【ピアノ】J.S.バッハ インヴェンション 第14番 BWV785 全運指付き楽譜と練習のコツ
► はじめに
J.S.バッハ「インヴェンション 第14番 BWV785」は、インヴェンション全15曲の中でも優雅で表現豊かな一曲として知られています。
本記事では、この楽曲に取り組む方のために、「全運指」を付けた楽譜を提供し、練習のヒントも解説していきます。
►「全運指」の解説
この楽曲はパブリックドメインです。運営者が浄書ソフトウェアで作成した楽譜を使用しています。
運指について重要な注意点
この運指は一例です。手の大きさや個人差に合わせて調整してください。また、どのようなアーティキュレーションを付けるのかによっても適切な運指は変わります。お手持ちの楽譜の内容と照らし合わせながら、必要に応じて参考にしてください。
► 具体的な練習のヒント
‣ 適切なテンポ設定
推奨テンポ設定:
練習開始時:♪= 65-75(正確性と安定性重視)
中間段階:♪= 75-85(表現力の向上期)
目標テンポ:♪= 88(ヘルマン・ケラー提案)
なぜ、このテンポ設定なのか:
最終目標の♪= 88 は、バッハ研究の第一人者ヘルマン・ケラーが提案する理想的なテンポです。このテンポは、細かい音符の動きを明確に表現しながらも、楽曲全体の優雅で落ち着いた性格を損なわない絶妙なバランスを実現します。この楽曲における標準的なテンポ設定(♪= 110-130)よりも遅めですが、音楽的表現により適しています。
‣ 本楽曲でよくある問題点と対策
· 軸音同士のバランスが不揃いになってしまう
譜例(4-5小節)
レッド音符で示した軸音(音型の骨格となる重要な音)同士のバランスが崩れ、一つの音だけが突出してしまうことがあるので注意しましょう。
また、これらの音符のように「直後が休符になっている8分音符」は、音価をきちんと守って演奏することで、休符の始まる位置が明確に表現できるので、音楽が締まって聴こえます。一方、ブルー音符は「テヌート+スタッカート」のように、やや切って演奏しましょう。
· 「付点8分音符+16分音符」の16分音符が大きく飛び出してしまう
譜例(12-13小節)
レッド音符で示した、「付点8分音符+16分音符」の16分音符の部分で、コブができたように不自然に音量が大きくなってしまわないように注意しましょう。経過していくだけの音価の短い音なので、「通り過ぎるだけ」というイメージでサラッと演奏すべきです。
· 楽曲を理解せずに弾いてしまう
譜例(曲頭)
作品の構造的特徴を理解せずに、表面的な演奏になってしまうことがあります。
本楽曲全体の作りは非常にシンプルで、レッド音符で示した動機と、ブルー音符で示したその転回で成り立っています。だからこそ、全曲に渡って音の運動方向がジグザグするわけです。音型の運動方向を常に意識して演奏することで、全ての音を均等な音量で演奏してしまう平坦な演奏を避けるようにしましょう。
► 終わりに
32分音符が多く譜面は複雑に見えるかもしれませんが、上記のように、急速なテンポが求められる楽曲ではありません。練習の過程では、急がずに一つ一つの段階を丁寧に進めることが重要です。
この作品についてさらなる演奏ヒントが必要な方は、以下の解釈版を参考にしてください。
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