【ピアノ】モーツァルト ピアノソナタ全曲 難易度別選曲完全ガイド

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【ピアノ】モーツァルト ピアノソナタ全曲 難易度別選曲完全ガイド

► はじめに

 

モーツァルトの独奏ピアノソナタは、古典派音楽を学ぶうえで欠かせない作品群です。本ガイドでは、全18曲+関連2曲について、難易度評価と実践的な楽曲解説を提供し、レベルに応じた選曲をサポートします。

 

対象範囲:

・モーツァルトの独奏ピアノソナタ全18曲
・関連作品2曲(幻想曲 K.475、ソナタ K.547a)
・ソナタの断片やデュオソナタは除外

 

関連作品2曲について:

・「幻想曲 ハ短調 K.475」は「ピアノソナタ ハ短調 K.457」とセットで演奏されることが多いため取り上げ
・「ピアノソナタ K.547a Anh.135」は、学習教材として有名な「ソナタアルバム」収載作品のため取り上げ

 

難易度設定:

・最も取り組みやすいK.545を★☆☆☆☆
・最高難度のK.576を★★★★★

としたうえで、相対的な評価をしています。全楽章を通した総合評価の難易度です。

 

► 全曲解説:時代別分類

 

モーツァルトの独奏ピアノソナタ全18曲+2曲の難易度とワンポイント楽曲解説を紹介します。一言解説は、事典的内容ではなく、筆者自身の印象などを中心にしています。

 

‣ 初期作品群(1775年:K.279-284)

· ピアノソナタ ハ長調 K.279

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1775年(1774年という説もあり)
難易度:★★☆☆☆

初期作品としての習作的側面を持ちながら、後の円熟作品に現れる手法も随所に見られる。

 

第1楽章
・エチュード風の快活な楽章
・曲頭で提示された素材が、展開部における重要なアイディアとなる

第2楽章
・子守歌風の穏やかな緩徐楽章
・3連符に貫かれた書法が特徴的

第3楽章
・連打混じりの素材が印象的な楽章
・展開部で対位法の手法が効果的に使われる

 

· ピアノソナタ ヘ長調 K.280

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1775年(1774年という説もあり)
難易度:★★☆☆☆

漫画「ピアノの森」で第1楽章が印象的に取り上げられたことで知られる。K.279と技術的・音楽的に近い水準の習作。

 

第1楽章
・分散和音が印象的
・初期作品の中では比較的知名度の高い楽章

第2楽章
・前後の楽章と対照的な、内省的シチリアーナ

第3楽章
・スケルツォ的性格を持つ楽章
・左手にピアノ特有の分散オクターヴトレモロ書法が見られる

 

· ピアノソナタ 変ロ長調 K.281

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1775年(1774年という説もあり)
難易度:★★★☆☆

前2曲に比べてモーツァルトの個性が強く現れ、技巧的側面が全面に出ている作品。

 

第1楽章
・装飾的な音遣いが散見される
・技巧的かつ、歌に溢れた楽章

第2楽章
・淡々と糸車を回しているようなイメージ
・サプライズが起きない穏やかな緩徐楽章

第3楽章
・スケルツォ的雰囲気の、ユーモアある楽章

 

· ピアノソナタ 変ホ長調 K.282

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1775年(1774年という説もあり)
難易度:★★☆☆☆

Adagioから始まる変則的な作品。4楽章制ソナタから第1楽章が省略された構成と考えると理解しやすい。

 

第1楽章
・通常の急速楽章ではなく、Adagioによるカンタービレな緩徐楽章

第2楽章
・メヌエットであり、ベートーヴェンの4楽章制ソナタでいう第3楽章に相当

第3楽章
・連打混じりの主題が印象的
・本ソナタ唯一の急速楽章

 

· ピアノソナタ ト長調 K.283

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1775年(1774年という説もあり)
難易度:★☆☆☆☆

ソナタアルバム収録曲として知られ、モーツァルト・ソナタ入門に適している。

 

