【ピアノ】運指テクニックの可能性を広げる:多分できないという勝手な思い込みを超えて
► はじめに
運指に関して、「できないだろう」という思い込みが、可能性を狭めているかもしれません。例えば:
・「書かれているこの運指ではレガートでは弾けない」と決めつけて、スラーを無視してしまう
・試す前から「この運指自体が使えない」と思い込んでしまう
ピアノ演奏において、運指法は技術的な基盤となる重要な要素です。しかし、比較的多くの学習者が「思い込み」によって、作曲者や校訂者などが残した運指を軽視してしまっているのが見受けられます。
本記事では、特に大人の学習者へ向けて、このような思い込みを超えて運指テクニックの可能性を広げるための具体的なアプローチを解説します。ちょっとした考え方の転換と実践的な試行錯誤で、運指の可能性が広がるでしょう。
► 思い込みを超えた運指テクニック
1. 指越えの新しい可能性
ヴァルター・ゲオルギイの「ピアニストの手帖」で指摘されているように、重音を弾く「24」の指のうちのどの指も離さずに「24 – 13」の指越えをさせる奏法は、多くの学習者が「できない」と思い込んでいるテクニックの一つです。
(譜例)
このテクニックに関しては、中庸以下のテンポであれば、練習次第でギクシャクせずにつなげて弾くことができますし、できないと思い込んではじめからスラーを取っ払ってしまうよりも音楽的な演奏が可能です。
2. 運指の柔軟な考え方
ここで考えて欲しいのは、あらゆる物事を判断する時に、「多分できないと思い込んで、可能性を試す前に切り捨ててしまう」のが問題だということです。あるいは、試すことすら頭に浮かばないケースもあるかもしれません。
ある程度ピアノをやっていると、感覚的に「こういうのは難しい」と勝手に判断してしまう部分が増えてきます。しかし、「少し変えるだけで、少し良くなる」というところに、ある程度弾けるようになってからさらに一歩前へ進むためのヒントが隠されています。「こんな風にやったら弾けるかな」という試行錯誤を、時間を惜しまずに積極的にやってみるようにしましょう。
3. 譜読みを終わらせることに安心を求めない
ゼロイチ思考を重視する学習者は、譜読みが終わっているか終わっていないかで物事を考えてしまう傾向があります。とりあえず終わらせることで安心して、後は単純な反復練習に終始してしまうようです。しかし:
・どのように譜読みが終わっているか
・譜読みが終わった段階からいかに「少し変えるだけで、少し良くなる」にフォーカスしていくか
を考えていくことで、より高いレヴェルでの音楽表現が可能になることを覚えておいてください。
► 思い込みを超えるための具体的な戦略
実験的アプローチ:
新しい運指の可能性を探るため、以下のような取り組みをおすすめします:
1. 書かれている専門家が付けた運指には、何か意図があるのではないかと疑ってみる
2. 違和感のある箇所ですぐに切り捨てずに、丁寧な検証
3. 加えて、仕上げのテンポも考慮したうえで、同じ部分を複数の運指で試してみる
1と2に関しては:
・「その運指では弾くことは出来ない」
・「その運指では、このアーティキュレーションやフレージングは表現出来ない」
などと決めつける前に、専門家がなぜその運指を付けたのか意図を探りましょう。切り捨てるのはそれからでも遅くありません。要するに、譜読みをする時に一番大事なのは「心の余裕」です。
► まとめ
運指テクニックの向上には、既存の思い込みを取り払い、柔軟な姿勢で可能性を探ることが重要です。重要なのは、以下の4点です:
・思い込みにとらわれない柔軟な姿勢を持つこと
・時間を無駄にすると思わず、地道な試行錯誤を繰り返すこと
・音楽表現との結びつきを常に意識すること
・心に余裕を持って譜読みをすること
継続的な学習と実践を通じて、運指に鋭いピアノ弾きを目指しましょう。
・ピアニストの手帖 ムジカノーヴァ叢書 20 著:ヴァルター ゲオルギイ 訳:友利修 / 音楽之友社
関連内容として、以下の記事も参考にしてください:
・【ピアノ】運指の決め方 大全:43の技術と戦略
・【ピアノ】「運指」に関する情報収集の方法や座学的重要視点
・【ピアノ】ピアノ演奏技法:替え指の実践的活用法
・【ピアノ】特殊な音楽効果を生み出す書法における運指テクニック
・【ピアノ】運指の書き込みによる譜読みの効率化と練習管理法
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