【ピアノ】「モーツァルト ピアノソナタ 演奏と解釈への助言」(山崎孝 著)レビュー
► はじめに
作品解釈の書籍では、演奏と分析のどちらに重点が置かれているかで特色が出ます。本記事で紹介する山崎孝氏による「モーツァルト ピアノソナタ 演奏と解釈への助言」は、理論的な分析よりも、実際の演奏にどう活かすかという点に重きが置かれている参考書です。
・出版社:音楽之友社
・初版:1997年
・ページ数:183ページ
・対象レベル:中級〜上級者
・モーツァルト ピアノソナタ 演奏と解釈への助言 著 : 山崎孝 / 音楽之友社
► 内容について
‣ 本書の構成
本書は比較的コンパクトなサイズながら、モーツァルトのピアノソナタ全曲および重要な小品を網羅しています。構成は大きく分けて以下のようになっています:
1. 導入部分(はじめに、ピアノ技法、ウィーン古典派音楽の演奏様式 等)
2. 各曲解説(「ソナタ K.279」から順に全ソナタと主要小品)
3. 補足資料(参考文献、あとがき)
特筆すべきは、各曲解説に入る前の導入部分の内容的充実度。この部分だけでもモーツァルト演奏の基礎を学ぶうえで価値があると言えるでしょう。例えば「同時重音奏法」という、重要でありながら他の解説書ではあまり触れられていない技術についても解説されています。
‣ 本書の特徴
1. 演奏解釈に重点を置いた実践的アプローチ
本書では、理論的な分析よりも、実際の演奏にどう活かすかという点に重きを置いています。
2. 技術的なアドバイスの充実
「楽曲の演奏法と練習方法」の章では、各種タッチやヴィルトゥオーゾ的演奏技巧の習得、多声的音楽の演奏技巧、効果的な練習方法、等が詳述されています。また、各曲解説の部分では、「両手での分担の仕方」等のテクニック的な攻略法に関する内容が充実しています。
3. 各曲解説の実用性
譜例が適宜挿入されており、重要なポイントを視覚的に理解するのに役立つでしょう。一曲あたりの記述量はそれほど多くはありませんが、演奏上の外せないポイントが適切に押さえられています。
► 実践的な活用法
本書を最大限に活用するための方法をいくつか提案しておきましょう:
1. 楽譜と併用する
本書には適切な譜例が挿入されていますが、基本的には小節番号で解説が進むため、必ず対象曲の楽譜を手元に用意し、参照しながら読み進めてください。
2. 演奏前の下準備として
新しい作品に取り組む前に該当する楽曲の章を読んでおくことで、練習の方向性が明確になるでしょう。
3. 他の参考書と併読する
繰り返しますが、本書は演奏解釈に重点を置いています。より深い楽曲分析や理論的側面を学びたい場合は、モーツァルトの楽曲分析に焦点を当てた書籍と併読することをおすすめします。併読書は、以下の記事を参考に選んでみてください。
【ピアノ】モーツァルトのピアノソナタ解釈本5冊:特徴と選び方ガイド
► 終わりに
本書で得られるテクニカルな側面と音楽的解釈の両面からのアプローチにより、モーツァルトのピアノ音楽をより音楽的に演奏できるようになるはずです。コンパクトで内容自体も読み進めやすい一冊なので、一度手に取ってみてください。
・モーツァルト ピアノソナタ 演奏と解釈への助言 著 : 山崎孝 / 音楽之友社
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