第1楽章
・シンプルな内容ながら、ヘミオラなどのリズム技法が見られる

第2楽章
・素朴な緩徐楽章
・音域を上げながらデクレッシェンドしていく天国的表現が印象的

第3楽章
・即興的雰囲気を持つ楽章
・第1楽章より明らかに速いテンポと軽さを要求される

 

· ピアノソナタ ニ長調 K.284

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1775年
難易度:★★★★☆

第3楽章が変奏曲になっており充実した規模を持つ。技巧面が目立つ華やかな作品。

 

第1楽章
・曲頭の「つかみ」がK.311の第1楽章と似ている
・極めて明るく賑やかな楽章

第2楽章
・断片的な素材の出し入れが印象的
・様々な表情を持つ緩徐楽章

第3楽章
・変奏曲になっている
・リピートを全て行うと15分を超える大作

 

‣ マンハイム・パリ時代(1777-1779年:K.309-311)

· ピアノソナタ ハ長調 K.309

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1777年 マンハイム
難易度:★★★☆☆

あまり知られていないが、潔く健康的な作品。K.311と似た性格を持つ。

 

第1楽章
・モーツァルト特有の曲頭のつかみで堂々と幕を開ける、オーケストラ的楽章

第2楽章
・変奏形式による、付点が印象的な楽章
・モーツァルト自身が好んだとされる

第3楽章
・大規模なロンド
・冒頭主題が再現されて回想のように遠ざかっていくコーダが印象的

 

· ピアノソナタ ニ長調 K.311

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1777年 マンハイム
難易度:★★★★☆

全楽章にわたって音楽面と華やかさのバランスが取れた、演奏発表会に最適なソナタ。

 

第1楽章
・開演ベルのような「つかみ」による華やかな幕開け
・活き活きとした健康的な楽章

第2楽章
・変奏形式で書かれた美しいロマンス
・ピアニストがアンコールで演奏することもある

第3楽章
・カデンツァ付きの協奏曲風の充実したロンド

 

· ピアノソナタ イ短調 K.310

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1778年 パリ
難易度:★★★★★

アニメ版「ピアノの森」で第3楽章が印象的に取り上げられた。全ソナタ中2作しかない短調ソナタの一つ。モーツァルトにしては珍しく ffpp が出てくるソナタ。

 

第1楽章
・運指を誤ると修正が困難なパッセージが多く演奏は難しい
・情熱的で非常に人気が高い楽章

第2楽章
・様々な場面転換を含む充実した緩徐楽章

第3楽章
・高速テンポでの大きな跳躍が連続し、技術的難易度が高い
・アニメでも知名度が上がった情熱的な楽章

 

‣ ウィーン移住後の時代(1781-1791年:K.330-576)

· ピアノソナタ ハ長調 K.330

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1783年
難易度:★★☆☆☆

K.310やK.311とは異なる方向性を示す。比較的小規模でギャラント(複雑さや重厚さに対して、より軽快で、聴きやすいスタイル)な作品。

 

第1楽章
・ハ長調かつシンプルな和声で描かれる多彩な世界
・楽譜の見た目よりも弾きやすい

第2楽章
・同主短調による美しい中間部が印象的な小規模緩徐楽章

第3楽章
・活き活きとした屈託のない曲想
・楽譜は第1楽章のほうが難しく見えるが、第3楽章のほうが技術的難所が多い

 

· ピアノソナタ イ長調 K.331

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1783年
難易度:★★★☆☆

長大な変奏曲、メヌエット、トルコ行進曲という変則的楽章構成。明らかに第1楽章に比重が置かれている。

 

第1楽章
・多様な表現とテクニックを含む有名な変奏曲

第2楽章
・拍感覚をずらす工夫が見られるメヌエット
・楽曲分析後の譜読みを推奨

第3楽章(トルコ行進曲)
・取り組みやすい小品ながら、知名度・音楽性・演奏効果の三拍子揃った必修楽章。

 

· ピアノソナタ ヘ長調 K.332

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1783年
難易度:★☆☆☆☆

ソナタアルバム収録曲として知られ、モーツァルト・ソナタ入門に適している。

 

