初心者が注意すべき「曲尾の譜読み」
► はじめに
楽譜の読み方、特に曲尾(曲の終わり)の譜読みには
細心の注意が必要です。
きちんと楽譜を読まずに思い込みで演奏してしまうと、
作曲者の意図から外れた表現になってしまう可能性があります。
► 具体例:シューマン「初めての悲しみ」
今回は、
シューマン「ユーゲントアルバム(子どものためのアルバム)Op.68-16 初めての悲しみ」
の曲尾を例に、
重要な注意点を3つ解説します。
以下の譜例は、シューマン「初めての悲しみ」の曲尾部分です。
この部分で特に注意すべきポイントを見ていきましょう。
譜例(PD楽曲、Sibeliusで作成、曲尾)
この譜例から、以下の3つの重要な点が見えてきます。
‣ 1. メロディの終わり方に注目
メロディは最後まで伸ばすのではなく、
8分休符で区切られています。
うっかりすると
メロディを左手パートの最後の音を切るところまで
伸ばしてしまいがちですが、
実際には右手のメロディが先に終わり、
左手のみで締めくくる形になります。
‣ 2. フェルマータの有無を確認
左手パートの最後の音に
フェルマータ(延長記号)はついていません。
曲尾だからといって思い込みで長く伸ばすのは避けましょう。
作曲者が意図的にフェルマータを付けていない場合、
その意図を尊重することが大切です。
‣ 3. リタルダンドの扱い方
楽譜上に rit.(リタルダンド:徐々にテンポを遅くする)の指示はありません。
ただし、表現上、わずかにテンポをゆるめることは許容されます。
この曲は比較的短い曲なので、
過度なテンポの変化は全体のバランスを崩してしまうことを理解しましょう。
▶︎ リピート時の演奏アプローチ
・1回目:ほとんどテンポをゆるめない
・2回目(ほんとうの曲尾):最後の1小節のみでわずかに rit. をつける
► 譜読みの重要性
楽譜をしっかりと読むことは
クラシック音楽演奏の基本です。
学校の試験で教科の先生が
「問題文をよく読みなさい」
と言っていましたよね。
よく読めば分かることも
何となくで読んで思い込みを優先させてしまうと
捉え間違えてしまいます。
‣ 見落としがちな要素
・アーティキュレーション(音のつなぎ方や切り方)の指示
・強弱記号
・テンポ変化の指示
・反復記号
► まとめ
曲尾の譜読みでは、特に以下の点に注意が必要です:
1. 休符の位置を正確に把握する
– 上記譜例の場合、特に最後の8分休符に注意
2. 実際に書かれている記号のみを忠実に再現する
– 上記譜例の場合、フェルマータの有無を確認
3. 書かれていない表現を付け加える場合は、曲の性格を損なわない程度に留める
– 上記譜例の場合、特にリタルダンドの扱いに注意
思い込みではなく
実際に書かれている指示をていねいに読み取ることで、
より作曲者の意図に近い演奏が可能になります。
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