【ピアノ】音楽の正常化計画:より自然な演奏表現へ
► はじめに
多くのピアノ弾きが「どことなく演奏が不自然に感じる」「どうすれば音楽的になるのか分からない」という悩みを抱えています。
本記事では、そのような課題を解決するための具体的なアプローチを解説します。
► 音楽的な演奏の基礎
音楽的な演奏を実現するためには、以下の要素が適切にバランスされている必要があります:
・的確な音楽解釈力の蓄積
・最低限の音楽知識の蓄積
・テクニック面の蓄積
しかし、これらを一朝一夕に習得することは困難です。
そこで、まずは「音楽の正常化」という観点から、確実な改善を目指していきましょう。
► 音楽の正常化とは
ここでいう「正常化」とは、明らかに不自然な部分をなくすことを指します。
特に以下のような演奏上の問題に注目します:
・無意味なタメの作成
・rit. から a tempo への不自然な移行
・特殊な効果の過剰な使用
・3連符の不正確な処理
► 自己分析の重要性
演奏の改善には、以下のステップが効果的です:
・ICレコーダーで自分の演奏を録音する
・客観的に聴き、自分の耳で聴いても明らかに不自然な箇所を特定する
・自身の演奏の癖を把握し、分析する
・必要に応じて信頼できる第三者からの意見を取り入れる
► 特殊な効果の適切な使用
演奏における特殊な効果(例:小節頭などで右手と左手をずらす奏法)は、使用頻度を適切にコントロールする必要があります。
過度な使用は演奏の自然さを損なう原因となります。
ずらす奏法は、ロマン派の音楽の演奏を中心に古くから多用されてきたもので、
「旋律の音をはっきりと聴かせるための良い手段」と考えられていた時代もありました。
しかし、耳につく一種の特殊な効果があるので、使い過ぎると「正常ではない」音楽になってしまいます。
「またか」という印象とともに、効果の部分が必要以上に意味を持ってしまう。
【メロディとバスをずらさない方がいい箇所の見分け方】
まず、ずらさないのが基本だと思っておいてください。
その上で、あえてずらすのであればどうすればいいのか。
ショパン「ノクターン 第2番 op.9-2」の例
譜例(PD作品、Finaleで作成、曲頭)
あえてずらすとすれば、どこを取り入れるのが適切でしょうか。
① Aのみ
② AとB
③ AとC
④ AとBとC
基本的には「① Aのみ」となります。
「ずらすのであれば、メロディのフレーズはじめのみにしておく」
これを原則としてください。
► 3連符の正確な処理
3連符の演奏では、以下の点に注意が必要です:
・リズムの正確な理解
・拍の中への適切な配置
・速度の一定性の維持
・表現上のニュアンスは、ここまでの基本的なリズムを理解した上で付加する
一度、きちんとしたリズムを理解する。
速くなったりせずにきちんと拍の中へ正確に入れられる感覚を理解したうえで、必要であれば、その後に表現を付けるようにする。
このようにすることで、音楽の正常化を目指すことができます。
► 楽譜の重要性
音楽の正常化において、楽譜の正確な読み取りは極めて重要です。
何でも楽譜通りに弾けば音楽的かと言えばそうではないのですが、
まずは、楽譜に書かれていることをしっかりと読み取るべき。
作曲家は「リズム」「ダイナミクス」「アーティキュレーション」「各種用語」などの、望んでいるあらゆる表現に関して、
「楽譜に書き表せる中で、最も近いであろう書き方」をしているから。
楽譜という不完全なツールの中で、出来る限りの近似値を狙っています。
だからこそ、多くの起きる問題というのは、楽譜をよく見れば解決するんです。
ショパン「エチュード(練習曲)op.25-1 エオリアンハープ」の例
譜例(PD楽曲、Finaleで作成、曲尾)
トリルをするところでフェルマータしている演奏が多いのですが、
それをしてしまうと最終和音の伸ばしが活きなくなってしまいます。
楽譜をよく読めば、こういった問題は起きません。
フェルマータは、エキエル版、パデレフスキ版、コルトー版など、どの主要なエディションにも書かれていませんので。
► まとめ
音楽の正常化は、演奏の質を向上させる確実な方法です。以下の点を意識して練習に取り組みましょう:
・不自然な演奏癖の把握と修正
・特殊な効果の適切な使用
・リズムの正確な理解と表現
・楽譜の丁寧な読み取り
これらの要素に注意を払うことで、より自然で音楽的な演奏を実現することができます。
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