第1楽章
・シンプルながら、クロスリズムなどの技法が見られる

第2楽章
・弾きやすく美しい緩徐楽章
・第3楽章と対照的な落ち着いた表情

第3楽章
・華やかさと美しさを併せ持つ人気の高い楽章
・演奏発表会でも映える作品

 

· ピアノソナタ 変ロ長調 K.333

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1783年
難易度:★★★★☆

第3楽章に比重が置かれたバランスの良い人気ソナタ。演奏発表会に適した作品。

 

第1楽章
・シンコペーションなど細やかな工夫が多彩
・比較的人気のある楽章

第2楽章
・中間部に、当時としては珍しい非和声音の扱いが見られる
・全体的に落ち着いた美しい緩徐楽章

第3楽章
・カデンツァ付き、協奏曲風の充実したロンド

 

· ピアノソナタ ハ短調 K.457

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1784年
難易度:★★★☆☆

「幻想曲 ハ短調 K.475」とセットで演奏されることが多い。ロマン派を感じさせるモーツァルト円熟期の傑作で、全ソナタ中2作しかない短調ソナタの一つ。

 

第1楽章
・展開部における長く持続する緊張感が印象的

第2楽章
・変奏形式による、子守歌のような緩徐楽章

第3楽章
・広い音域の使用や自由なテンポ処理の指示など、数多くの試みが見られる作品

 

· ピアノソナタ ヘ長調 K.533

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1786年
難易度:★★★☆☆

作曲方法や不安定な転調など、モーツァルトの中では特殊な作品。第1-2楽章と第3楽章は元々別作品。

 

第1楽章
・対位法を駆使した書法が一貫している

第2楽章
・珍しい転調を多用した緩徐楽章
・慣れるまではとっつきにくい楽章に感じられる可能性

第3楽章
・K.494の終わりに、対位法を駆使したコーダを加えて完成させた楽章

 

· ピアノソナタ ハ長調 K.545

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1788年
難易度:★☆☆☆☆

ソナチネアルバム・ソナタアルバム収録の代表的作品。モーツァルト・ソナタ入門に最適。

 

第1楽章
・非常に有名なソナチネ的楽章
・学習用古典ソナチネとは一線を画す極めて音楽的な傑作

第2楽章
・モーツァルトの交響曲緩徐楽章にも見られる「特にサプライズがなく、ただただ美しい」楽章

第3楽章
短い楽章に「追っかけ」「多様なアーティキュレーション」「跳躍」など様々な課題が詰まっている

 

· ピアノソナタ 変ロ長調 K.570

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1789年
難易度:★★☆☆☆

華やかで技巧的なK.576と対照的な、コンパクトで落ち着いた雰囲気の作品。譜読みは容易だがシンプルかつ深い音楽性が求められる。

 

第1楽章
・内省的なユニゾンから始まる、シンプルな楽章
・同型反復による大胆な転調が印象的

第2楽章
・落ち着いた美しさを持つコンパクトな緩徐楽章

第3楽章
・愉快なユーモアのある楽章
・締めくくりのダイナミクス・サプライズも印象的

 

· ピアノソナタ ニ長調 K.576

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

作曲年:1789年
難易度:★★★★★

モーツァルト・ソナタ中技術的最高難度。対位法技法、華やかさ、規模など、あらゆる視点で充実した作品。

 

第1楽章
・「狩」を思わせるファンファーレから始まる
・対位法技法を活かした高度な音楽が展開

第2楽章
・穏やかなオーケストラ伴奏を背景に歌手が節を回すような音楽

第3楽章
・聴いた印象は愉快で軽い音楽だが、演奏には高い技術が求められる

 

‣ 例外的作品

· 幻想曲 ハ短調 K.475

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲頭)

 

作曲年:1785年
難易度:★★★☆☆

・「ピアノソナタ ハ短調 K.457」の前に置いてセットで演奏されることが多い
・譜読み自体は大変ではないが、音楽性が高い
・演奏時間約13分と長大であるため、全体を音楽的にまとめる難しさがある

