
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