 

· ピアノソナタ ヘ長調 K.547a Anh.135

 

譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、第1楽章 曲頭)

 

原曲作曲年:1788年
編曲年:不明(モーツァルトの編曲かは議論がある)
難易度:★★☆☆☆

「ヴァイオリンソナタ K.547」をモーツァルト自身がピアノソナタに編曲。ソナタアルバム収録の2楽章制作品。ヘンレ版の場合、ピアノソナタ集ではなく、「ピアノ小品集(抜粋版ではないほう)」に収載されている。

 

第1楽章
・ソナタアルバムで触れなかった学習者には馴染みは薄いかもしれないが、モーツァルトらしさが随所に見られる

第2楽章
・「K.545 第3楽章」とほぼ同内容。調性変化と多少の音使いの変化のみ

 

► レベル別選曲ガイド

‣ ソナタ入門者向け(必修4曲)

 

初めてモーツァルトのピアノソナタに取り組む方には、以下から選択することを強く推奨します:

・ピアノソナタ ハ長調 K.545(最優先・必修)
・ピアノソナタ イ長調 K.331 より「トルコ行進曲」(抜粋可・必修)
・ピアノソナタ ヘ長調 K.332
・ピアノソナタ ト長調 K.283

 

これらは全てソナタアルバム収録作品で、取り組みやすさと教育的価値を兼ね備えています。特に「K.545」と「トルコ行進曲」は、ピアノ学習において避けて通れない必修作品です。

 

‣ 中級者向け(推奨4作品)

 

入門曲を修了したら、以下から選択して挑戦しましょう:

・ピアノソナタ ニ長調 K.311(最推奨:音楽性と華やかさのバランスが秀逸)
・ピアノソナタ 変ロ長調 K.281
・ピアノソナタ イ短調 K.310
・幻想曲 ハ短調 K.475 + ピアノソナタ ハ短調 K.457(セット)

 

幅広い年代の作品から選びましたが、特にK.311は音楽的な充実度と華やかさのバランスが優れた、おすすめの一曲です。演奏発表会などでの聴衆受けも抜群です。

また、ソナタ入門が終わった段階では、数曲でもいいので、全楽章学習する経験もしましょう。「他の楽章のテンポ設定から、別の楽章のテンポバランスを考える」など、トータルバランスを踏まえた学習ができます。

 

‣ 緩徐楽章を抜粋で取り組みたい場合

 

緩徐楽章を抜粋学習したい場合は、以下の2曲が圧倒的におすすめです:

・ピアノソナタ ニ長調 K.311 第2楽章
・ピアノソナタ 変ホ長調 K.282 第1楽章

 

これらはいずれも、ピアニストがアンコールなどで「単独で」取り上げることのある楽章です。緩徐楽章の中でも特に美しい2作をチョイスしました。

相当学習が進んだ後に、緩徐楽章を本当に美しく仕上げる学習をしてみるのもいいでしょう。

 

‣ 余裕次第で挑戦したい三つの課題

· 変奏曲の楽章いずれか一つ

 

全ソナタ中で、緩徐楽章でとられた変奏形式を除けば、純粋な変奏曲は以下の二つの楽章のみです:

・ピアノソナタ ニ長調 K.284 第3楽章
・ピアノソナタ イ長調 K.331 第1楽章

 

したがって、どちらか一つは学習しておくと、モーツァルトの語法を新たに知ることができます。
「K.331 第1楽章」のほうが、弾きやすくて有名な楽章でもあるので、迷ったらまずはこちらから取り組んでみましょう。

 

· カデンツァ付きの楽章いずれか一つ

 

全ソナタ中で、協奏曲を思わせる本格的なカデンツァがついた楽章は、以下の二つのみです:

・ピアノソナタ ニ長調 K.311 第3楽章
・ピアノソナタ 変ロ長調 K.333 第3楽章

 

やはり、どちらか一つは学習しておくといいでしょう。カデンツァ付きというだけあり楽章の規模が大きく、華やかさも併せ持ちます。したがって、演奏発表会に適した楽章とも言えます。

 

· 短調ソナタいずれか一曲

 

全ソナタ中で、短調のソナタは以下の二つのみです:

・ピアノソナタ イ短調 K.310
・ピアノソナタ ハ短調 K.457

 

やはり、どちらか一つは学習しておくといいでしょう。
ただ単に弾き通すのはK.310のほうが難しい印象ですが、K.457ではモーツァルトの円熟期の高い音楽性が求められます。

 

► 学習に役立つ参考資料

‣ 参考書籍:分析・解釈本

 

モーツァルトのピアノソナタに関する研究は非常に多岐にわたり、それに伴って解釈本などの資料も豊富に存在します。日本語で手に入りやすい定番の解釈本5冊は以下のものです:

・モーツァルト ピアノソナタ 演奏と解釈への助言 著:山崎孝
モーツァルト ピアノソナタ 形式の分析による演奏の手引き 著 : ヨセフ ブロッホ、中村 菊子、木幡 律子
モーツァルト 楽曲構成と演奏解釈 著 : 山縣 茂太郎
新版 モーツァルト 演奏法と解釈 著 : エファ&パウル・バドゥーラ=スコダ 訳 : 堀朋平、西田紘子 監訳 : 今井顕
最新ピアノ講座(7) ピアノ名曲の演奏解釈Ⅰ

 

以下の記事では、それぞれの特徴について解説しています。

【ピアノ】モーツァルトのピアノソナタ解釈本5冊:特徴と選び方ガイド

 

‣ 参考演奏:全集録音

 

モーツァルトのピアノソナタを全曲録音しているピアニストのうち、タイプの異なる3名をピックアップしておきます:

イングリッド・ヘブラー
・「モーツァルト弾き」としても著名なピアニスト
・ゆっくりめのテンポ設定をしている楽曲が多い
・急速楽章でのスタッカートは極めて短く、軽くコロコロしたサウンドが特徴

カール・エンゲル
・正統的な解釈とテンポ設定
・模範演奏として参考になる
・原典版と異なる弾き方をしている部分が多少見受けられる

クラウディオ・アラウ
・ゆっくりめのテンポ設定にしている楽曲が多い
・独特で大胆な解釈
・他のピアニストの演奏と併せて聴いてみるのがおすすめ

 

► 発展学習:協奏曲への展開

 

モーツァルトのピアノソナタはアイディアに富んだ素晴らしい作品ばかりです。一方、作曲家としての真価は自身で演奏することを前提とした協奏曲でさらに発揮されています。

ソナタ学習がある程度進んだら、以下の有名どころの協奏曲も学習してみましょう。

推奨協奏曲:

・ピアノ協奏曲 第9番 変ホ長調 K.271「ジュノム」(初期の代表作)
・ピアノ協奏曲 第20番 ニ短調 K.466(全協奏曲中最も有名)
・ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488(美しい第2楽章で特に有名)

 

オーケストラパートを第2ピアノで演奏することで、本番やレッスンなどで協奏曲作品を演奏できる機会は作れます。

筆者自身は、ソロパートとオーケストラパートの両方を練習して、同じ楽曲の両パートを練習した友人と交代しながら学習していたこともあります。お互い様で協力した学習が出来ますし、オーケストラパートを知ること自体が楽曲理解を深めるので、おすすめの学習方法です。

 

► 終わりに

 

モーツァルトのピアノソナタは、古典派音楽の学習において不可欠な作品群です。本ガイドを参考に、自身のレベルに応じた選曲を行い、段階的に学習を進めてください。各作品には独自の魅力と学習価値があり、継続的な取り組みによって、モーツァルトの音楽世界への理解が深まることでしょう。

本ガイドは実践的な学習支援を目的としており、楽曲解説は筆者の演奏経験と分析経験に基づく個人的見解を含みます。より詳細な楽曲分析については、上記参考書籍を参照してください。

 


 

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